IS-RCKB
発売元/製造元 I.O data inc. (飯田橋のではない)
諸元
キー配列 38keys/US+Fn1/2/mouse on/off/ok(left)/click(right)
メカニズム ボタン式?
備考 I/F:2.4GHzRF
Junk Point 強力なライバル出現(@2018/02/12現在)

「遠く隔てられた場所にあるモノを意のままに操りたい」というのは、人類に科学文明がもたらされる遙か以前からの希求なのだろう。それは古の魔法使いが、買い求めた弟子・チセの倫敦に於けるガールズトークを盗み聞きしようとクラゲを飛ばした頃から(....って現代か、それは)。

筆者が初めて「リモコン」と名の付くデバイスを手にしたのは今から46年前の1972年。
近所の文房具屋で売っていた「リモコンプラモデルカー1/24ポルシェ904」を購入したときである。当然ながら無線ではなく、車体とリモコンが2軸線でつながった有線リモコンであったが、筆者にとっては古以来の人類の憧憬が実現したような昂揚感を覚えたものである。....購入した直後は。

キー配列
表がマウス、キーボードは脇役らしい
冷や汗カキカキ得意げに操作のパパ草

言うまでもない事ながら「遠く隔てられた場所のモノを操作する」ことと「意のままに操る」こととは、必ずしも両立するとは限らない。チセとアリスの恋バナ(?)を、オペレータのエリアス・エインズワースが理解できなかったように(個人の資質も影響したような気がしないでもないが)。

筆者が購入したポルシェ904は、操作ボタンが2つ。可能な動作は「前進」と「左折バック」のみであった。
バックすると、その牽引力で操舵装置の付いていない前輪が勝手に左に曲がるという仕掛けである。当時の価格で600円もした割には、その程度が精一杯だったのである。

Bluetoothや2.4GHzRF通信の普及により、今日ではHIDの無線化が一般的になっている。

TVリモコンのように、単にボタンだけで操作する体系であれば、それほど問題はない。だが、本機のような画面上のカーソルを操作可能なコンソールのように、操作端末の位置/姿勢が操作に関連してくると、離れている操作対象を視認しながらの微妙な操作となり、途端に話が難しくなってくる....ように思う。

本機の発売は2016年。当時の記事を見ると、スティックPCに接続して大型ディスプレイ/TVでの使用が紹介されていた。

割と感覚に忠実な移動、行き過ぎたらoff→戻してonで位置合わせ
ボタンが固いので、片手持ちで押せばポインタはほぼ確実に意図した位置からズレる

ポインタの位置はジャイロセンサーで特定しているとのことだ。
....と書いたが、おそらく正確に表現すると、ポインタの現在位置をセンシングしてるのではなく、本機の移動の方向/距離をポインタ移動に反映しているということなのだろう。

移動そのものは過敏すぎず、かつカクカクしたりもしないのだが、宙ぶらりんで操作しようとすると、クリックの際にポインタがずれてしまう。
両手で持つか、下部を体の部分などどこかに接触させて固定し、そこを支点にしてスイングするように操作するとズレが起こりにくい。

もう一点、マウスの左/右クリックが斜めにずれて配置されている。
これは、もともと1ボタン操作を想定して設計されたのかも知れないが 2ボタンマウスに慣れたWinユーザーには少し違和感がある。
マウスONにした際に、okボタン両サイドの方向キーをボタンキーにアサインしてくれると、個人的には使いやすかったかも知れない。
あるいは裏面キー最下段にあるWebバックキー/窓キーは今のところほとんど使わないので、こちらをオルタナティヴに使ってくれても....とも思うところだ。

(上)筆者が辿り着いた基本は三本指タイプ
(下)「ウラ」はFnキーに指をかけてホールド

さて、本題の(?)キーボード部である。

筆者は当初、ホームポジションに左右の手をのせてのタイピングを試みたのだが、これは失敗だった。コンビネーションキー切替のFnキーが裏面にあるので、いちいち持ち替える必要が出てくる。

いろいろ試した結果、恐らく設計者の意図した通り、左手人差し指/中指をFn1/2に割り当て、常にこの2キーを押せる位置で本機を(もちろん両手でだが)ホールドしながら、表の文字キーは右手人差し指/中指と左手親指でタイプするのが今のところよりスムーズなタイプができるポジションと思われる。

キーは比較的固いボタンタイプなのだが、クリック感がしっかりあって、入力の感覚はつかみやすい。筆者の個人的な感覚では、SEGA Pico kids keyboard のボタンに、SH-04Aのクリック感を持たせた感じ....といえばよいだろうか。

配列に関しては、大きな不満が2点ある。

一つは『←(backspace)』がFn1とのコンビネーションになっている点だ。
筆者にとってこの操作が1キーストロークで終了しないのはかなり煩わしい。エディタなどではCtrl+Hを使用する方法があるが、EvernoteやOffice系アプリではこのショートカットが『置換』に割り当てられていて使えない。

もう一点は(この手の省スペースキーボードに当然の如く付随する問題だが)キートップに見当たらない文字が存在し、その中に『tab』が含まれることだ。
筆者のWin10環境だと、著述作業中に通知(録画準備中とか録画開始とか録画停止とか....ですけど)が表示されると、元の著述に使用中のアプリをフォアグラウンドに戻すタスクスイッチ作業がいちいち発生する。これをキーボード操作で出来ないのは非常に鬱陶しいのだ。

代替の操作方法としては、ひっくり返してマウスonにして画面をクリックするか、shift+ctrl+esc(この操作自体は3キーが隣接していて押しやすい)でタスクマネージャを起動して選択して....といった方法があるが、いずれ劣らぬめんどっちさである。

流れの中で使用出来るキーでの操作がない後者はともかくとして、まあ前者などの特殊な操作方法はあくまで慣れなのだと思われる。現にここまでの文書をほぼ全て本機で打っているが、裏面Fnとのコンビネーションキーは意外に使いやすいと感じられる様になってきた。左半分のキーを左手親指1本で担当できる、このサイズのコンパクトキーボードだからこそ....ともいえるのだが。


で、つらつらと印象を書いてきたが....そもそも本機の使用シーンに、このような『長文作成』はおそらく想定されていないのは間違いないだろう。
文字入力で考えられるとすれば、リビングTVに接続したPCでwebブラウズや検索をする...といった用途だろうか。いずれにせよあまりたくさんの文字列を打つ使用シーンではない。

で、逆に筆者としては、そのような用途を想定して本機を購入した訳では無い。..つまり、そういうことだ。



(2016/06購入、2018/2/12記)

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