HITACHI CMI-6D0Z4
HITACHI CMI-6D0Z4 Rev.B
製造元 日立製作所(ミネベアOEM)
諸元
キー配列 日本語/109key(Win*2, Context*1)
メカニズム メンブレン/ゴム椀
I/F PS/2
備考 Rev.AはMNB-RT6652TWJPのOEMだが?
Junk Point 祖谷の蔓橋
ここのところ「撮り鉄」が世間を騒がせている(...というかマスコミが騒いでいる)。

筆者が現役の「鉄」だった頃には、確信犯的に「いいアングルで列車を止めたい」と、保線区の小屋に放火した奴がいたぐらいだから、線路脇で撮影して図らずも列車を止めてしまったなどというのはまだ可愛い方だと思うのである。

「鉄」が文化として認知されつつあるとはいえ、まだまだ一般社会の人からすれば「キモヲタ」で理解し難い存在なのかも知れない。

筆者が問題に思うのは彼らの行動ではない。

列車を止めたために、それこそ数百万単位の賠償を請求される事もあるということも彼らは当然知っているはずである。
そうしたリスクを対価としてでも、いい写真を撮りたいという熱意の発露にほかならないからである。

いや、もちろん人身事故の危険をもはらんでいるのだから、その点は問題視しなければならないだろう。
しかし「列車との接触の危険性」を論ずるならば、彼らの行為よりも、頻繁に行われる「踏切突破」の方がはるかにリスクが高い。

筆者の視点からすると、彼らを危険な存在として片付け、理解不能なモノを非難や嘲笑、そしてより厳しい規制の中に閉じ込めて安心しようとする群集心理と、それにつけ込んで人気を得ようとするマスコミの報道姿勢のほうをこそ問題と思うのである。

.....話がそれた。というか、つい昔のが騒いで、本題を述べるのを忘れていた。

言迷のRev.B
ネット上に該当するOEM型番情報が見当たらない
何が言いたかったのかというと、人の主義や嗜好は、多種多様だということだ。

他者に同意し難い部分があったとしても、そういう主義主張が存在する事を理解しようとすることが大事なのであって、そうした意識を抱いていれば、ある時その先鋭化した先端部分で、共感を抱き合える部分が発生した時、お互いにとって新たなる展開が生まれるのではないかと感じるのだ。

もっとも避けるべきは、本来は特異なものであるはずの個人の経験や主義・思考を「一般論化」して、それを普遍的なモノとして狭小な原理主義に凝り固まってしまうことだろう。
筆者が自らの記述で「〜と思う」をやたらと使用するのは、そうした陥穽に陥らないよう、自らを戒めているから....だと思うのですけど。

で、ようやくここからもの凄く矮小な世界に突入するのだが、キーボードの嗜好も人それぞれなのだな....と改めて感じる。

筆者は今のところ、基本的に『クリック感のある、剛性の高いフルキーボード』が「良いキーボード」だと思っている。

そうした嗜好からすると、このキーボードはなかなかに微妙な位置づけになる。

ネット上の資料によると、この日立CMI-6D0Z4の「Rev.A」は、著名なサイトで評価の高い「ミネベアMNB RT6652TWJP」のOEMということのようである。
妙に大きい「・」
ところが、このキーボードの裏面を見ると「Rev.B」とある。

筆者はオークションでこのキーボードを入手したのだが、OEM元はミネベアであることは確かなのだが、このP/Nを検索した限りでは、型番号がどこにも見あたらない。

出品者の方も判然としなかったようで「(RT6652に比べると)微妙にキータッチが軽く感じられる」と仰っていた。

外観もオリジナル画像と比べると、微妙に違っている。

RT6652はケーブルがカールコードであるのに対して、本機はカールしていないストレートケーブルである。
アクチュエータは
RT6652と同じ独立型
一方で、キートップは同じシルク印刷と思われ、キートップはサラサラとした好感の持てる感触だ。

キートップを外すとアクチュエータが見えるが、こちらもRT6652と同じタイプの独立軸になっている。

キータッチ自体は、ゴム椀式にしてはクリック感が割とハッキリとした、軽快なタッチに仕上がっている。
(といっても、Libertouchのデフォルト35gに比べるともう少し手応えがあるが)

タイプの感触だけに限って言えば「なかなかのもの」と言え、ネット上に存在するRT6652についての情報と一致するように思える。
筐体を押すと
ごらんの通りの撓み
しかし、筆者が唖然とし、「この機は本当にRT6652か?」と最初に疑念を抱くに至ったのは、その全体的な剛性の低さである。

筆者は職場ではパームレストとして、3mm厚ほどのコルク板をキーボードの手前に挟んで使用しているのだが、このキーボードをそのようにしてタイピングした時、妙なバウンド感があったのだ。

「さてはコードでも挟んでるのかな?」と思ったがそのようでもない。
よくよく見てみると、右の画像のように、ガワの真ん中辺りにに荷重をかけると....何だこのたわみ方は。
再組上げの擦り合せに失敗して、内部にウロの出来てしまったThinkPadでもここまで激しくは湾曲しなかった。

「ある程度の評価を得ているキーボードが、ここまでヤワな構造であるはずがない」
筆者の価値観からして、そのように判断したとしても致し方のないところだっただろう。

筆者入手の個体は
左Ctrlが微妙に沈んでいる?
もちろん、この個体固有の問題という可能性も否定できない。

ただ左の画像のように、両側Ctrlキーが微妙に外側に傾いて(よく言えば『Ergonomic』に)沈んでいたり、筐体のハメコミ部がガタついていたりと、全体にわたって組上げ精度があまり高くないように感じられる。

とすると、この剛性の低さはRT66xxシリーズ、ひいてはミネベア製のキーボードに共通の「特性」なのではないか。

ミネベア製キーボード愛好家の方々のサイトはネット上で数多見られるが、そこで語られる好意的な使用感にはこのような「特性」が前提に折り込まれているのかも知れない....とそんなことを想像してしまった。

三枚下ろしの図/制御基板には"MNB"の刻印アリ
筐体は剛性を期待するのが無理
一応鉄板は入っているが
実のところ左画像のように分解してみたのは、著名サイトの解体画像で基板直下に鉄板が入っているのを見て、これほど撓むこのキーボードは、ひょっとしたらそうした剛性を上げる構造物が省略されているのでは....と思ったからだ。

だが実際三枚に下ろしてみると、そんなことはなかった。構造的にはRT6652と共通である。

そして解体後、筆者の想像はさらに確信に近くなった。

プラスチックの筐体は言うまでもなく、ヘナヘナだ。
前述の筆者職場での使用状態で、上から負荷をかけても「ミシリ。」ともしない、IBMヴィンテージキーボードの「鋼鉄の如きプラ筐体」とは比較にもならない。

そして鉄板は....バスタブ構造のリムの高さも含めた厚さ的には、そこそこあると思われるのだが、試しに基板単体でよじったり中央を押したりしてみると、コレが鉄板かと思うほど大きく歪む。もちろん弾性変形で、元に戻るのだが。

とある著名サイトの管理者の方はRT6652を解体する際に、筐体と基板を「モナカとあんこ」と記述されていた。

管理者さんは、鉄板が存在することによりキーの底突き感に良い影響を及ぼすという「キータッチへ好影響を及ぼす中心的存在」という意味でこのような表現をとっておられるようなのだが、ミネベア製キーボードが持つこの「モナカ」的強度特性を、無意識のうちにこのような比喩で表現されていたのではなかろうか。

そのような仮定の上でこのキーボードを見ると、やはりこれは「筐体に荷重をかけるように叩く」のではなく、「指を滑らせるようにして滑らかにキーを押す」ことで、初めて快適な感触の得られるキーボードなのかも知れない。

先に述べたようなキーボード嗜好を持つ筆者のような人間にとっては、なかなかに「逸品」とは言い難いのだが、別の視点からキーボードを評価する目を持つ方々にとっては、これはこれでまた優れたデバイスなのだろう....とも感じられる。

特に今日の「安かろう、悪かろう」といった感じのローコストキーボードとは、剛性不足という点では一致していても、事キータッチに関しては全く別物の、評価に値する魅力を持っていると思われる。

(2010/03/03記)
 

Keyboard Junkyリストへもどる

Junk Junky