IBM 5576-B01
製造元 日本アイ・ビー・エム
諸元
キー配列 日本語/OADG106
メカニズム メンブレン/ゴム椀
備考 I/F:PS/2
Junk Point おやぢ、色をなす
基板裏面はModel Mと似ているが
メンブレンは分離可能
多くの人がそうではないかと思うのだが、人は心のどこかに「通」になりたいという無意識を持っているのではないだろうか。

それは、ただ単に他者に優越意識を持てる部分がほしいということもあるだろうし、また純粋に知的(?)欲求を充たしたいということもあるだろう。そうした意識の複合体が、人をして「通」を目指さしむるのではないかと思う。

初めはその道の達人の薀蓄を聞きかじって真似たり、『一見さんお断り!通が集まるあの店!!』という記事を読んでは、恐る恐る覗いてみたりする程度だったのが、次第に自らその道を深く掘り下げていくこと自体に悦びを覚える第2段階を経て、気がつくと最早引き返せない最終段階....「マニア」に達している。

そういう過程においては、グルマンと呼ばれる人々やワインの愛好家と、はーどぢゃんか〜の間には本質的に違いは無いのである(社会的地位および認知度はこの際考慮しない)。

基板はMitsumi製
ピラミッド型階層構造をなす「通」世界において、その裾野をウロウロしてばかりいる筆者は、よせばいいのに秋葉でもディープだといわれるエリアに無謀にも突入しては自爆を繰り返している。

最近の上京でも、ヴィンテージキーボード(といってもProphet5とかmini moogではない)が集結するかの店に足を踏み入れてしまった。そして...幸か不幸か、赤ポッチのニクい奴ゴミぢゃんく箱の中に発見してしまうことになる。

それはともかく、当初はあからさまにド素人な風情の筆者を一瞥してか、冷笑的な店主だったが、いっぱいいっぱいの筆者の知識をひけらかしながら通ブリなやり取りをするうちに少しずつ応対が変わってきた....ように筆者には感じられた。内心冷や汗とガッツポーズを交互に繰り出しながら、筆者は選びぬいた次の一言を発した。

「いやぁ自分、A01もいいと思うんスけど、B01も悪くないっすよね

刹那、店主の表情が元に戻り、全てが瓦解した。

あんなのと一緒にしたら可哀想だよ」

....それでもC01の店頭表示価格\4,000を\3,000におまけしてくれる優しい店主であった。
あれは半可通な筆者への憐れみだったのか、わざわざ廃棄予定品を引き取ってくれる客へのサービスだったのか、はたまた単なる勘違いだったのであろうか。(←全然厚意にとってないし)

ま、それは置いとくとして。

現代のメンブレンとチョット違う
シートは1層でハンマー底面の導電体で導通
世間逸般のキーボードマニアの方々の評価に反旗を翻すようで恐ろしいのだが、実際このキーボードは多くの人々(?)が貶しておられるほどには悪くないというのが筆者の実感である。

確かにバックリングスプリングの確かなクリック感に慣れてしまうと、どの段階でメンブレンスイッチを叩くのかがわかりにくく、つい指〜前腕に力が入ってしまうのは確かだ。
が、それはゴム椀スプリング式スイッチの宿命だろうし、底付きの感触や押し下げ圧の遷移は、同型の中ではかなりいい方なのではないかと思う。

前出の店主の言い草ではないが、「世界的名鍵盤」と同系列の型番号を与えられたことがこのキーボードの不幸であり、そういう意味では逆にこのキーボードこそ「可哀想」な存在なのだとも思える。


(2008/12/16追記)
野口英世お一人様ほどにもない代価で筆者宅にやってきた、この5576-B01。(P#:66G0507)
積み上げられた鍵盤箱の底から引っ張り出してみて、ふと筐体をねじってみる....「ぐにっ」....なんだこのヤング率の低さは。
とりあえず置いてみれば、そんなにヘナヘナではないのだが、何とも頼りない筐体である。

それに比べてキーの方は結構押下圧が必要だ。富士通コンポーネント系よりも重く、ストロークもかなりある。
底突きの当たりが強すぎず弱すぎずしっとりとした感じなので、感触としては軽荷重のキャパシティブに近いものがあるが、タクタイルのあるポイントが押し下げのかなり上の方に感じられるので、叩こうとする指の動きが「かっくん」とつまづくように感じられて、リズムに乗りにくい。

IBM愛好者としては不本意だが、同じゴム椀キーボードとしては総合的にFKBシリーズの方が手になじむ気がする。

なお、筆者所有機固有のクセかも知れないが、スペースバーが他のキーと比べてコンタクトポイントが少し下の方で、ゴム椀の反発が少々柔らかい気がする。なので親指を乗せているといつのまにかスペースを入力してしまうことがある。
この辺は中古で、しかも接触不良のために一度分解掃除をやっているので、その辺が影響しているかも知れない。

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