Rotella Schnecken
製造元 世界のハリボ
諸元 「コリス味」グミ
Junk Point 地球侵略計画
備考 筆者は「文明の衝突」という思想....というほどでもない「思いつき」が好きではない。
半珍豚氏の同名著書を精読したわけではないのだが、彼の著述には大国の強大な武力を背景とした世界の分割支配を宿命論的に正当化する意図が見え隠れしているように思えてならないのだ。
ひょっとすると彼は冬にストーブの上で展開されるライデンフロスト現象を見て、この思いつきに至ったのではないかと邪推してしまうのだ。もしそうだとするなら、ダーウィニズムにも似た科学仮説の社会学への模写として、後世に悪名を残すことになるだろう....ってそんなオオゲサなもんでもないか。

とにかく人間世界はもっと複雑で、柔軟で、そして流動的であると思う。異文明は拒絶されるのではなく、いつしか混ざり、変形して「本質剥離」に至るのだ。
『インド人もビックリ!』のカレーヨーグルトや、イタリア人が諸手をあげて”まんまみ〜や!”なスバゲッティー缶詰、そして滋賀県が世界に誇る「サラダパン」など、筆者が愛してやまないキメラ製品は、こうした異文化交流という世界平和の礎となる潮流の尖兵たちであるといえよう....いえるかな....多分いえると思う。

とはいえ、文明はともかくとしても、文化同士の差異を最も如実に顕すのが「食」の世界であることに異論を挟む方は少ないであろう。
筆者は五木寛之の「美しきパトリオート」を読んで以来のフィンランド好きである。だが美しき湖と森、そして素朴な愛国心を抱く人々が住むかの国には、「SALMIAKKI」という世界最凶のアメがあるという。
食べる人をして「不味い!」「こんなもん食えるか〜」と言わしめることを目的として売っているわけではないのだろうから、少なくともフィンランドでは普通に食べられているものなのだろうが、これを口にする幸運(?)に浴した数少ない日本人の評は異口同音に「食い物じゃねぇ!!」である。

筆者もその仲間入りをすべく、かの秋葉の食材屋に足を運んだ。秋葉デパートが終焉を迎えた今、貴重な言迷食品を扱う店舗となってしまったあそこである。
早速キャンディー&グミのコーナーと向き合った筆者。以前来た時にHariboのラインナップがずらりと並んでいた。流石に100%Salmiakkiは無くとも、「8%含有グミ」なら置いてあるかも.....
....無い。
若干肩を落とす筆者。

その視線の先にあったのが....この渦巻きであった。
POPには「コリス味」とある。
ここで冷静になって考えれば、会社名が味になるワケが無いことなどすぐに判るのだが、筆者の頭には「笛ラムネ」の甘酸っぱい味が黒いそのフォルムとキメラ的に融合して、「あーなるほど、コーラ味か」と結論が出てしまった。一緒にきている怪獣ドモが、帰りの電車で飽きたときのおやつになるだろう。丁度いい、買っていこう....

で、予定通り帰りの新幹線で、彼らの前でおもむろに袋を取り出した筆者。一様に興味を示す我が家の怪獣たち。お、つかみは上々だ....

.....しかしそれは、ヒトカジリするまでだった。
頭の奥にずもーんと沈殿しそうな重苦しい「コリス(甘草)」の甘味と、どことなく仁丹に似ていなくも無い薬草系香料、そしてそれらを歯にまとわりつかせて離さない粘着型グミの合体攻撃ジェットストリームアタックが筆者一家を襲う。

後には歯形のちょこっとついた渦巻が3つ残された。
...ええ、筆者は食いましたとも(泣)

SALMIAKKIを紹介している某サイトの管理者がいみじくも仰っている。
「飴系の奇食は、不味かった時のダメージが大きい」
....至極名言であると思う今日この頃である。家に置くことも許されず、筆者のカバンに居座りつづけるこのRotellaちゃんから、すでに妙な移り香が筆者の愛機X30を蚕食しつつあるのだ。

しかしながらやはり、「いつかはSALMIAKKI」と思う筆者である。そうした異文化への突撃〜自爆ができるのも、平和な世界があって文化の交流が可能であればこそ。ありがたや〜ありがたや〜。



追記:
一目見てSALMIAKKIの在庫無しを確認した筆者だが、一応レジ係のメイドさんに聞いてみる事にした。
筆者「あのーすみません。こちらに『SALMIAKKI』って置いてますか?」
メイドさん「え・えーと...?サルミ....何でしょう?」
筆「あ、ご存知ないということは無いんですよね...」
メ「(恐縮しつつ)不勉強で申し訳ありません。それはどういうものですか...?」
筆「(こちらも恐縮)あ、あの...『世界で最も不味い』っていう飴なんすけど...」
メ「あー....そういえば思い出しました。以前にも聞いてこられた方が何人かおられました」
筆「....」

....秋葉、恐るべし。(笑)

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