DELL SK-3210JP with Trackball
DELL SK-3210JP with Trackball
製造元 DELL inc.
諸元
キー配列 101keys/JP
メカニズム membrane/rubber cup
I/F PS/2x2(keyboard/Trackball)
備考
Junk Point Ctrl+Xを憶えよう

異なる機能やオブジェクト達の融合は、コンシューマーに新たな世界を見せてくれるのだろうか。

先日、「日経BizGate」Web版に、『機能の引き算』がもたらす新たな商品価値」という記事が掲載されていた。

記事は「完璧がついに達成されるのは、何も加えるものがなくなった時ではなく、何も削るものがなくなった時である」というサン・テグジュペリの箴言を引き合いに出し、必要とされる機能を簡便かつ明快に提示する商品こそが、大多数の消費者に認知され、ひいては社会そのものも変えてしまうエポックメイキングな存在になるとし、その一例として屋外での再生機能に特化した「ウォークマン」、シンプルな操作性でその後継者となった「iPod/iPhone」を挙げていた。

筆者も確かにその指摘に首肯する一方で、iPhoneは冒頭に提起した「機能の足し算」の成功例でもあると思うのだ。
東洋の島国などで、ローカルかつ散発的に行われていた「コンテンツ配信サービス」という「携帯通信端末」と「音楽再生デバイス」の融合を、初めて全世界的に普及させ、それが流通経済のしくみそのものを変えてしまったからだ。

もちろんその成功の裏には、エンドユーザーレベルでの通信インフラの充実などの社会的要件が揃う時期と一致したという幸運(?)や、アップルという、よく言えば「ハード/ソフトをひっくるめたトータルコンテンツプロバイダ」、悪く言えば「巨大な排他的氏族コミュニティ」の周到な用意があったのはいうまでもなく、それはシステムを文化そのものにまで昇華させようとする熱意と、冷静かつ客観的な顧客ニーズの収集分析に支えられていたと言えるだろう。

見覚えのあるSilitekゴム椀とスライダー

そうした人々の情熱と努力によって歴史の高みに到達した偉大な成功者と「融合」という点だけは同じ...という例は無数に存在する。「とりあえずくっつけてみますた」ていう奴らだ。

「PC」と「手書きメモ」を接合した「ThinkPad TransNote」、「ハンドヘルドPC」と「電話機」を合体した「PalmTopPC110」、「ノート」に「OHPシートの機能」をネジ込んだ「ThinkPad755CDV」などが挙げられよう。
彼等の末路、その多くは歴史の片隅に忘れられた奇天烈なキメラとして、一部の好事家に愛でられることになる(特定の企業製品ばかりですって?気のせいです)。

ここに、「コンヴェンショナルな文字入力デバイス」であるキーボードと、「忘れ去られようとしているポインティングデバイス」であるトラックボールの融合HIDがある。さて、こいつは林檎の仲間なのか、それともその他有象無象の片割れなのか。

(左上)三点支持光学ボール(右上)Logitech製
(下)底面。一応鉄板が入ってる...RT6652系よりは頑丈(笑)
資料を調べてみると、このSK-3210はDELL PowerEdgeシリーズ(ラックマウントサーバ)のコンソールとして使用される目的で発売されていたようだ。
普段使いではなく、メインテナンスなどの際だけに使用すると思われるので、ポインティングデバイスもその時一緒に使用できればスペース的にも操作的にも効率が良い....ということなのだろうか。そういう意味ではニーズに合致している。

一方で、ThinkPad使いの筆者としては、ポインティングデバイスもキーボードのホームポジションから手を離さずに操作できるのが当たり前と思っていて、このように独立したトラックボールが本体にスミッコぐらししているのは実用性にかなり問題があるのでは....と思っていた。デバイス自体が構造上デカくならざるをえないので、このような配置にする以外に方法がなかったとも言えるのだが。

しかし薬指と小指でトラックボールを操作してみると、それほど右手をホームポジションから遠ざけずに(少なくともEnterが叩きにくいほどには離さずに)カーソルを動かすことが出来る。流石にクリックボタンは両指では押しにくいのだが、少なくともキーの谷間にトラックボールがコッソリ存在するこれよりは使いやすいのではないかと思った次第である。

ただ、それは文字キー+ファンクションキーとの位置関係がまずまず....ということである。
この位置にトラックボールを配置した故に押しやられたキーが、筆者としては操作性に重大な影響を及ぼしていると思えるのだ。

ここ以外考えにくいとはいえ...
#4/#5指での操作が楽?

まず、10キー。
慣れればうまくいくのかも知れないが、右手を平行移動して文書中の数字入力を行おうとすると空中を右手が彷徨ってしまう。
しかもこれらを打とうとすると、掌底がボールやクリックボタンに接触して、あらぬ所にカーソルが吹っ飛んで行ってしまうのだ。

そして仕方のないこととはいえ、Enter横の6個のキーは10キーと共用となり、省略されている。
この中で最も困るのが「Delete」だ。筆者は頻繁にこのキーを使うのだが、そうなると10キーとの使用はほぼ排他的になる。
しかもそのDeleteキーがホームポジションから離れた位置にあるので、非常に使いにくい。

見た目のデザイン的には統一感があるのだが、操作上は非常に使いにくい。
つまり....正直要らないのだ。10キーは。PrScr/ScrollLock/Pauseキーなどと3x3のブロックを構成して、その下にトラックボールを入れるという10キーレスレイアウトにしてもよかったのではないだろうか。

Del/home/Pgup/PgDnがNumキーと排他利用
「\」キーが左shift横なのは非常に迷惑

そしてもう一つが「\」キーだ。
以前にもどこぞのキーボードで見た気がするが、このキーが左shiftキーの右側に移動している。そして同じサイズのまま右へキー1個分移動した右shiftキーの直ぐ右に詰める形で、カーソルキーが配置されている。

トラックボールを入れるためにスペースを詰めたこの配置は、「\」を筆者の左#5指が左shiftキーを押すドンピシャの位置に持ってきてくれている。おかげで大文字を打とうとすると「¥」が入る....ということの繰り返しだ。

いや、どうしてこうなったのか。US板でもこの配列になっているらしい(*)。
どうせならカーソルキーを小さくするとかできなかったのだろうか。キーそのものはスライダーがスムーズで、しかも軽いタッチなので、結構軽快にタイプできるのだが。

さて、ここまで挙げてきた長所(?)/欠点を踏まえて当初の課題を検討してみる。
このデバイスは「機能の足し算」の成功者なのか。

ネットを見ていると、所々に「SK-3200/3210がダメになったけど、替えはあるのか?」という書き込みが散見される。おそらくPowerEdgeのユーザー、あるいは管理者と思われる。

.....そう、評価する声が「所々に」「散見される」のだ。
あとは....ええ、筆者はまあまあ気に入ってますよ。ちょこっと奇天烈なキメラとして。

(2016/02/09追記)

(*).....US版の画像を見ると、「\」はEnterの上でした。
ということは、この配置はJP版独自配列ということになる。全く以て鬱陶しいものである。





(2016/02/08記)

 

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