Q-gadget KB02(Blue x Green model)
発売元/製造元 UPQ/shenzhen rivers Technology Co.Ltd
(恐らくBastron OEM)
諸元
キー配列 US/67keys
メカニズム Capacitive touch panel
備考 I/F:Bluetooth/MicroUSB(Charge & HID)
battery good for 10hours
Junk Point 電気売ってないカフェでの使用向け
コンシューマーエレクトロニクスの世界にも「Fast fashion」の潮流が押し寄せているのだろうか。

もとより日本経済界、ひいてはそれに便乗する政治屋達が標榜する「物作り」の理念は、熟練工による高付加価値製品の製造というところにあったように思うのだが、現実には企画・設計のみ国内でおこない、生産は大陸の受託生産業者に...という流れが一般的となっている。

ファッション業界では、デザインセンスが商品価値の大きな部分を占めているので、いくら生産を他国の手に委ねても、企画元がイニシアティブを手中にし続けられるのだろうが、電化製品では基礎デバイスの生産能力や実装技術といった、土台となるノウハウが重要となってくるのではないか。
安価な生産を省力・低コスト・短時間で行おうと生産拠点を国外へと求めているうちに、肝腎の企画/設計能力も失われていくのではないか...という懸念があるのももっともなところではないだろうか。

また海外委託生産には「別のもうひとつの問題」あるが....、それは、ここの読者の方々には言わずと知れたことであろう。
この「Q-gadget KB02」企画・販売元である家電ベンチャーのUPQは、今日(2017/09)まさにその問題の渦中にあるようだ。炎上スマホとか、アンダースペックなモニタとか。
個人的にはユニークな企業であると感じている(と同時に、ややデザイン性や話題性に走りすぎている感じが鼻につきもするのだが)ので、今が苦境であるならば、なんとか乗り切って頂きたいものだ。あ、できればガヂェッツは安価なほうが嬉しいですけどね。

キー配列
Bluetooth/USB両用
だがBlueSoleilとのボンディング失敗
そんなこんなの流れの中、筆者がやや複雑な視線で眺めていた本機「Q-gadget KB02」が、Amazonに特価セールで出てきた。
通常価格1.89諭吉の所、1諭吉ぢゃすと。

.....ええ、この手の可動部を持たない(かつ、"Halo keyboard"のようなタイプパターン記憶機能や、"Swiftkey"のような強力な誤入力訂正機能を持たない)HIDが○○なのはわかってるんです。
カッコイイ葉っぱとか、魔法の立方体(直方体だけど)とか、本機の兄貴とか。これとか....は、本体自体が「可搬」困難か。物理的に。

いずれにしても、実用的かどうかという視点からすれば、購入可否判断の趨勢はおのずと決していただろう。
だが、この手の案件に遭遇した際に、筆者のアタマの中でそうした功利的判断が実行されたケースは少ない。
そう、これは「購入」ではない。「散財」なのだ。

筆者がぽちったのは、「モデルNR」。赤と群青のフレームカラーだった。有線のみだった「KB01/01X」にはなく、後から追加された色だったし、やや「濃ゆい」印象だったので「不評で投げ売りなのかな」と思ったのだ。....が、何故か到着したのは先行の「モデルBG(エメラルドグリーン単色)」だった。来なかったとなると見てみたかった気もするが、まあいいか。

上述のように、どう見てもこれは「Bastron bluetooth keyboard」のOEMと思われる。
細かいキーピッチや、キー文字フォントが独自のものとなっている。BastronB2から一番の変更点は、縦6列から、ファンクションキーをFn+コンビにして5列化したところだろう(←これはBTv4.0でも採用されているが)。

筆者にとって良い点はというと、B2で難渋した「Entrerキー右側」への不要なキー回り込みがないことだ。
一方で、f12右のスリープキーは危険だ。試しにと今押してみたら、とくにコンビネーションでもなく、いきなり録画中のサーバが休止に入ってしまった(プリ^2最終話....orz)。
スクリーンキャプチャを多用する筆者としては、是非ともFn+操作となる「PrtSc」の方を優先にして貰いたいところだ。

BastronB2(上)と並べてみる
Fxキーを共用化した分文字キーは大きくなったが...
Bluetooth化されることで、バッテリーの搭載などによる筐体の肥大を心配したのだが、上部フレームが少しぶ厚くなったに留まっている。
これによりティルト角が少しだけ大きくなったが、操作性に大きな支障は無い。
ていうか、元々操作しやすいわけではないのだが、それはこの際置いておく。この手の機器操作の常で、慣れてくると何とかかんとかブラインドタッチも可能になるものだ。

カタログスペックを信ずるなら、バッテリー容量は1,040mAhとのことだ。消費電力は特に記載が無い。
このバッテリーは、満充電になるとLED表示が赤→青になる...はずなのだが、ここ数時間、この文章を打ちながら充電しているはずなのに、一向に充電完了する様子がない。大丈夫だろうか、まさかスマホのように....と心配になって上部フレームに触ってみたが、発熱は全くなかった。本機の消費電力はさほど多くないということなのだろう

筆者のサーバ機Bluetoothスタックは「BlueSoleil」なのだが、ボンディングのPINが入力できなかった。で、結局USB有線キーボードとして現在使用している。
(上)脚が付いたのはBTモジュール+電源の影響もあるか?
(下)ティルトは高めだが、これが却って打ちにくくしているかも
BastronB2と同じく、本機はタッチパッドモードに1〜5・10本指のジェスチャーが設定されていて、言われたとおりに使ってみると確かに「ををっ」と感嘆の声を上げそうになる。

しかし、問題はこの後だ。

範囲選択なり、アプリ移動なりをして、さて入力をしようと思っても....当然反応しません。ええ、切替えていませんから。
おもむろにキーボードモードに戻して入力→またタッチパッドモード....の繰り返しとなる。ちょっとミスをしたところを範囲指定して消去、といった操作は、感覚的に躓いてしまう確率が非常に高いのである。

さらに、このタッチパッドモードへの切替キーが、あろうことか通常「BackSpace」キーが配置されている場所にいる。
ひと文字ミスして、反射的に手を伸ばし、次の文字入力を始め(←この時点で画面上ではポインタが乱舞している。しかしキーボード上から視線を離せない本機オペレータは、画面上の異常に気が付かない)....そして文節を入力し終わったユーザー(と思い込んでいる)が上げた視線のその先には、あっちこっちに文字がドラッグ&ドロップされた混沌の極致、というありさまになる。

本機の文字入力エリアの外側には、左右約2cm、手前1cm強の無反応エリアがある。
この部分にこれらのキーを配置できなかったのか...と思うのだが、ベースとなっているBastronB2も、操作可能エリアは同じとなっており、この部分への実装は難しかったのかも知れない。いや、エリア内からハミ出したキーがあるとcoolでないという理由で却下されたのかもと思うのは考えすぎですよね。実用性について検証するなら、本機発売などに至らないだろうし(←失言の応酬)。

本機はBT無線化されたことで、タブレットやスマホなどの外部入力デバイス用途の可能性が出てきた(一般人用として)。
確かに、本製品の企画段階では「エキセントリックなアレンジのクリエイター、あるいはスマートにスーツを着こなした商品開発責任者風の女性が、カフェでタブレットと本機をバッグから取り出して、傍らのデミカップを潤んだ唇に運びつつ、ブルーの光彩を放つキーボードを操って企画書を作成している」....などといった、(いささか無限ループ、あるいは妄想的自家発電乙とも思える)Coolなシーンを想定していたのかも知れない。

しかし現実にそうした場面に本機が持ち込まれた場合、作業開始1時間後に、打ち合わせのため現地に到着したクライアントが目にするのは....誤入力の嵐と、鍵盤面と画面の間に視線を行ったり来たりさせる不毛なリドゥ作業の結果、肩いからせて猫背気味に血走った眼で画面をのぞき込む、かなりアブな気でイケてないワーカホリックの姿である...のだろう、おそらく。

間違っても、ファッションに実用性を期待してはいけないのだ。モードはあくまで、やって来る可能性の低い「近未来予想図」なのであって、現実に根ざしたスタイルではないのだから。


おまけ

豪華装丁(溶けてません)
”Made in Tokyo”でないところが
ちうとはんぱな矜恃



(2017/09/25記)

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