MiSTEL BAROCCO MD-600RGB
発売元/製造元 Mistel corp./marchandized in Japan by アーキサイト
諸元
キー配列 62keys/US splitted in two parts of both sides
メカニズム Cherry MX origin red axis
備考 MiniUSB client port in both sides/ MicroUSB(for connecting both sides)/MiniUSB host port(for numeric pad)
Junk Point バロッコではないという説

このMiSTEL Barocco MD-600は、以前に大須GOODWILLで見かけたときから、ちょいと気になっていた。
いや、どちらかというとイロモノ的な意味合いで、である。
新発売となる高価格キーボードが「あの特定用途」に偏る中、ひとり異彩を放っているのが本機であったからだ。

とはいえ筆者は、「エルゴノミック」という概念に一定の理解は示しつつも、自身の体にはあまり馴染まない印象がある。
「そもそもなんで真っ二つに分けなければいけないのか。またメーカーがよく訳のわからない理屈を並べて機構の優位性を力説してるんだろうな」という斜に構えた見方の上に、その謎理論に基づくプロダクトを面白可笑しく論評するために購入しようと思いつつ....微妙に手持ちを超える高価格という生活向上委員会的理由により、その時はIYHを見送った。

キー配列
スカルプチャは微妙にカーブド
この角度からみても派手、でもかっちょいい

それから時を経ること数か月。億になんだかお買い得ぽな出品があった。今度は止まらなかった。
そんなこんなで本機は、筆者が初めて購入した「左右完全分離型」キーボードである。

....と書いてみたところで、筆者自身「ん?」と思った。

そう、左右の筐体は完全分離するが、接続はUSB有線接続だ。つまり「完全に分離しているわけではない」のである。
では、「左右も無線接続の完全分離型」は存在するのか。改めて調べてみると....はい、撮影のためにケーブルが繋がっていないモノばかりのようです。このMistel MD-600も含めて。筆者の調べた限り、そのようなモノは見つけられなかった。筆者が以前どこぞでそのようなモノが存在するようなことをまことしやかに解説していたかも知れないが、気のせいです。
というわけで以降、このMD-600の形態をもって「完全分離型」と称することにする。しばらくの間かも知れないが。

裏面に脚4つ...当然か
背面に専用10キーパッド用MiniUSBホストポートもあり

ところで、完全分離型の元祖?としては、Matiasの製品があげられるかも知れない。
かの会社は完全分離型のみならず、片手キーボードなる奇天烈なプロダクトまで生み出している。その希少性に相当な自信を抱いておられるらしく、おそらくは実用上問題なく入力できるように習熟するまでにかなりの時間を要すると思われるその言迷デバイスに、一般人の目玉が転がり落ちそうな価格がついている。
本論とずれてしまうが、片手で打てる配列だけを念頭に置くのならば、わざわざキーボードを半分にする必要はない。
DVORAK配列の派生形の中に、上肢欠損の傷病兵が利用することを目的としたものが存在する。少なくとも英数文字入力であれば、この配列にキーリマップソフトを使って変えてしまえば事足りるのではないか。

そんなこんなで、左右に分離したキーボードの片方を使用する....というのは、どちらかというと限られたキーのみ使用するケースが多いと考えてもよいのではないだろうか。例えば....「ゲ〜〇ング」とか。

本機MD-600は、左右両方のピースに各々USBクライアントポートが装備されている。
ということは.....と思い、分離した状態で片方ずつホストデバイスに本機をつないだら、どちらの場合もキー入力が可能だった。
ただ、matias half keyboardのように、Fnキー切り替えですべての文字を片側だけで入力可能かどうかは、試していない。
また、イルミネーションが有効になるのは、右側をホストにつないだ時だけだった。

一方で、本機はデフォルトでQWERTY/DVORAK/COLMAK配列をサポートしており、ホットキーで切り替え可能だ。....随時切り替えて使う必要があるのかはやや謎なのだが、リマップが最小限で済むので、上記のような片手操作が必要なユーザーにとっても良い選択かもしれない。

(左)Cherry赤軸
(右)接合部の摺り合わせはまあまあ、6/Yが右にある。よくできました

筆者購入機のキースイッチは本家ZFのMX赤軸。スイッチは赤/黒/青のバリエーションがあるようだ。
筆者の現在の嗜好は軽荷重であり、またいままで使ったことのあるCherryMXの中では青と赤が好みだ。リニアで重めの黒軸は....このサイズのコンパクトキーボードには筆者的には少し「?」がつく。

懸案のカーソルキー操作だが、マクロ機能を使って左手側にFnを移動する....という方もおられた。ただそうすると結局両手操作となってしまうのと、全角←→半角操作もFnキー操作絡みで両手操作となるため、とりあえずキーアサインを動かさない方向で、Fnキーを「右小指を折りたたみ、遠位指節間関節の手背側(笑)で押し続けながらカーソルキーを操作する」という辺りに落ち着けばどうか....と考えている。が、なかなかうまくいかない。
右カーソルキーとなる「L」のとなりに、Fnコンビで「Ins」が割り当てられているので、ついこれを押してしまうことがある。

コンビネーションに関してはもう一つ、「押す順番」に中々慣れない。
例えば「全角←→半角」の切替だが、Alt→Fn→Esc(`)という順番になる。当然なのだが先にFnキーを押してしまうと「`」が入力されるだけだ。

左右ピースを分離しての動作は、確かに中央展開型エルゴノミックキーボードを拡張したような感覚だ。
実はここまでの入力では左右を結合して使っており、その時は想像できなかったが....これは非常にいいかもしれないと気付いた。

(左)左ピースのみ接続
(右)右ピースのみ接続
いずれも認識はしている。イルミネーションに差が....

というのは、両手の間隔と、肩の内旋角(前腕〜手先を結ぶ直線の内向きの角度)を任意に設定できるからだ。

Apple Ajustable Keyboardgoldtouch,あるいは固定式ながらmicrosoftのergonomic keyboardなどは、「肘を内側にしぼって前腕をコンソールに向かって垂直方向に向けて操作する」という、一般的なキーボードに発生しがちな無理な力のかけ方から解放される一方で、ともすればその逆方向、つまり両手がハの字を描く方向に手先を向けて、キーボードの鍵盤面に肢位を合わせなければいけないケースも出てくる(前2者の場合は可動型なので、なるべく操作者にとって自然な位置に合わせることも可能だが)。

それに対し本機は、極端なことを言えば両端子を接続するケーブル長の許す限り、自由な位置に左右の手を広げて操作することができる。手を大きく左右に広げて、かつ肩は内旋外旋いずれの状態でもOKなのだ。これはかなり体の負担を減らすことが可能かもしれないと思った次第である。
ただしMD-600に付属の左右連結コードはカールコードで、どこまで広がるか....と、つないだまま両ピースを広げたら、内向きのテンションがかかって左ピースが接触不良となり、認識しなくなってしまった。
何度かケーブルを繋ぎなおして認識するようになったが、操作中に両ピースを移動させる際は注意が必要である(ただし、筆者所有機の不具合かもしれない)。

それともう一つ....キー操作に習熟していない場合、あまり左右ピース間を広げすぎると、操作の際に目でキーを探そうとする際に目的のキーが視野の外に位置しまうことがあり、眼球の動きが大きくなって目の疲れを誘発する可能性があることにも気づいた。
総合的に判断して、筆者の場合間隔を10cmほどあけるのが楽な位置に感じる。

ここまで文章を入力してきて、特に「あれ?」と困った文字入力はなかった。

なので、筆者としては特にキーアサインの複数レイヤー設定は特に使うことはないかもしれない。

もちろん昨今の高価格キーボードの常として「キーマクロ登録」「キーリピート速度」などの機能は備えている。画像編集の操作を特定レイヤーの1キーに登録しておられる方もおられるようで、少し興味はあるが....覚えるのがめんどっちい筆者はデフォルトで使い続けるのである。それでもなかなかに快適な本機である。



おまけ

長大ケーブルがあれば
どれだけスプリットとなってもおけ。多分....



(2018/03購入、2018/05/03記)

Keyboard Junkyリストへもどる

Junk Junky