Apple Adjustable Keyboard
製造元/発売元 Apple Computer Inc.(released on 1993)
諸元
キー配列 62keys+6switches/JP/ergonomic←→normal
メカニズム Alps白軸
備考 I/F:ADBx2(connecting to USB via iMATE)
Junk Point 盛大な欠品(左右パームレスト/10キーパッド/専用ADBケーブル)による?非ergonomic化
このコーナーで幾つか紹介しているErgonomic keyboardだが、大手キーボードサプライヤでこのジャンルに取り組んでいる所というと、Microsoft、他には...Kinesis、Matiasぐらいだろうか。...後2者が大手かどうか、日本在住の筆者にはよく判らないが。

「機械の構造/動作システムを人間の動きに合わせる」ことは、いささか不毛な要素を孕んでいるのでは...という筆者の疑念については、以前に疑似Ergonomic keyboardを紹介した際に若干触れた。
そうしたことが事実であるにせよ無いにせよ、この地上に残された数少ない初志貫徹志向のサプライヤー達は、(機械側から人間にすり寄った)理想のタイピングポジションを求めて、今日も努力を続けているのだろうか。

人間のリラックスした姿勢に機械をAdjustしていく....その過程は、結果としてサイズ的に冗長であることを機械の側に強いるものなのかも知れない。現在までに発売されている「Ergonomic」を標榜するキーボードは、おおむね標準タイプのそれよりも大型化する傾向にある。そして、限られたデスク上に配置して貰うために、10キーを外してみたり(Microsoft Sculpt ergonomic keyboard)、あるいは必要なときだけErgonomicに変形できるようにしてみたり(FKB-8530)という趣向をこらすことになる。後者などは、いささか本末転倒な雰囲気がないわけではないのだが。

ノーマルな状態
裏側にメカの秘密が...

こうしたErgonomic keyboardのジャンルにApple社が(かつて)出した回答が、これだ

いや、ブチかましてます。ワタシ的にはそう思います。
どう考えても、一般人が手を出そうと思うようなサイズでも形状でも、ましてや価格でもない。

三段重ねの梱包って、PCですか?それとも何かの松花堂弁当ですか?
フルセットを配置すると横幅60cm以上...ってそれ、どこの日本企業のデスクで使うんですか?
(どうせマカーしか使わない{←偏見}のに、JIS配列モデルがある意味が分からん)

....そんなわけで、たった一代で消滅した、拘りと悲運の香り漂うAppleの純正Ergonomic keyboard。
なぜか、この年代に至って億に出てきました。
現在価格、¥1野口。添付はケーブルだけですけど。
ええ、勝負でしょう。.....結局1樋口ぐらいになっちゃいましたけどね。

何故かEscキー+スイッチ
筆者環境では、キーは「全角/半角」

届いた本機を、早速(...でもなくじっくり1か月ほど寝かせて)いつものiMateでUSBに接続し、Win10日本語環境+Applekbwinという動作環境で接続してみた。

キーアサインを確認してみる。

ESCキーで日本語←→半角切替、Esc操作はその左側にあるESC「スイッチ」が担当する。音量/MIC/powerスイッチは反応しない。
そして、ややこしいことにCapsLockキーは単独押しでひらがな←→半角英数切替、Shift+CapsLockで、通常のCaps on←→offになる(Atok2015使用/Applekbwin設定の「CapsLockだけで大小文字切替」をonにした状態で)。
残念ながら、「¥」は日本語入力システムで変換して出すより他にない。AppleKPro等を使えば、上記のスイッチも含め、より多くの機能を使えるかも知れない。お金を払ってないので、使えないのですけど...

キースイッチはAlps白軸。経年劣化か、少し渋い。が、筆者所蔵のApple ADB keyboard for GSUに比べると少しマシか。こうして叩いているうちに少しスムーズになってきた。使い続けていると、どちらかというとDELL AT101WのAlps黒軸のような感触でもある。
紹介サイトでよく取りざたされる「巨大Spaceキー」は、使っているとそれほど違和感がない。閉じたノーマルキーボードでも、開いたErgonomicキーボードの状態でも、同じように自然に操作出来る。

Alps白軸
スタンドは割とガチッとした感じ(必要?)

Ergonomic機構は、(筆者所蔵機では)左右のモジュールを力任せに開く。一応ロック箇所が何カ所かあるような、ゴキゴキとイヤな音を立てながら、最大開度まで開いていく。
しかし他サイトの管理者さんも「半分ぐらいの開度がちょうどいい。MicrosoftのErgonomic keyboardもこのぐらいではないだろうか」と述べておられるように、この最大開度はいささかやり過ぎではないだろうか。
この角度に手を広げようとすると、肘をかなり外側に張った体勢になり(以前にもどこかで書いた「ピアノのガマ弾き」の、まさにその体勢)、腕がすぐ疲れそうだ。
いや、「ボク的にはこのErgonomicが早く打てて疲れないんだよねぇ」と、ド高い(発売時、定価¥50,000だったそう)純正品を自慢したい○○ーな方にとっては、お気に入りのポジションなのだろうか(ヴィジュアル的にもかなりインパクトがあるので)....しかしこれは、余りに一般向けでない設定のような気もする。

動的機構はさておき、今まで筆者が体験してきたErgonomic keyboardのコンセプトは、一般的に2点に集約されると思う。

1)手首が背屈せず、直線〜やや掌屈の状態になる
2)前腕が「ハ」の字に開く

最大角度に開いてみる
ピアノ講師にどつかれそう(腕もド疲れ)

...で、このAdjustable keyboardに関して見ると、前述したように 2)はその通りなのだが、1)については、筆者所蔵機はパームレストがついておらず、かつ他著名サイトでも述べられているように筐体高が比較的高いため、手首が背屈になる。

もちろん、底面にティルトスタンドがついていることもある。そもそもErgonomicキーボードで通常のキーボードのように上部が高くなる構造が必要なのか...という問題もあるのだが、それはさておき、上記のような状態でホームポジションに両手を置くと....これはもう、普通のキーボードと同じといっても良いような、筆者が慣れ親しんだ体勢になるのである。

つまり、筆者にとっては比較的打ちやすく、疲れの出にくい「Ergonomic keyboard」なのだ。
そうなのだが....上記考察の如く、機構としてはErgonomicであることを否定しているような要素がそこかしこに見られる。
つまるところ「エルゴノミックな機構を半ば放棄している」が故に「Ergonomic keyboardで肩がこりやすい」筆者が使っても「疲れが出にくい=Ergonomicなkeyboard」であるという、何だかよく判らない結論に辿り着くのだ。




(2017/08/08記)

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