Celluon Laser Projection keyboard "Magic Cube"
製造元 Celluon Inc.
諸元
キー配列 US/66keys
メカニズム Laser projection key/Motion sensor/IR sensor
備考 I/F:USB/Bluetooth
Junk Point 直方体ですけど?
ニッチの存在意義がイノベーションにあるという考えは間違っているのだろうか。

そもそも「ニッチ産業」という評価を得た時点で、そのジャンルの向かう未来に広がりを期待するのが無理というものなのかも知れない。
とはいえ、アメリカで起業されるベンチャーの9割が「すきま」に到達する遙か手前で未来を閉ざされているのが現実なのだから、生き残っているという一点においてすでに非凡である... という見方もできるだろう(獅子の泉の六元帥のように)。
大きさの比較
大きさの比較
看護師は木村君

そうした視点でみると、このLaser projection keyboard "Magic Cube"(以下MC)と、製造元の韓国企業「Celluon」社は興味深い存在である。

この手のデジタルガジェッツの多くが「一発屋」であるのに対して、Celluon社は現行モデルMC以前にBT接続のみのCL850、そしてその前にはBT+シリアル(!)接続のCL800を製造しており、リファインを継続させてきている。しかもiPhoneケース型の"Prodigy"や小型の医療向けモデルなど、今後の展開も用意している。

筆者は以前から、こちらそこらで駆動部の無いこの手の入力装置がメインストリームとなる可能性の低さを論じてきたし、実際国内外のWebサイトで同社製品のレビューをみても(太鼓持ち記事は別として)論調は毀誉褒貶真っ二つに割れている。
そのポジティブなモノは「カッコイイ」「近未来的(=「後に訪れた未来」...であったケースは少ないが)」というイメージ先行のものが多く、対してネガティブなそれは予想通り...というか「使いにくい」「実用に耐えない」という現実的な反応だ。

資料によれば、同様のレーザー投影式キーボードは複数の会社から発表されていたようだ。
筆者が知る限りで最も古いモノでは、2004年に松下傘下のベンチャー企業・ピンチェンジが同様の製品を発売している。が、その後の展開はなく、ピンチェンジ自体も事業清算されて消滅している。

そうした消費者の反応や業界の動きはともかくとして、Celluon社はレーザー投影式の入力デバイスに大いなる未来が待っているという信念を持ち、あまつさえそれに社運を賭けているように見える。それはロータリーエンジンにおけるNSU社とマツダの立ち位置を想起させる(Celluonの技術が供与を受けたものか、独自開発なのかは不明だが)ように、筆者には思えるのだ。
......Celluon社は、来るべき入力デバイスの新時代を切り開くパイオニアなのか、はたまた虚妄の栄光へと突っ走る現代のドン・キホーテなのか。

3年以上前のCL800が2万円台後半だったのに比べ、MCは2012/07現在の実売が1.1諭吉前後まで下がっていて、ちとグラグラだったところへ億に安めの新同品.....勝負でしょう(by本部以蔵)。

てな顛末でイ吏 彳走さんに見透かされたかの如く(あれはELECOMのOEMでかなり高いが)我が家にやってきたMCである。

背面上にPower、下にUSBコネクタ
充電とHID I/Fになる
大きさはそこそこ小さい。上記写真のとおり吉本興業謹製「ヨクスベール」の箱より一回り小さい....といったらお分かりいただけるだろうか。

確かにデザインはなかなかかっちょいい。
普段持ち歩くにはちと厚さが....という感じなのだが、これは後で述べる実際の機能上致し方のない所なのだ。
むしろ携行するうえで気になるのは、中央のセンサー受光部に傷や汚れが付かないかということだ。これだけの価格帯のモノだけに、できれば専用の携帯用ケースを付けて欲しかった(ちなみに梱包ケースはアクリル製のやたらとカッチリした作り)。


I/Fは2通り、USB有線接続とBluetoothである。
背面下部にUSBミニコネクタがある。その横に、何の役にも立たない「HID/SPP」切替スイッチがあるが、これは触る必要がない。
単にUSBケーブルを繋いでPowerスイッチをONにすれば、PCにHIDとして認識され、キーボードおよびポインティングデバイスとして使用出来るようになる。

....そう、筆者はうっかり見逃していたのだが、MCはmouse modeも実装している。
Fn+「マウスカーソルキー」(スペースバー直右の左斜め上向き矢印)を押すと、キーボードが投影されている全面がスライドパッドのように動作する。但しパット上でのタップはサポートしておらず、スペースバーが左クリックキーになる。「マウスカーソルキー」をダブルタップすると、キーボードモードに戻る。残念ながらiOSではマウスモードをサポートしていないので、iPhoneなどではこの機能が使えない。

傾けるとこんな歪んだ投影(当たり前)
この状態では入力できない

入力のしくみは、タイピングの指位置を検知するセンサーと、指が投影面に降ろされたことを検知する赤外線センサーの組み合わせである。なので赤色レーザーはキーを投影させているにすぎず、表示とセンサーは別個の機能なのである。

ということはつまり、水平面に MC本体を垂直に立てて、表示位置と検知位置が正確に一致しないと正常に動作しないのだ。
設置位置に自由度があるように見えて、実はその辺り意外とシビアな装置なのである。先出のビミョウな分厚さも、正確動作のための安定性を考慮したデザインと思われるのだ。

筆者もデスクトップで使用する際に、設置場所が水平であればいいと思って、高さ2〜3mmのLCDの脚に乗っけたら、キー位置がずれて全く使えなかった。またUSBケーブルのテンションで背面がわずかに浮き上がってももちろんダメであった。

よく指摘される日本語入力切り替えだが、筆者はATOK 使いなので切り替え設定ツールでCtrl+spaceでon/offを行なうように設定して使っている。

で、肝心のタイピングの感触はどうか。

結論から先に言ってしまうと、「精度を若干落とした『COOL LEAF 』」という感じだ。
可動接点がないのはいずれも同じで、ホームポジションに指を置けないところや、パームレストを使って掌を浮かし、指の動き中心のタイプを行えば意外に打てる点は同様だ。
だが、表面が鏡面加工で、表示部とセンサーが完全に一致しているCOOL LEAFに対して、こちらの反応精度は設置面の状態に依存する。
その反応のズレは、端のキーほど発生頻度が高くなるようだ(右下の→キーを押すと、たまにその上の SHIFTキーが同時押しになってしまうなど)。

また、小指で下段のキーを操作しようとして、長指や示指が赤外線を遮ってしまうタイプミスが頻発する(Aをタイプしようと思ってSやEを押してしまうなど)。一般のタッチパネルより、より明示的に指のストロークを独立しておこなわないといけないようだ。

あと筆者としては、ピリオドとコロンが数字キーの上段に配置されているのがどうにも操作しにくい。
特にこのデバイスは、モバイルツールのHIDとして、URLを入力する機会も多いと思われるだけに、この辺の配列は何とかして欲しいところである。

と、ここまでこのキーボードで書いてきて、一つ気づいてしまったことがある。

それは「ブラインドタッチより、遥かに一本指タイプ向けのキーボードである」という事だ。(火暴)

上記のような特性を鑑み、「このキーボードで高速かつ正確にタイプするコツ」を探っていくと、行き着くのは「左右の示指でつっつく」という結論である。

つまり相手がどんな高速鍵盤使いであろうとも、このキーボードでの入力競争なら、素人でも勝利しうるという事だ...って、だったら何のための鍵盤だと言ってしまえばオワリであるので、それは慎むとしよう。
まあ、素人は素のスマホでFlickWnnでも使ってろということだ。(なの?)





....ところで「近々販売を開始する日本語キーボードバージョン」っていつですかぁ?

うねってます
うねってます


(2012/07/13記)

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