DESKO "Check-in" keyboard BMOL-5004UP/JIS2
発売元/製造元 DESKO GmbH
諸元
キー配列 101key
メカニズム Cherry MY白軸メンブレンスイッチ
備考 I/F:PS/2(KB/mouse),RS-232C(barcode {& magnetic card?} reader)
Junk Point 戦略的互恵関係?
つい先日、隣町に「富山の回転寿し」がオープンしたので行ってきた。

富山に限らず北陸は鮮魚店の激戦区で、回転寿しでも太平洋側の大都市圏にある「回ってない」寿司屋を凌駕するほどである。
その地元発のチェーン店のオープンだけに期待も高ま....ったわけではない。
筆者の家族にはもう一つ、そのお店が提供する「富山ブラック」という目的があったのだ。

ご存じの方も多いあの「多汗肉体労働系ラーメン」を近所で食べられる....ヨメはんを除いて濃い味&キワモノ好きの筆者一家は勇躍店内に乗り込んだ。
早速ヨメを除き全員が注文。一口すする。

顔を見合わす筆者←→長男←→次男。

「・・・さて、寿司にいきますか」

富山ブラックを目にしたことのない普通の方は「へぇ〜こんなのあるんだ」といった新鮮な体験をすることだろう。
だが、現地でガチなブラックを食した者達にとって、それはあまりに薄味な「関東ダシのラーメン」であった。

キー配列
問題のカード読み取り部

.....それまでにない斬新な機能を提供するデバイスは、当然のことながら当初はその単機能を有する製品として市場に現れることが多い。
だがそれが市場に普及するにつれ、巨大ハードウェア/ソフトウェアベンダーの思惑と、コストダウンという市場側からの希求によって、他のシステムへと統合されていくのが現代の流れであろう。ビデオアダプタしかり、I/Oチップセットしかりである。

一般的なユーザーにとっては、購入費用や煩雑なインストール作業を省略して、多くの新しい機能を享受できるメリットは大きい。
というより、「え?それって昔はついてなかったの?」程度にしか思わないほどになっているのかもしれない。

しかし、そうしたインテグレーションが全てのユーザーを満足させるわけではない。
例えて言うなら、APUなどのGPU統合型プロセッサはどう頑張っても同じダイサイズのCPU+グラフィックアダプタ構成のシステムの性能に並ぶ、あるいは凌駕することは困難である(ていうかベンダー側がそれを望まない面もある)。
絶対的な性能を求めるタトえ首ユーザーの存在が個別デバイスのベンダーにとって狙うべき市場となり、大多数の「使えりゃいいや」ユーザー市場向け製品との棲み分けが行なわれていくのだろう。

やたらと長いケーブル
そうした「統合」の流れにより生まれたモノなのであろうか、このキーボードは。
....多分そうなのだろう。3つの機能を集約した多機能キーボードなのだから。
だが統合した機能の中のひとつが特殊すぎて、果たしてまとめる必要があったのかどうか、若干評価に困るデバイスである。


筆者はこのキーボードを、久しく訪れなかった大須、その巡回コースとなっている店でまたも拾い上げてしまったのだ。

店員さんが「どうしてもダメです」と仰るが為に画像を用意できなかったのが返す返すも残念なのだが、このキーボードに装備...というか付着しているポインティングデバイスが3タイプあり、非常に興味をそそられた。
本機の「 パームレスト上のポインタ+その両側の2ボタン」タイプと、同じく「パームレスト上のポインタ」に「手前の2ボタン」、そして筆者がもっとも食指をそそられたのが「GH間のポインタ+手前の2ボタン」....つまり「(スティックだけ)TrackPointタイプ」なのだ。

前2者はどうもオプションで後付けするタイプのようなのだが、疑似TPタイプは元々装備されている感じだった。
何度も持ち帰ろうかと思った....が、かなり汚れと傷が酷く、泣く泣く一番キレイな固体を拾い上げた。(いや、流石にこのデカさでは3枚そろえようとは思わなかった。いくら500円とはいえ....この日は電車だったし)

CherryMY白軸
で、このキーボード最大の特徴はこのスティックポインタ...ではない。
航空便のチケットやカードを読み取るスキャナが装備されていることだ。

「DESKO Check-in keyboard」シリーズは現在でも後継機が製造されているようだ。最新の5200はUSB接続でスッキリ配線なのに対し、この5004は2m近くあるケーブル+PS/2コネクタx2とRS-232Cの豪華3本立てだ。あまりにも長くて大仰なケーブルは、搭乗カウンタの上にキーボード→足下にPCという配置を想定してのことだろうか。

キースイッチは独製品らしくCherryスイッチを採用している。店頭で叩いてみたとき「むにゅっ」という感触だったので「もしやアレ?」と思ったら、やっぱりMY白軸だった。

「浅いストロークでコネクト」&「叩き方次第で極めて静音」....というのはこれも「空港ロビーで女性職員がオペレート」という使用環境にフィットする気がする。白軸は今日のアイソレーションKBと同じく、爪の長い方でも操作しやすそうである。

力任せのスティックポインタ
だが一方で、ポインティングデバイスは「いらなくね?」感全開だ。本個体のそれも、本体に両面テープで貼付けてあるというハリボテッぷりだ。
Vista標準のドライバ(USB変換ケーブル経由なのでHID準拠デバイス)で動作はした。....したのだが、その速度たるや、梅雨時に紫陽花の枝を進む蝸牛を彷彿させる低速ぶりだ。普通のTrackPointのようにではなく、まずスティックの直上から圧をかけておいて操作すると、なんとか実用に耐えるほどの速度になった。この為体では、ほとんど補助的な使用にとどまるものではなかろうか。

肝腎(?)のスキャナ機能だが、すでに筆者宅にマトモなRS-232C装備機がなくなっている(+めんどっちい)ためまだ試していない。ドライバが必要なのだろうが、当然そのようなモノはDESKOのサイトを見ても提供されていない。
ていうか、手元に読み取るべきバーコードを記載したモノ....航空券というものが我が家には存在しないのだ。ここ何年も空路の旅なんてしてないしなぁ。

そもそも、最近の航空会社はWeb予約→二次元バーコード読み取りでチェックイン...が本流になってきているのではなかろうか。
これと同じように、コンピュータテクノロジー発展の陰で密かに消えゆく徒花と思われるデバイスであり、それ故に筆者の収集意欲が刺激されてやまない珍品といえよう。




(2012/12/24記)

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