IBM 5576-001
発売元/製造元 日本アイ・ビー・エム(RICOHへのOEM品)
諸元
キー配列 日本語/124key/OADG払暁前独自配列
メカニズム ALPS製板バネスイッチ
備考 寅さんよ安らかに眠れ
Junk Point やりの滝つぼ
皆さんは「パソコン」という言葉に違和感を覚えたことは無いだろうか。

いくつかの例を考えてみると、日本語の省略は「1音節+2音節」になっていることがよくある。その省略方法が日本語の語感に合うからなのであろう。
例えば「カーナビゲーションシステム」→「カーナビ(Ka−Na・Bi)」「大槻ケンヂ」→「オーケン(O−Ke・n)」「ワードプロセッサ」→「ワープロ(Wa−Pu・Ro)」「マイクロコンピュータ」→「マイコン(Mai−Ko・N)」などが挙げられよう(例として若干不適当なものも有るようだが)

「だから、『Personal Computer』は『パソコン』でなくて『パーコン』なのです」

これは筆者の以前の職場の後輩(当時X68000ユーザー)が提唱した説である。

キー配列
おそらくIBM DOS文書プログラム用のキー群
IME起動は「半角」で
....その省略名の是非はともかくとして、確かに1980年代当時のPCは、そう呼ばれても仕方がない程度の能力しか持ち合わせていなかったと言えよう。

寅さんが「友よ。期は、熟した」とばかりに蛾次郎と共に路上で叩き売った....かどうかは知らないが、とにかく渥美清というビッグネームを得て大々的に販売攻勢をかけた「マルチステーション5550」のウリは「1台『3役』」だった。

今日の「TVを見ながらスプレッドシート広げてネットで情報を検索しながらワープロで報告書を作り、Skypeで打ち合わせつつメールで書類を送り....」などという使い方など夢のまた夢....といった感じである。当時JustSystemの浮川社長が「(ソフト開発で)やりたいことはいっぱいある。ただ今はまだ、ハードがその構想にまったく見合っていない」と語っていたことが思い出される。

ALPS白軸
大型キーにはスタビライザー付
そんな「パーコン」の資料画像を見ると、このキーボードが添付されているのがわかる。


「ハードとソフトはセット売りが当たり前」だった時代の末期を飾るに相応しい、ワープロ専用機と今日のPCのアイノコのようなキー配列は、当時の「IBM DOS文書プログラム」用に機能拡張キーを追加した結果だそうである。

Windows3.1が登場し、『共通プラットフォーム上で走る、操作性の統一されたアプリケーション』という概念がある程度市場に浸透するまでまだあと3〜4年、という時期である。

ユーザーの固定化(つまり専用の操作体系にしばりつける)を考えての上でもあろうが、左端の離れた位置に固まっている10個のキーの中にちんまりと存在するCtrlキーや、左側にしかない前面(Alt)キーなど、おおよそショートカットキーを使うことは念頭になさそうな配列である。


基板裏面とBIOS基板
右上には"ALPS"の文字が
しかしながら、今日の「どこまで押せば反応するかつかめない」ラバードームキーと比べて、軽快なクリック感のあるアルプススイッチの魅力は、その難解なキー配列を補って余りあると思う。同じく魅力的な打鍵感だが、やや重めのキータッチのA01と叩き比べると、おそらく長時間操作の疲労度にかなり差が出るのではないかと思われる。

とりあえず、PCで操作可能なキーの動作確認が取れたので、今度は独自の言迷の拡張キーを使ってみたくなった筆者は、今度アキバに行く機会に「IBM DOS文書プログラム」がどこかに転がっていないか、探してみようと目論んでいる。もう末期状態だ。

(2007[2006?]/10/08記)

全外しすると多分元に戻せないキーたち(^^;
(2008/12/10追記)
・・・結局その後DOS文書プログラムは相変わらず入手にいたっていないが、どういうわけか筆者宅の001は一気に増殖して7台となってしまった。
大人買い....というか、どちらかの方の廃棄処分につきあったというか、それにしても破格の条件で大量の同機を手に入れてしまった筆者。
だが現在の所、白い巨象状態であることに変わりはない。
実のところ、大量購入、綺麗に掃除して叩き売り....というのも考えないではなかったが、最近の001の相場をみていると、そこまで手間をかける気が萎えてしまうのもまた事実である。やはりマニア向けの特殊なデバイスであると悟らずにはいられない。

しかしデカイ。とにかく表面積が大きいのである。

筆者がルミナスで組んだOAデスクは決して広くない。
とはいえスペースセイバーな10キーレスキーボードを筆者はデスクトップでまで使おうとは思わないから、畢竟フルキーボード、それも割とガタイのしっかりとした大作りなモノをよく使うのだが、このキーボードだけはちょっとサイズが違いすぎる。マウスを動かすスペースがほとんどなくなってしまうのだ。

上の方でも述べたように、このキーボードの面積を大きくしているのは、現代のPC用キーボードには何の役にも立ちそうにない特殊なFnキーが縦横1列ずつあるからだ。(.....あ、横は2列か)
しかし実際の入力では、下記の通り入力切り替えの機能がそうしたFnキーに割り当てられている場合もあるので、あながちぶった切ってしまえという訳にもいかない。もちろん筆者には、ぶった切る技術そのものがないのだが。

なので継続的に使用するのではなく、横着してPCのPS/2ポートには106キーボードをつないだままでドライバだけ002/003用を突っ込み再起動、001をPS/2→USB変換ケーブルで接続....という方法をとってみたのだが、これだと001が動作してくれない。
うちのVIA K8T800チップセットのマザーでは、律儀にPS/2ポートに挿してから電源投入という手順を踏まなければいけないようだ。
これは5576-002も同じようである。

腰を据えてこのヴィンテージキーボードと付き合うだけのガッツもなく、MXへフラフラ、キャパシティブへぐらぐら....な筆者には、いささかもてあまし気味の今日この頃である。

なお、筆者所有機の個体特有なのかも知れないが、同じALPSスイッチであるにもかかわらず、5576-002と比べるとだいぶタッチが違う気がする。
002の方がかなり軽く、底まで容易に到達する感じがあるのに対し、001は押し下げていってクリックと共にコンタクトがあり、そのあと次第に押し下げ圧が高まるような感触がある。

この辺の違いは、人によって好みが分かれるところだろう。

コンタクトと同時に次の操作に指を能動的に移動させるタイプの方は、002のような軽快な方をよしとされるだろう。
押し下げ抵抗の増大を入力終了の合図として感じたり、また推力として次のキーへと指を移動させたりするようなタイプの方、あるいは指使いにそれほど神経を研ぎ澄まさないタイプの方は、001の方を好まれるのではないだろうか。
筆者はどちらかというと後者のタイプである。だからといって002が合わないという訳ではなく、非常に快適に感じるのだが。



OADG/5576-001キー互換(Matt氏作5576-002/003用inf使用時)
OADG 5576-001
「Scroll Lock」 文書リスト/Scr Lk」
「Num Lock」 「Shift」 + 「文書リスト/Scr Lk」
IME起動 「半角」
「Alt」 「前面」
「Ctrl」 「Ctrl」と「実行」
「Home」 左斜め上向き矢印キー(カーソルキー中央)


(2013/01/31記)

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