IBM 5576-002
発売元/製造元 日本アイ・ビー・エム
諸元
キー配列 日本語/106key/OADG払暁直前
メカニズム ALPS製板バネスイッチ
備考
Junk Point 勝者の災いそのもの
筆者はよく周囲の人から「ブラインドタッチがめっちゃ速いねぇ」と言われる。
確かにタイピング自体は速いと思うし、ツボに入った時は文書作成「も」かなり速いほうではないかと自分でも思うところである。

ただし、それはあくまでツボに「入った」ときの話であって「ツボった」時の(つまりほぼ日常の)無残さは目も当てられない。筆者ほどESCキーとBackSpaceキーを多用する人も、まず周囲にはいないのではないか。「3歩進んで2歩下がる」どころか「2歩進んで3歩下がる」のだから。

そんな筆者のタイピングのルーツは、今から20年ほど前の卒業論文作成時に遡る。

袋小路に吹き溜まったゴミをピンセットでつつくような、いぢましく発展性のない研究(とも呼べないような気がするが...)をしていた教授の研究室に所属していた筆者だが、唯一感謝するべきことといえば「論文データの集計はPCを使うこと」「論文はワープロで作成すること」という条件を出してくれたことだ。
「何を当たり前なことを」と思わないでいただきたい。80年代半ばの地方大学では、研究室にワープロが導入されていること自体非常に珍しく、論文も手書きが当たり前だったのだ。

しかしそれまで、親に買って貰った高額なPC(98VX2)を麻雀専用機にしてきた筆者は青くなった。Fnキーしか触ったことの無いタイピング(?)スキルで、どうやって原稿用紙50枚にもなろうかという卒論を作成すればいいのか。

途方にくれた筆者が探し当てたのは、研究室の片隅で埃を被っていたOlivettiの古式ゆかしいハンマー式タイプライターと、これも昭和30年代のカホリが充満した、添付のタイピング教本だった。
「どうせゴミだから」と、こっそりそのマシンを持ち帰った筆者は、夜な夜な「Q,A,Z,Q,A,Z,W,S,X,W,S,X,E,D,C,E,D,C....」とシコシコ格闘を開始することになる。

こうして目出度くQWERTY配列をカラダに叩き込んだ筆者は、見違えるような速度で文章を作成できるようになったわけである。
就職してかの地を離れた直後から、恩人たるOlivettiを何故に実家へ連れて帰らなかったのか、忸怩たる思いを今日に至るまで持ち続けているが、ここにJunk Junkyたる筆者の性癖の萌芽を見ることができる。

キー配列
5576-002キー配列。10キーの「,」が独立しているのは
今と違いソフトが自動的にふってくれなかったからだろうか
....そうして形成された筆者の嗜好、というか本能が、そこかしこの評判を見聞きしているうちにいてもたってもいられなくなり、おそらくは相場を大幅に上回る額で落札してしまったのが、この歴史に残るとも言うべき高精度メカを持つキーボードである。

同じALPSスイッチを持つ、前出の5576-001と比較しても若干キートップのぐらつきが大きく、キータッチもさらに軽めで、かなり使い込まれた印象を受ける個体である。だが独特のクリック感は健在で、非常にリズムに乗った軽快なタイピングを楽しめる。言うなれば、筆者宅初号機のキーボードの軽さと、5576-A01のいいとこ取り、と言えば良いだろうか。

001同様、とまではいかないが、独特のキー配列には手を焼くが....
(2006/10/02 記)

(2008/12/11追記)
このページの更新のために久しぶりに取り出して002を叩いてみる。

最近のメイン機C01(仕事で1日12時間ほど叩いているので)、自宅での主力MX青軸とRealForce106UBと、最近の筆者は以前の豪快な押し下げ圧を誇るIBMバックリンススプリングキーボード群から少し離れている。
そういう状況でこの002を操作してみると、実に心地よい。押下圧がMX青軸よりやや軽め、筆者はそれと意識して触ったことがないので確たる事は言えないのだが、ちょうど茶軸ぐらいの感じではないのだろうか(....後日茶軸を購入、更に軽いことが判明した)。
ストロークはこの機の後に登場してくるA01あたりと比べると浅めで、感覚的には富士通コンポーネントのFKBシリーズ初期のものに似ている感じがする。それに「くきくきくき」という、軽いクリック感を加えた....といえば丁度の感じだろうか。

普通にMS-IME2000以降で日本語文を入力するだけなら、OADG106と何の違和感もなく使えるのではないかと思う。ただしWin98のコンソールとか、Win95で使用....とか、今日ギャルの前でそんなことをしたら「イ可このヲヤヂ」と言われること間違いなしな環境では、若干厄介なことになる。右alt(「前面」)キーしかないのだ。
つまり筆者が慣れている「左alt+半角/全角」での切り替えが、通常の設定ではできないのである。(キーリマップを行わない限り)

同様に、alt+文字キーのショートカットメニューも、結局両手を使う場面が増えてやりにくい。
従って左手のみでのショートカットメニューを行うには、「掌ctrl押+文字キー」に慣れることが必要になってくる。この辺は、多分UNIX使いの方々にとっては何の問題もないのだと想像するのだが。

・・・とここまで秀丸で書いてみて、改行タグを入れるために置換(alt+s+r)を行おうとして、見事「漢字/カタカナ」キーの罠に引っかかってしまったorz
やっぱり身についた習慣はなかなか変えられないモノだ。


(2009/09/08追記)
※Vistaでの使用法(こちらのサイトを参考に)

1)レジストリを下記の通りいじる

キー:HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\i8042prt\Parametersの以下の値を変更
   LayerDriver JPN:kbd106n.dll→kbdibm02.dll
   OverrideKeyboardIdentifier:PCAT_106KEY→IBM_002_106KEY
   OverrideKeyboardSubtype:2→3

2)5576-001/002を「PS/2ポート」に接続(USB変換ケーブルではX、筆者的に直抜き挿しは不安なのでKVM[*]を介した)→再起動

筆者は青山技術氏作の「キーボード切り替えツール」を使用し、付属の設定ファイルを編集して下記の「IBM002.klt」を作成して切り替えに利用している。

-------------IBM002.klt--------------
LayerDriver JPN=kbdibm02.dll
OverrideKeyboardIdentifier=IBM_002_106KEY
OverrideKeyboardSubtype=3
OverrideKeyboardType=7
-------------------------------------

*注:KVMの機種によっては、他のPCに切り替え→Vista機に戻し・・を行うと、スキャンコードが狂うことがある(筆者使用のKS-104で発生)。筆者の環境では、「半角/全角」キーと「右上¥」キーが効かなくなった。
5576-001/002固定で使うか、交換の面倒を厭わないのであれば、PCのPS/2ポートに直接つないだ方が無難と思われる。



(2013/02/08更新)

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