IBM SK-8810 Wireless RF keyboard
manufactured & distributed by IBM Inc.
諸元
キー配列 87keys/ANSI + 8 optional function keys + 2pointer keys
メカニズム Membrane/rubber cups
I/F PS/2, 27MHzRF
備考
Junk Point Hex戦よりは自由な動き

キー配列
上部筐体と裏面/別画像なので色調が違うが、同じ色です

このコーナーで取り上げている「Wireless HID 」もそこそこの数に上ってきたが、そもそもHIDを無線化する意義はどこにあるのか。
それを考えるに、
・レイアウトフリー(自由な配置)
・ユーティリティー(必要に応じて接続)
....がそれにあたるのだろう(あたりまえだけど)。

本体、あるいは表示装置とHIDが有線接続の場合、どれほど工夫をこらしても、配置にはおのずと制限が生じる。
また、HIDが常に装備されているノートPCより、スマホやタブレットとRF/BluetoothHIDを持ち歩くほうが可搬性に優れるケースもある。

一方で、当然だがデメリットも存在する。
・遅延などの操作安定性
・接続開始の手間と、接続の安定性

このうち、前者については今日のゲーミングKBなどの特殊用途を除いて、かなり改善されてきている(ゲーミングデバイスを謳うWirelessKBすら発売されているぐらいだから)。
後者については改善半ば,といったところだろうか。キーボード側がバッテリーで駆動している以上、消耗時に接続が不安定になるのはいかんともしがたい宿命であるだろうから。

(上)オプショナルFnキー。なかなかかっちょいい
(左下)見慣れたSilitek/(右下)シンドリカルスカルプチャ

以前このコーナーでご紹介した、最も古いワイヤレスHIDというと「KINGCASE KB-304RF」であった(尤も、筆者送別(?)秋刀魚おふではちどん師より頂いた本デバイスはキーボードをどうしても受信機に接続できず、ワイヤレスマウスとしてのみ使用していた...というイワク付きではある)。
おふ会が今を去ること15年前の2004/10/24で、師がPCデバイスの展示会に赴かれた際にげとしてこられた試作品ということだったように記憶しているが、おそらくそれより更に以前に遡る時点で製造されたデバイスと思われるのが、本機「IBM SK-8810 Wireless Navigator Pro Keyboard」である。

ヴィンテージKBといってもよい年代物にもかかわらず、開始価格で入札した筆者に誰も続かず、1.8野口(まもなく1.8北里)+それを凌ぐ送料で我が家にやってきた本機の素性を探るべくネットの海を漁った筆者は、ありがたいことにマニュアルに遭遇した。

このマニュアルのDateは2001/12/21となっている。このドキュメントの作成日付なのか、それとも製品添付のドキュメントがこの日に作成されたのかは不明だが、いずれにしてもこのドキュメント以前に本機が存在していたと思われるから、本機は18年以上前に製造されたことになる。

(左上)今日的には巨大なRx部/(中央)PS2USBで接続(右上)単3x4の大食漢
(左下)KB背面のConnectボタン(右下)ユーティリティソフト

さて「ワイヤレスKBの始祖」とも言うべき、本機の操作性である。

まず、マニュアルを見て感じるのは、一般ユーザーに必要な「実際の操作方法」よりも、「システム設定者」に向けたと思われる「ワイヤレスシステムのブロックダイヤグラム」や「無線接続の周波数Ch」、「Extension keys' code」などの説明ががつらつらと記載されている点だ。
もしかしたらプログラマブルな機能の設定などに関係するのかも知れないし、ワイヤレスが一般的でなかった時代は「あれ、複数台使用したら混信するんでね?」などといった疑問に対する回答を用意する必要があったのかも知れないのが、今日読んでみると、概ね「開発元の先端技術自慢話」にしかなっていないのではないかと感じてしまう、時代を感じさせる内容に思えてくる。

で、その無線周波数は今日の非BluetoothHIDの標準である2.4GHzRFと違い、件の動かない304RFと同じ27MHz帯を使用している。....ということは、青歯や電子レンジ君の影響を受けないと言うことになるのだろうか。
ちなみに、筆者が試したところでは、1.5m程度離れても特に動作に支障は無かった(筆者の視覚の方に障害が発生したが)。ちなみにAmazonUSのレビューには「20フィート離れると取りこぼしが発生する。遮蔽物があると同様に動作に支障を来す」との記述がある。当時、そこまで離れて操作するような巨大なディスプレイもあったのだろうか。プロジェクタなどを使用するケースということか。
左ボタンが小さい違和感
八卦ポインタ

本稿はKeyboardPC2 ProにPS2←→USBを介して接続して使用しているが、今のところ実用上問題の出るような遅延は発生していない。一度だけ、休止状態から復帰後にキーボードのみ反応しなくなる(ただし受信機のDataインジケータは反応している)現象が発生したが、PS2USBケーブルをPCから抜き差ししたら再度動作した。

上部にあるプログラマブルキーはかっちょいいが、ユーティリティーを入れないと動作しない(反応はしているが、所定の動作は起こらない)。
そのユーティリティソフトCDの中身を見ると、対応するOSは「WinXP(フォルダはあるが、readmeの対応リストには無い)/2000/Me/98対応」の模様だ。おそらくそれ以降のWindowsでも動作するのではないかと思われるが、RFチャネルの切替など結構デバイスに近いところの設定もユーティリティレベルで操作するようになっているみたいなので、筆者のPC環境で入れてみるのはちと憚られる状況である(と、ちきんなことを言ってみる)。
もちろん、それ以外のキーとスティックポインタはWin標準ドライバで正常に動作する。一方、件のレビューを見ると、LINUXなど非WIN系OSでは動作しないようである。

キースイッチはSiltekのメンブレンスイッチで、KB-0225あたりと同じような底付き感の曖昧なタッチである。ストロークとコンタクトの関係は可も無く不可も無く...といったところだ。


DataRxLEDの点滅がCOOL....なだけ?

スティックポインタで円の軌跡を描こうとしたが、これはダメだった。どうやら移動方向が8方位に限定されている様子だ。
2000年当時にTrackPointはIIIにまで改良が進んでいたはずで、当然こちらでは実用上問題の無いポインタ移動方向の微細化が実現していたと思うのだが、このスティックポインタは技術的に別系統のものなのだろうか。

おそらく今日のように、描画などの繊細な作業というよりはGUIのスイッチングデバイスとして使われていたのであれば、これで十分という判断だったのかも知れない。

ポインティングデバイスのボタンは、大きいほうが右クリックだ。これも現代のポインティングデバイス操作としては違和感がある。でもTypeM model5のTrackBallもそうだった様な記憶がある。これが当時のデフォルト...だったのだろうか。

実用上は特に問題なく、一般のキーボードと同じように使用できるのだが、さりとて今日において本機を選択する積極的な理由はほぼ無いといえよう(当然だが)。あるとすれば、OMRONの2400bpsポケットモデムと同じ位のサイズの受信機のDataLEDが、タイピングに合わせて点滅するかっちょよさ(?)てなところだろうか。知らんけど。



おまけ

遙か彼方のコンソール向けて
(ちなみに1.8野口でした)


(2019/01購入、2019/04/28記)

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