カルビーポテトチップ鮒ずし味
販売 カルビー
諸元 名称:ポテトチップス
原材料名:じゃがいも、植物油、砂糖、食塩、クリーミングパウダー、魚醤パウダー、乳等を主要原料とする食品、貝エキス調味料、エキスパウダー、粉末酒、鮒パウダー、米加工品、粉末みそ、調味料(アミノ酸等)、酸味料、香料、苦味料
内容量:55g、栄養成分表示(1袋55gあたり)エネルギー304Kcal、タンパク質3.1g、脂質19.1g、炭水化物29.9g、食塩相当量0.8g

売り口上『鮒由来の小骨がまれに残っていることがありますので、ご注意下さい』
Junk Point 鮒寿司は入っていない模様

朧気な記憶なのだが、筆者が30年前に使っていた高校の英語教科書、そのとあるsectionの一節にこのようなものがあった。

In the past, when I met Japanese people for the first time, they often asked me. "How do you do? Is this your first visit to Japan? Do you like "Natto"?


...."Japanese"を"SG県"に、そして"Natto"を「鮒寿司」に変換したイディオムに直面した方も多いのではないか(....いや、SG県に来ること自体が少ないか。SG県民も首都圏には少ないだろうし)。

臭味役いいんちょのご紹介を待つまでもなく、日本の代表的発酵食品のひとつとなっている「鮒寿司」だが、カルビーのサイトに紹介されている通り、また日本各地で地域興しの一環として紹介されている郷土料理と同じように、本来は「非日常食」である。
一般に食材とされる産卵期の鮒(ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ)を4〜6月に漁獲し、最短で2〜3か月つけ込むため、日常的に食べる量を生産することが元々困難である。

昨今は漁獲資源の激減にともなう入手困難という状況もあるのだが、いずれにしても「SG県民は常に鮒寿司を喰っている」という説は、他県民の偏見....というより、SG県民の被害妄想といえるだろう。多分。

鮒ずしの口上が入っている
まあ「臭い物」と憶えて頂ければ

それはともかく、アラバスター単位でシュールストレミング(*1)の1/20の臭味しか持たない「マイルドな発酵食品」であるからして、基本的には特にアレンジをしなくても、万人のお口に合う味わいと香りであるはずだ。今回の「地ぽてち企画」においても、ポテチにフリーズドライ処置を行った鮒寿司のパウダーをブチまけて発売しても、何の問題もないと思われる(コスト以外は)。

....が、そうした筆者を含めた家族の期待(というか何というか...)は、「あんな特殊な味覚、他県民には中々理解してもらえないのではないか」...という、おそらくは企画段階において地元民が行なったであろう「忖度」によって、アッサリ裏切られることになる。

2017年11月26日現在、筆者の近所ではファミマでのみ店頭に並んでいる。
Twitter拡散の影響か、売り切れ店舗が多い中で、なぜか小学校近隣の店舗には大量に残っていた。

早速購入し、開封。まず香りを....「あれ?」
我々が想像していた「高発酵チーズのような酸味臭」がほとんどしないのだ。

開封しても香りはマイルド
食すと「鮭脂と鮒の生臭さ」がお口に広がります

確かに鮒寿司本体はかなりの高級品となってしまっているので、これを原材料に使用するのが困難なのは仕方ない。
一方で、その本体周囲の「酢飯」――つまり発酵と腐敗の境界線ギリギリに立っている、本来は本体に大量に付着している、あの酸味と塩辛味の塊である白い半固形物質(本来食べない場合が多いので、産廃として処理されている可能性が高い)―― は、コストパフォーマンスを考えると、おそらくは鮒寿司フレーバーを演出する原材料として利用するに、非常に有用な食材であるはずなのだ。

そのはずなのだが....その強烈な風味を期待して開封した筆者は、まずここで肩すかしを食らった。

訝しみつつ、一つつまんでみる。「こ、これは....」
口に広がったのは、ほんのりとした「川魚独特の生臭さ」であった。
これは、筆者が鮒寿司に感じている風味とかけ離れたものだ。

本来「強烈な酸味と強い塩分」という、主張の強い味の向こう側から「うまみが後味としてやってくる」のが鮒寿司の味わいであると筆者は感じている。
その最初の「ドカン」が、おそらくは万人受けを狙った企画者の意図によって、大幅に削がれている一方、鮒パウダー+魚醤(原材料の魚種不明)で「鮒寿司風味」を演出しようとした結果、生臭さだけが前面に出た、筆者としてはかなり残念な味付けになってしまっているように思われるのだ。
他県出身&出生の筆者パートナー&次男も口を揃えて「逆に『これが鮒寿司の味なんだ』と思い込む人がいたら、ちょっとどうかしらね?」と感想を述べていた。

本品の完成度の残念さ(個人的主観です)は置いておくとして、件のサイトには「既に発売されている『都道府県地ポテチ』」と、その企画経緯が紹介されていた。
千葉県の「さんが焼き味」がどのような味なのかは食欲まぢん様にうかがうとして、個人的に気になった....というか、「どうしてこうなった」と企画者のアタマの中をカッポリと開けて覗いてみたくなったのは

鳥取県「砂丘をイメージした珈琲味」


であった。
まあ、「不倶戴天の敵島根県に先んじた」ということで良し、とされているのかも知れない。しらんけど。



滋賀県イメキャラ
狸はともかく キャッフィー知ってる人って....


(注*1).....しまった。購入後常温保存して、既に10年以上経っている......

(本国瑞典では、こうした案件に爆発物処理班が出動するそうだが)



(2017/11/26記)

Junk Junky