HITACHI PC-KB5400(N860-8816-T051/10)
製造元 HITACHI Corp.(富士通高見澤コンポーネントのOEM?)
FLORA300シリーズ純正オプション
詳細はここ
諸元
キー配列 109 OADG + media key
メカニズム membrane/ゴム椀
備考 I/F:USB(HOSTx1/USB bay x1)
Junk Point これも300円鍵盤
カードリーダ/指紋認証
無線LANのオプション装着可能
技術的ブレイクスルーが市場に定着する課程で、様々な試みがなされては消えていくのは必然なのだろうか。

IBM PC/ATが発売された頃のグラフィックはオンボードのVGAフレームバッファだった。
しかしその性能に満足できないユーザー層を取り込むべく、拡張バスに接続するタイプのグラフィックアクセラレータが台頭してくる。

やがてWindows3.1時代になり、ビデオ専用とも言うべきVLバスがディファクトスタンダードとなり、ほとんどのビデオアダプタが外付けとなる中、ローカルバス接続でありながらマザーにオンボード実装するグラフィックチップが現れた。Chips & Technologiesの「Wingine」である。

ロジック的によりCPUバスに近い位置に配置することでさらなる高速化を狙った仕組みではあったが、結局当時は大きな潮流となることなくフェードアウトしていった。
しかし後に同社を買収したIntelによって、UMAや、ノースブリッジへの統合グラフィックチップといった流れとなって、当初の狙いとは違いながらも、省スペース/省電力といったPCプラットフォームの一翼を担い今日に至っていると思われる。
高見澤っぽい
カーブドスカルプチャ
実は、かつて筆者はPC初号機としてWingine搭載のBTO機を購入寸前だった。

今はじゃんぱら秋葉本店となっている所に入っていた「Proside」が発売していた486DX2モデルがSUPER ASCIIに紹介されていて、当時としてはスリムなケースのカッコよさも相まって、筆者の物欲はMAXまで惹起されたのだ。

そのまま30諭吉を握りしめ、一路秋葉を目指した筆者だったが....すんでの所でツクモに捕捉され、大同電気のOEMをお持ち帰りしてしまったのは以前にも述べた通りである。
筆者にしては珍しく真っ当な選択をしてしまったわけだ。もしかの機を購入していたら、ここまで自作の沼というか、つぼにハマることもなかったのかも知れないが。

それはともかく、筆者のような選択をしなかったユーザー達の死屍累々の上に、今日のPCがあると言えるのだろう。
底面のUSB1.1ポート
1996年に規格が策定されたUSBは、その高速伝送と、コネクタ形状を気にすることなく、様々な機器を、自由度の高いトポロジーで接続できる文字通りの"Universal"なバスである点に期待が集まった。

もし「バス自体の伝送速度が十分に速い」のであれば、デバイスを配置する場所は必ずしもプロセッサ/PC本体近辺である必要はないことになる。
必要なときだけ、必要なデバイスをPnPで接続するようにすれば、消費電力も、本体のサイズも節約することが出来るはずだ....

USBの可能性から開発者がそのように発想する中で生まれたデバイスのひとつに、このキーボードがある....といっていいのだろうか。

筆者は家族で訪れた大須の道すがら、新店舗に移転したPCNETの店頭で、有象無象のLenovoおすすめキーボードと一緒にコンテナに突っ込まれ、ホコリを被っていたこの鍵盤を偶然拾い上げた。

検索をかけて「USB bay keyboard」という名称が判明した当初、右画像にある底面のUSB1.1を見て「あぁ、なんだご大層な名前だな」ぐらいに思っていた。

だが家に持ち帰り色々とこねくり回すうち、そうでないことがわかった。
キーボード上部の妙に頭でっかちな感じが違和感を与えてはいたのだが、その右端に専用のUSBデバイスを装着できると判明したときは、ちょっと口がポカーン....であった。

このベイに装着するUSBオプションデバイスは802.11b/スマートカードリーダ・ライタ/指紋センサー/メモリーカードリーダ・ライタ/ミニスピーカの5種類がある(ただしFLORAシリーズ専用とのこと)。
後の4つはともかく、11Mbps無線LANを最大12MbpsのUSB1.1で接続するというのは実用的に考えてどんなものだったのろうか。LANの転送速度が遅いだけならまだしも、同じカスケード上に入力デバイスがあるのは、入力取りこぼしなど操作性に問題が出なかったのだろうか。
いやそれ以前に、いくらレイアウトの自由度が高まったからといって、無線LANアダプタをキーボードに装備することに、どのようなメリットがあったというのだろうか。若干疑問である。

それにもうひとつ、筆者の個体にはダミーデバイスが装着されているのだが、これを見る限りデバイスをロックする仕組みが特に見当たらない。
スマートカードリーダと指紋センサーは個人認証としての使用方法が提案されているのだが、着脱が容易なデバイスでそんなことをやっていてよいのだろうか。
デジタル機器のセキュリティが喧しく叫ばれる今日の常識とはだいぶんズレている気がする「草創期のデバイス」と言えるかも知れない。
8520/8720と似ているアクチュエータ
一応HITACHIブランドのこのキーボードは、FLORA300シリーズの純正オプションとのことだ。
ベースのキーボードは、スイッチの形状やスカルプチャ、そしてFRU#がFKB-8520/8720あたりと酷似しているので、明記はされていないがおそらく富士通高見澤コンポーネントのOEMなのだろう。
状態があまり良くないので若干がたつき音のするキーもあるが、あの軽快なタッチはまったく同じだ。キーボードの素性に関しては、結構良いものだと感じる。
上部にあるメディアキーも試してみたが、「Internet」と「Mail」はVista機に挿すだけでブラウザとメーラーが起動した。
メーカーサイトを見ると、一応「FLORA300専用です。その他の機種ではご使用になれません」とのことなのだが、ドライバさえあれば動作しないわけではないのでは....と想像している。

そんなわけで、どこかにベイデバイスが出品されていないかと、今夜もぐぐる筆者である。その用途はともかくとして。


(追記)
・・・・検索していたら、こんな情報が出てきた。
PC-CN3600無線LANモジュール   税込希望小売価格 \138,600
PC-KC5300Aスマートカードリーダ  税込希望小売価格 \14,175
PC-KC7300指紋センサー       税込希望小売価格 \22,000
PC-CZ3100メモリーカードリーダ  税込希望小売価格 \8,900
PC-AM3100スピーカ          税込希望小売価格 \4,900

・・・・何なんだこの無線LANの値段は。



(2011/04/04記)

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