Goldtouch KFK-E87YY Ergonomic keyboard
Goldtouch KFK-E87YY Ergonomic keyboard
製造元 Goldtouch Inc.
諸元
キー配列 87keys/US(SPACEx2/WINx2)
メカニズム Rubber dome/ membrane switch(Chicony?)
I/F PS/2
備考
Junk Point 立体変形は戦闘用?

2015年に「入力にフリックを使用している」割合が45.7%であったとの調査結果が、JustSystemから発表されている。

尤もこれは「スマホの文字入力」に際して、という調査なので、PCの入力も含めると、もう少しこの数値は低く出ると思われる。
ただ、今日ではスマホでの文書作成も一般化されてきていると思われる。PC向けにも、こんながぢぇっとモノが発売されるご時世だ。

一方で変革の時期は、混沌の時期でもある。
フリックにしても、クロス型(中央+四方)/ブラッサム型(花弁配置)の二大潮流があり、その中での文字の配列となると、それこそ各社が異なる乱立状態だ。ましてやこんなモノまで出現している(まあ、行く末は....のような気もしますが)。
いずれにしても、ディファクトスタンダードが一時の安寧をもたらすまで、人間(ユーザー)側からマシン側(或いはHID)へむけて、その最強の能力(=慣れ)を幾再となく発揮し続ける日々が続くのであろう。
スイッチは普通のメンブレンの模様
形状からおそらくSillitek製

で、そのようなことのなかった、QWERTYキーボードというHIDがディファクトスタンダードだった時代に「マシンの側から歩み寄って『くれた』」Ergonomicである。いや、ここしばらくこのコーナーでこればっかし取り上げてますけど。

本機「Goldtouch KFK-E87YY」をネットで検索すると、1999年9月11日付の”Akiba PC Hotline”に紹介されている。ちなみに、同日の記事に「Windows98 Second Edition」のパッケージ版が掲載されていた。

底面のラベルには特に記載がないが、キーの角型スライダーや、ゴム椀の形状から推測するに、本機もSillitekの製造ではないかと思われる。筆者所蔵機は製造から20年近くたったと思われる中古品だが、特にキーの引っかかりやがたつきもなく、スムーズにタイピングできる。

ただし打鍵音は結構大きめだ。特殊な構造故か、本体は重くしっかりとした作りになっているので、カタカタという割と耳につく打鍵音には少し違和感を覚える(操作者である筆者にとってはそれほど不快ではないのだが)。

配列は、左右のAltやShiftがあるなど、文字キーについては全くオーソドックスな構成になっている。筆者の癖から見ると、shift/ctrl/altの左側の位置と、文字キーが1列ずつずれている感じがあるので、Shiftで大文字のAを入れたり、全角←→半角の切替(Alt+`)をしようとすると、Sがはいったり、スペース+〜になったりするが、おおむね問題の無い配列だ。

ただ、使い始めて間もない頃は、左側に寄せられたhome/pdown/pup/end/scroll lock/ins/delなどをCtrlやチルダと間違えてうっかり叩いてしまう事があった。 
左端に配置されたキー群
Winキーはファンクションキー両端に2個

さて、問題の変形である。

今日のErgonomic keyboardは、3つに大別されると思われる。つまり、
(1)変形型
(2)固定隆起型
(3)固定陥没型
である。
このうち、(3)は筆者の知る限りKinesis Advantage2しか存在しない。
(2)の代表格がMicrosoftの製品群であろう。そして、(1)に関しては、昨今のゲーミング用途の拡充を反映してか、各社から数多のモデルが発売されている。
現在(2017年9月)のGoldtouchのラインナップをみると、このKFK-E87YYからの流れを汲んでいるのか、「変形→固定」あるいは「有線接続で左右分離型」というタイプのみが発売されているようで、今日数を増している、Mistel(および関連会社のVortex)/Matias/Kinesisなどから発売されている「ワイヤレスで左右分離」型のものは未発表のようである。

筆者などのような「両手の協調的運動によって文章を入力するための装置」としてキーボードを使用している者にとっては、ある特定の形で固定される仕組みの方が使用しやすい。

このような「機械の側から人間側にすり寄ったデバイス」を見るたびに思うことなのだが、多系統型(つまりスイッチが幾つも付いている)入力装置のオペレーション効率は、人間の「空間認識」能力に負うところが大きいのではないだろうか。

以前に筆者はここで、タイピング習得の基礎について述べた。
指を使っての機器操作は、突き詰めると「相互の指の位置関係を人間が認識して動かす」ことなのであって、「『どこ』を押すのか」はさほど重要なファクターではないのである。
極端なことをいえば、指の位置と動きを機械側で認識してくれるのであれば、それぞれの指のジェスチャーの組み合わせだけで(つまり任意の場所で指をピロピロと決まった型で動かすことで)操作することは可能のはずなのだ。
そしてそれは....本質的な意味においての「Ergonomic」な操作方法であるといえる。どのような姿勢であっても、指さえ動かせばそれに連動して機械が反応するのだから。

だが現実にはこのような原初的二次元操作認識システムが存在するにとどまっている。
そうした状況下、「より人間の肉体に負担をかけない自然な姿勢での入力を可能」と謳うデバイスにできることは、「なるべく負担のかからない姿勢で身体を固定」することを強いて操作させることのみになる。いわば上記3つのタイプは、その「固定させる身体姿勢」の形態と、選択の自由度が違うだけなのだ。たとえ左右分離型であっても、結局はその域を出ないのではないか...と考えるのだ。

(左上)レバーを上げると(右上)ロック解除で変形
(左下)平面変形(右下)そして「何ゆえ?」の立体変形


そして筆者は....入手した「変形型」エルゴノミックキーボードを、標準形態で使用するのが常となっている。
とはいえ、せっかくだから変形形態でも試用してみることにする。ほぼネタとして...ということになるだろうな、おそらく。

まず、水平方向への分割、これは問題ない。

というか、数行上の印象をいきなりひっくり返してしまうが、実のところ筆者のようなノーマルOADGキーボード愛好者(?)の場合、むしろ10〜20°水平方向に開いた方が、Ctrl/Altと他のキーとの位置関係が良くなるのだ。

これはおそらく感覚的なもので、先に述べた、「通常テンキーレスキーボードの右端にあるdel/ins/scroll lock/home/end/pgup/pgdownといったキーが左端に配置されている」事に起因すると思われる。
まず「左ctrl掌底打ち」については、位置決めを「キーボード端」と体に記憶させているようなので、ついinsキーを叩いてしまうことがある。これが、標準形態からさらにCtrlが外側に移動することで、小指の中手骨(つまり手刀あたり)で操作しやすくなる。
それと、日本語切替のalt+「~」については、「~」がやや外側に位置する関係で、これも開いた方が手首の角度を無理に開かずに済むため、叩きやすくなるのだ。

パームレスト装備で快適操作
求められる要件は高さともふもふ

一方、「何故に?」と首を傾げずにいられないのが「立体変形」だ。

人間の手関節の良肢位(身体にとって自然な姿勢)は「10〜20°背屈、やや尺屈(小指側に曲がる)」といわれている。
イメージすると「胸の高さの台に置いてあるサッカーボールに手を乗せる」ぐらいの位置といえばイメージしやすいだろうか。
本機中央を持ち上げた状態でホームポジションに手を配置すると、一応この「良肢位」に近い位置となる(Microsoft Ergonomic keyboardの中央隆起も、この理論を元にしていると思われるが)。

なるのだが....なんだこの異常な操作のしにくさと、上腕〜肩にかけての疲労の蓄積は。

と思って、遅ればせながら気が付いた。腕が宙ぶらりんではないか。
同じ良肢位を取らせるMicrosoft Ergonomic keyboardにあって、本機にないもの。パームレストだ。

いくら良肢位であっても、それを支えて筋肉に無駄な負担をかけない工夫が、本機の「立体変形」には決定的に欠けているのだ。

そんなわけで、自己オプションを装備してみた。
高さ的には、大体これで合っている感じだ。すみっこの方のキーが水面下にあって物凄く叩きづらいが、黒ニャンコ先生は柔らかいので、押せば変形して、指が届かないわけではない。
ただ、短足が前腕に当たってこちょばゆいのと、なにやら精神攻撃を受けている気がしてならないのは、筆者だけであろうか。



--- おまけ ---

某有名サイト風のアングルで

裏面
ソフト(Win98SE)消えてもハードは残る


(2017/09/23記)

 

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