Maxi Switch 2192004-00
Maxi Switch 2192004-00
発売元/製造元 Maxi Switch inc.
諸元
キー配列 101key/US
メカニズム Rubber Cup/membrane
I/F XT←→AT(change with slideSW)
備考 -
Junk Point メキシカンケーブルは今いずこ

先日、京都が首都から観光都市へと遷移する過程をTV番組で解説していた。
その番組では、国際観光都市として京都が認知される嚆矢となったのが明治28年に現在の岡崎公園で開催された「第四回内国勧業博覧会」であるとしていた。

政治機能の中心、あるいは国家統治の象徴であった「皇居」の東京への移動に伴い、それまで千年の長きにわたって機能してきた「公家御用達専門」という経済システムに依存した在京老舗商家の多くが廃れ、その地域経済が崩壊に瀕した。
そんな中、窮余の一策として、外国人観光客の誘致を行ない、外部へと開かれたダイナミックな地域経済システムへとパラダイムシフトを行ったことが、今日の京都の礎となっている....というものであった。

その評価の真偽は置くとしても、強力な経済効果をもたらす自治体や大企業との取引によって存在を担保されている事業体は、いかにそれが長期にわたって存在する歴史的なものであっても、寄る大樹の存在がなくなれば、あっという間に存亡の淵に立たされてしまうものなのである。筆者などにも以て他山の石とすべき所であると思う。

裏面。走召 横長のスタンドが特徴的
手前の上部筐体ツメが物凄く固い

こうした京都の例と比べれば歴史的には極めて一瞬の光芒に過ぎないことではあるが、かつて”Open Architecture”というパンドラの箱を開けてしまう前の巨人企業・IBMにも(言い方は悪いが)「コバンザメ企業」が多数存在した。
それらの中で、筆者の興味を惹起するキーボードを製造していた企業というと「Lexmark」と、本機の「Maxi Switch」が挙げられるだろう。

いずれも1984年にIBMが開発した「Model M」キーボードをライセンス生産していた企業である(これも作っていた)。
が、2者の後の道行きは余り平坦なものとは言えないようである。

Maxi Switch独特の位置の「\」
やっぱり叩きにくい

Lexmarkは1996年までのライセンス供与を受け、「Model M」を生産していたが、その後はそのライセンスをUnicompに明け渡し、インクジェットプリンタの生産に注力した。21世紀初頭までは世界トップシェアを誇っており、うまくいったかに見えた業態転換だったが、現在ではインクジェット市場からの撤退を表明している模様だ。

一方本機2192004を製造していたMaxi Switch inc.だが、こちらも創設当初はZF(当時Cherry)MX 互換Switch を生産するなど、意欲的に周辺機器製造に取り組んでいた模様だが、1990年に親会社のEECOによってSilitekに売却され、現在の社名は”Lite-on”となっているとのことである。
本機裏面のラベルを見ると「Made in Malaysia 930628」の印字が有り、モデル名の「2192004」ららみても、おそらくSilitekに買収された後の製品と思われる。

そういえば、メンブレンスイッチ上のラバーカップの形状、四角いキーステムなどが、当時のSilitekのスイッチ形状に酷似しているのだが、そういう事情だったのかと腑に落ちるところである。ちなみに、以前ここで紹介した「Bloomberg keyboard(Maxi Sound keybaord)」も、おそらく同じスイッチ機構を採用している。したがって、打鍵感はほぼ同じ、リニアで軽快、あるいは特徴の無いメンブレンなのである。

おまけに、「\」の言迷配置も共通していて、使い始めて間もない筆者は今のところほぼ100%右Shiftをミスタイプしている。
この辺はどうなのだろう、もしかすると「Model M」のキー形状と配列(Enterキーが横長正方形/その上に同じ形状の「\」キー)が特許になっているのだろうか。少なくとも当時そうした特許保護が生きていたとすると、Keytronic E03601の「別領域の言迷『\』配置」の理由ともなり得るのではないだろうか。


(2017/08/28追記)・・・上記段落は全くの考察ミスでした。E03601の「\」はModel Mと同じEnterの上、言迷配置「\」なのはDELL SK-3210JPだが、これは左Shift隣で、USモデルはEnter上で、こちらもModel Mと同じ配列になっている。SK-3210もSilitek製である所を見ると、かの企業は「\」を虐げる企業風土が有るのかも知れない(←それもちげうぞ)。

(左上)「SK」が入っている/(右上)そんでもって当時のSilitekメンブレンSW
(下)Spaceバーは補助ガイドとスタビ付き。タッチはsound k/bに酷似

本機のI/FはXT/AT切替のDINプラグだ。筆者の知る限り、90年当時はまだそれほどATキーボードは珍しくなかった(単体売りのM/Bにも、キーボードI/FがATのものが存在したと記憶している)。
上部筐体には特にメーカーロゴが記載されていない。ということは、本機はPCメーカーへのOEMではなく、ショップでノーブランド(...ではないのだが)の周辺機器として売られていたものかも知れない。

90年代初頭と言えばWindows3.1が発売、日本でOADGコンソーシアムが設立され、IBM PC互換機が黎明を迎えた頃だが、筆者にとっても初めてPC-9800から互換機へと乗り換えた頃である。そのような状況があったとして、もし当時、筆者が今のようにキーボードというデバイスに妙な嗜好を示していたとしたらどうだっただろう。

居並ぶ高価なIBM Model Mや、ALPS軸のDELL AT101などに混じって、亜細亜製の本機などが安く積まれていたとする。「を、言迷のノーブランド品だ。これは掘り出し物かも」....そして当時長期間にわたって使用した富士通FKB-8520-T101などと比較して蘊蓄を垂れたりしていたかも知れない。
....結局この機を掴まされることになるのか。なるほど。

いずれにしても、今日(2017年8月27日)現在筆者がヤフオクで¥1野口でげとした本機は、製造から25年を経過しているが、どのように保存されていたのか非常に綺麗な状態と滑らかなキーストロークを維持している。

当時既に中国Silitek傘下に入っていたと思われるとは言え、当時のデバイスにかけられたコストは、やはり今日の使い捨てHIDとは一線を画していたのではないか.....と感じられてしまう、ある意味微妙な一品である。




先述の通り、手前のツメ外しが固くて恐怖


鉄板入ってますよ、Silitekだけど


(2017/08/28記)

 

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