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キーボード部の表面と裏面 2カ所の接合部のためチルト脚は4本ある |
「人間工学」という言葉が日本で提唱され始めたのは、大正時代のようだ。
元々"Human factor"あるいは"Ergonomics"として欧米で研究され始めたのは、さらにもう少し以前のことである。
『人間が可能な限り自然な動きや状態で使えるように物や環境を設計する学問』がその定義だそうだ。
しかしここでちょっと考えてみたい。『人間の自然な動き』とは何なのだろうか。
人間は(もちろん他の生物もだが)長い年月の間の淘汰と進化を経て、自身を取り巻く環境に適応してきた。
その結果として、直立歩行・精巧な手指の運動といった独自の運動能力を獲得してきたのだ。
いささか飛躍し過ぎかも知れないが、人間特有の能力とは、環境に適応する能力の高さではないかと思うのだ。
石器時代の人類が道具を開発して以来、人間は自然界で天敵に脅やかされながら暮らしていた頃の身体機能を急速に変化させてきた。そして現代に至り、変化は更に加速している。
発明当初は教習所へ通うのが当たり前だったという自転車も、すでに子供の頃に乗れて普通といってもよい状況だし、19世紀中頃に商業生産が開始されたタイプライターは、当初開発者自身が推奨を断るほどのシロモノだったようだが、現代ではキーボードに姿を変え、多くの人にとってリテラシーの根幹を支える不可欠なデバイスとなっているのだ。
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