けいおん!キーボード?
製造元 言迷(大陸製)
諸元
キー配列 微妙JIS/89keys+media keys
メカニズム ゴム椀+メンブレン/一体型キートップ
備考 I/F:USB
Junk Point 海外ロケ
以前にここで紹介した「走召低品質痛キーボード」の「けいおん!」バージョンである。

ところで、筆者はこうしたモノを目にする度に「子連れ狼」のあるシーンを思い出す。

「拝一刀と戦って、勝ったものを後継者とする」べく、彼に息子たちの殺害を依頼した堺の鉄砲鍛冶の頭領が、銃の性能よりも外面の装飾によって値段が決定される太平の世の風潮を嘆きつつ、拝にこう語るのだ。

「銃は人間を殺傷するもの。それ以外の価値はない」

.....大方の予想通り、3人の息子(正面から堂々と挑んだ漢、集団で攻撃した卑怯な野郎、買収しようとした姑息な奴)はアッサリ殺られ、返す刀で拝は、最後の最後に親の情にほだされた依頼人たる頭領をも両断する。
そして拝一刀は、今際の際の頭領から「斉発順射銃」...つまりマシンガンを託される。

本来の姿を見失ったまま、爛熟の境を謳歌していた鉄砲鍛冶組は、後継者全員死亡という事態に系譜の途絶を余儀なくされ、その一方で、頭領が心血を注いだ大量破壊兵器(当時の技術レベルにおいてですけど)は、大五郎搭乗の箱車ベビーカーのメインウェポンとして、裏柳生との死闘の中でその威力を遺憾なく発揮し、屍山血河を築く事になるのである。...

キー配列
こちらもチルトはナシか
....もちろんこれは「物語」だ。

実際に堺や国友といった鉄砲鍛冶の里で、同様の退嬰が起こっていたという資料は見当たらない(本職の注文が激減した職人が、鍛冶の技術を応用して装飾品を製造していた...という資料はあるが)。もちろんマシンガンを開発したという与太話も存在しない。

だが「社会において、特定の物事や存在に『その本質を離れた部分に価値を見出そうという傾向』が現れたとき、その存在は社会に根付いた安定期か、もしくは衰退期にある(その多くは後者)」というのは、普遍的な事実なのかもしれない。

「20世紀初頭から『理屈抜きに』世界を熱狂させてきたジャズについて、アーティストの出自や技術的特性、音楽的源流などが語られ始めたのは、ジャズが音楽の世界でメインストリームたる勢いを失った70年代に入ってからだ」...と、坂本龍一氏が以前ラジオで語っていたのも、その一例を示しているのではないだろうか。

一方で、「理性を超えた」もの(食欲とか、萌えとか、もっと有体に言えばエ○とか、リビドーの領域に属する人間の根源的欲望)を原動力とする本質からの離れ方は、本質の存在と価値を社会に再認識させる可能性を秘めている。

.....というより、本質そのものすら撃砕して、新しい価値、というか「ワケがわからないが、おもろいモノ」を生み出すことが多いのではないかと思うことがある。

この「痛」という一種のサブカルチャームーヴメントは、その類のものなのだ。多分。

妙に生物ぽな凹凸のある塗装
変態配列にあるまじき「ほぼ無刻印」キートップ
筆者は例の如くこのキーボードの素性を探ろうと「けいおん 痛キーボード」でぐぐってみたら....このキーボードに関する情報はまったく引っかかって来ず、代わりに「けいおん!痛キーボード自作」が山のように表示された。

各サイトを見ていると、押し下げ時に天板とキートップがフラットになるアイソレーションキーボードと、フィルムシートを使った自作技術はほぼ確立されているようで、けいおん以外にも、それこそ無数のキャラが鍵盤上に貼り付けられていた。

オリジナルを取り入れ、長い時間の中で己が文化によってそれを咀嚼・改造し、結果オリジナルとは似ても似つかないものに変化させることを「本質剥離(*)」というそうだ(日本のラーメン・カレーやロシア寿司がこれにあたる)。こうした「痛」もそれに該当するのではなかろうか。
「貼ることで剥がす」.....うむ、奥の深い世界だ。正に日本の伝統文化だ(を)。

さてそんなこんなの中、この劣悪「痛」キーボードである。

構造及び「痛」実装は「まど☆マギキーボード」と同じ、ペラペラ+直噴だ。

画像の通り、塗装のはみ出しまで同じ仕様になっている。なので耐久性も、変態性もアレに準ずると思われる。

やっぱりハミ出してました
「思われる」...というのは、「まどマギ」がカラーだったのに対し、こちらは○○った原画がモノクロだったためか、一部のキートップが「HHKB墨」化していることだ。
....いや、意図的に文字刻印を消したのではなく、おそらくは文字(うすい灰色の単色)も画像と一緒に噴き付け印刷しているせいか、画像の薄いところは文字も殆ど見えないという「逆墨」状態なのである。

これは、こうした「変態配列」キーボードの場合、ある意味致命的だ。

OADGの配列と微妙に違う上に、HHKBのように、製造者がオフィシャルにキー配列を解説しているわけでもないからだ。
(それどころか、製造者も分らない)
ま、そうはいっても筆者のように、もう一枚同じモノを持っていれば、ニコイチで大体分る案配なのではあるのだ。

しかし筆者の場合「まど☆マギ」が300円だったのに対し、この「けいおん!」がその10倍以上、所有のHHKB Lite2より高かったことは某スジにはナイショだ。
それほど欲しかったわけでもないのに燃えてしまったのは、ひとえにコンプ魂がメラメラば〜にんぐだったからに過ぎない。
ましてやほむらバージョンをげとしてLaserKeyboardとジョイントで再現動画などを狙った挙げ句に

「ほむほむは...無いですね」

の店員の一言で天を仰いだわけではない。糸色 文寸にだ。

....ところで、この他に「ミク」と「なのは」があったっけ。さて、どうするか.....



(2012/08/08記)

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