MISAWA CUT Key VC-101
製造元 ミサワホーム(製品情報)
諸元
キー配列 22keys/独自配列
メカニズム ゴム椀+メンブレン/一体型キートップ
備考 I/F:PS/2
Junk Point ぎゃる打ち不可?

特徴が出にくい(=ネタになりにくい)アイテムという理由が多分にあるのだが、筆者が紹介しているキーボード群には、2機(これこれ...あ、これもか^^;)を除いてテンキーパットが含まれていない。
だが迂闊にも...というべきか、これと似て非なる「片手キーボード」なるものに、筆者はこの製品に出くわすまで触れたことがなかった。ていうか、意識していなかった。
それはおそらく、それらの存在意義が筆者と最も縁遠いコンピュータジャンルである「ゲーミング」ー定型のキー押しが操作のほとんどを占める使用目的ー....のためのデバイスだと思いこんでいたからだろう。

PCが存在しなかった時代のオフィスは、片手にペン、そしてもう片方の手で別のアイテムを操作という作業が一般的だったわけで、その両手がキーボードに占有されることは作業効率上好ましくない....と考えた人が、こうしたデバイスの開発をビジネス用途で思いつくのは当然の帰結ともいえる。

尤も、このジャンルには先達がいる。携帯のキーパット、あるいはさらに遡ると、固定電話や、絶滅寸前の公衆電話(日本はどうか知らないが)のダイヤルがそれに当たる。

フルキーボードも含めて、限られたキーに複数の入力文字を割り当てる方法は、
1)コンビネーション押しによるオルタナティブ
2)??回押しによるローテーション
に大別できるだろう(現今はフリック・ジェスチャーなども可能になっているがとりあえず置いとく)。


「懇切・丁寧・簡便」な教本をお付けします

筆者がいろいろ調べた中で「を」と思ったのはこれだ。

Matias Half keyboard

これは左側/右側のキーが写像的にコンビになっている。つまり小指担当のキーは同じということだ。
オルタナティブ式だが、キーの数も少なく小型にまとまっていて、ブラインドタッチを習得している人には扱いやすい(ようにみえる....)。

一方で、日本で販売するデバイスを作る側としては、ケータイでのメールが一般に浸透した日本なら、おそらくローテーション式の方がなじみやすいと考えるだろう。このCUTKeyVC-101のキーアサインも、おそらくケータイ、あるいはポケベルへの送信操作(笑)の延長線上で考案されたものではなかろうか。....当初は。

ごらんの通り、形状はテンキーパットによく似ている....が、いくつかのキーが追加されているため、微妙に縦長だ。
ネット上では「成形がイマイチでガタツく」という意見もあったが、筆者が購入した個体はそのようなこともなく、オールプラであるにもかかわらずかなりしっかりとした作りだった。

(左上)マカー対応(右上)普通のゴム椀です
(左下)斜めから打つと良いかも(右下)「もう一方の手でFn」って..

ハードウェア部分としては、特に見るべきものはない。
キーの構造はゴム椀+メンブレンで、押下げはやや重めである。底付き感がややくぐもっていて、ひとつのキーあたりの叩打回数が多いこの手のキーボードでは、底付きの好みによって評価が分かれそうである。筆者の場合は、テンキーの操作に倣ってキートップ上を指を滑らすように操作するので、むしろこのたたき心地の方がスムーズにタイプできるように感じられる。

さて、問題のキーアサインだ。

詳細は解説を見ていただければよいのだが、要するに「日本語のローマ字入力(子音+母音)」に特化していて、キー配列がそれに合わせたものになっている。文字入力部分の下半分が子音、上半分が母音のキーだ。

つまり、日本語を入力する際には (一部を除いて) まず下半分の子音キーを押してから、上半分の母音キーに指を移動させることになる。子音はローテーション式で、母音(AIUEO)はそれぞれ独立したキーになっている。

文字入力キーの外周を半包囲するような形で、機能キーがレイアウトされている。これらと文字キーの同時押しでFnキーなどPC固有のキーを動作させる。
最下端のキーは親指で二個押しする操作もある。これをスムーズに行うには、腕がまっすぐ本機に向かう位置よりも、やや肘を外に開いて斜め横からタイプする方が操作しやすいように感じられた。

メーカーサイトには「日本語と英語を知っているキーボード」と喧伝されている。のだが....「だったらケータイ式でええやん」というのが筆者の正直な感想だ。ここまで語ってきて、身も蓋もないが。

他の操作をしながらの入力の場合、ブラインドタッチのように無意識の操作ができない限り、指の移動を正確におこなうことが難しいと思う。
ましてや、この手のデバイスは各社が独自に趣向を凝らした結果、「統一された操作体系」などというものとは無縁の混沌を呈しているわけで、だったらむしろ「かな連打」のほうが操作の習得はたやすいのではなかろうか。
おりしも発売されたのが世紀末の1999年。世はガラケー一色で、これさえあればギャル卒OLも即戦力....ということになったかもしれない。多分。

リキ入った野心的なパッケージ
まぁ使って初めて分ることもあるということだ(笑)

この製品のパッケージには、「電話を受けながらCUTKeyで楽々入力」....ぽな女性の写真が印刷されている。
が、ガチにこの境地に至るまで、どのくらいの修練を要するのであろうか。
ていうか、このようなシチュエーションが日常の職場であれば、筆者のように固定電話用BTヘッドセットを購入した方がよほど効率がよいのではないだろうか。(そうですよね?>上司の方)

なお、製造元は筆者の師匠の一人であるT先生と経絡測定器プリケアナディを開発するなど、そのニッチスピリット....というか迷走多角経営ぶりでつとにその名を知られるミサワホームである。
発売当初の価格はなんと\13,800。それが今日(2013/9時点)、筆者が贔屓にしているキーボードのweb通販サイトで\980というビーンボール紛いの投げ売り状態だ。爆売れ→量産効果で低価格化....じゃないですよね。まさか。

いまどきPS/2 I/Fという古色蒼然ぶりとともに、時代の彼方へ消えゆくデバイスなのであろうか。

....と思ったら、後継機が出てました。流石です>懲りないミサワホームww



キートップ外そうとしたら軸がもげました(材質疲労?)


(2013/9/21記)

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