Bloomberg keyboard(MAXI sound K/B)
Bloomberg keyboard(Maxiswitch sound K/B))
製造元 Maxi Switch Inc.
諸元
キー配列 104keys/US(for Bloomberg financial device)
メカニズム Rubber dome/ membrane switch
I/F PS/2, Line in, MIC, Power(for Amplifier)
備考
Junk Point 全知全能キーボード

一昨年に経営者になった筆者であるが、お恥ずかしいながら未だに社会経済の仕組みに関してはとんと疎い。

従って、世界を行き来する経済情報を扱う仕組みについても、よく判っていない。「メリルリンチとダウ・ジョーンズは同じ業種でしょ?」などと尋ねてみるような為体なのである。

「Bloomberg L.P.」が世界最大級の金融・経済情報通信企業であることは、このコラムを書くに当たってWikipediaを見るまで知らなかった...ていうか、企業の存在そのものを知らなかったので、当然何をやっている会社なのかも分かるはずもない。資料を読んでも「えとー...証券会社かな?」などと首をひねっていたりした。

で、よくよく読み返してみると、ロイター、ダウ・ジョーンズ、ブルームバーグは通信社である....ということがようやく理解できた。なるほど、それでこのキーボードがあるわけか....と、やっと腑に落ちた次第である。

スイッチは普通のメンブレンの模様
製造は『1996年10月22日』と読み取れる

資料によれば、マイケル・ブルームバーグがソロモン・ブラザーズの役員職を辞し、会社を立ち上げたのが1981年。以降、専用端末を用いた情報配信サービスを行ってきたとのことだ。
そして、Maxiswitchがこの「MAXI sound keyboard PS/2」を発売したのが1996年。ほぼ同時にこのキーボードを採用した情報端末をブルームバーグが提供し始めたと思われる。

ブルームバーグ端末の現行機種詳細はここに記載がある。このキーボードとは若干配列が違うのと、セキュリティが強化され、指紋認証機能が付加されている。
それらと比較すると、まだ情報漏洩が叫ばれることが少なかったのどかな頃のプロダクツ用コンソール....という印象を受ける。

ブルームバーグ社は早い時期からユーザーの要望を吸い上げて、それに応える機能を端末に実装していったとのことだ。経済・金融情報だけでなく、スポーツやエンターテイメント情報も配信され、それらを扱うために端末PCにマルチメディア(死語)機能が盛り込まれていったと思われる。
sound controller部。右側にMIC/Line OUT
ケーブルはMIC/LineIN/Power(PS/2電源のみでは音が出ない)

本機のサウンド機能は、ごく初期の力業的なものだ。

今日のUSBを以てすれば、「給電・デジタルオーディオコントロール・HID」は一本のラインで済んでしまう。しかし本機が発売された頃はまだUSBが出て間もない頃であり、キーボードのI/FもPS/2である。
したがってDA信号をライン上でやり取りするのはまだ無理、そしてアナログオーディオ部を駆動するにも今日と比べると、別系統の大電力を必要とした。

結果、ケーブルは画像の如く全て別系統の結線をまとめたものになっている。
おそらく固定端末である「Bloomberg Professional」用のキーボードなので、取り回しに特に問題は無かったのだろう。またこれに比べれば端だけ分岐していてまとまっているだけ、スマートと言える。

残念ながら、アナログオーディオ電源の電圧など諸元が不明のため、スピーカーを鳴らすことが現在の所できない。AC-DCアダプタですこしずつ電圧を上げて試してみようと思うが、肝腎の筆者所蔵・可変電圧AC-DCアダプタはロストしたままだ。やれやれ。

キートップ刻印と色以外は普通ぽい104key配列
Enterが大きい分「\」が下に追いやられた変態配列が右shift操作を阻害する

先の資料を拾い読みしたところでは、ブルームバーグ端末はUNIXベースの専用アプリケーションが走っているとのことだ。

本キーボードは基本的にWindows95+サウンドカードの環境で使用する目的で開発されたようだが、専用端末での使用のため、半数近くのキーに着色と特殊な刻印がされている。
いくつかの略号はなんとなく理解できるが、Fnキーは....ははは、さっぱりわからない。まぁ、普通にWindowsで使用する分には何の影響もないのだが。

むしろ問題となるのは、逆L字の大型Enterキーの影響で、BackSpaceキーの下から、右Shiftキーの横に追いやられた「\」キーだ(筆者はこの位置の変態配列キーボードをもう一台持っていたはずだが、思い出せない)。

ブルームバーグ端末ではあまり問題とならないのだろうが、ファイル操作を行う際にこの位置のキーは結構押しづらい。
そしてさらにマズイのは、右Shiftと間違えて押してしまう....ということである。
ブルームバーグ端末での使用を前提として開発したのであれば、それもありかとは思うが、OEM元のMaxiswitchからもマルチメディアキーボードとして発売されているので、その際にこのキー配列は問題にならなかったのだろうか。

(左上)上部筐体基盤と下部基盤はフレキで接続(右上)時代を感じるダイナミックスピーカ
(左下)ステレオで音域は120Hz〜15KHz(右下)そこそこしっかりした鉄板入り

キーボードそのものの素性は、一般的なメンブレンスイッチということもあり、可もなく不可もない、普通の打鍵感だ。
底付き感はくぐもった感じはなく、かといってヒットする感触が強いわけでもない。
比較的打鍵音は大きい気がするが、まずは快適といってよいキーボードだ。今から19年前の製品だが、スライダーの引っかかりなどはなく、状態は良い。もし酷使されていたのであれば、耐久性の高いなかなかに作りの良い一品であると言えよう。

かつてのトレーダーたちは、ヘッドセットをこのキーボードに接続し(なくてもMICとスピーカは内蔵されているが)、屏風開きのマルチスクリーンに映し出される数多くの情報ウィンドウを睨みながら、株や先物商品の売り買い注文を超高速で行っていたのであろうか。

....なかなかにかっちょいいが、そんな一品が筆者の元へと流れ来て、かつての競合社であるロイターの鍵盤と同居しながら、ゆるゆると余生を送っている...というのもまた、時の流れを感じさせるのである。




(2016/01/03記)

 

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