bigenter
Big Enter key
発売元/製造元 言迷/イベント企画
諸元
キー配列 1key/OADG非準拠だと思う
メカニズム Micro mechanical switch/sponge/傾斜角調節スタンドなし
I/F USB
備考 -
Junk Point 優しくブってね(はぁと)

久しぶりに、小田嶋隆氏のコラムを読んだ。

その中に、少し前に書かれた「過重な残業に苛まれて自ら命を絶った電通社員女性」についてのものがあった。
かの女性について、氏は「苛酷な日々の中にあって、自身を相対化して表現する聡明さとユーモアを失っていなかったことが、結果的に彼女の生命を縮める結果になったのではないか」としている。
一方で、氏は彼女のような選択をしていない大多数の労働者のように、そうした所謂「ブラック」な就労環境に適応、というか馴化し、その中で生きていく以外の道を見いだせなくなっていく過程を、カルト宗教の洗脳に似ている、と述べている。

客観的に見れば、選択肢は二つであることになる。
一つは、組織の蟻となって働き続けること。
もう一つは、外に出てみること。
(もちろん、彼女と同じ選択はナシで)

(左)吊し商品らしい
(右)用途右上に愛を感じるw

さて、世に蔓延る「ストレス発散グッズ」であるが、これは前者を選択した人の救済措置といえるのだろうか。
もちろん、緊張を以てあたる業務の日々のスキマに、何かしらほっとするアイテムをそばに置いておく...と言う意味では、机の中に忍ばせたチョコや、デスク上に鎮座するヌイグルミ、あるいは筐体や画面上に微笑む二次元嫁などと同列に並べても良い様な代物と言えるだろう。このEnterキーは。

ただ、それらと違う点があるとすれば、この「Big Enter」は、PCデバイスとしての機能を持っている...というところだ。
いや、いうまでもなくそれはほぼ「無機能」に近い「単機能」なんですけど。

筆者は寡聞にしてこのキーボード(?)の存在を知らなかった。発売は2014年末とある。
ここの記事にちらとそのお姿があるのを見て、なぜか尼ポチとなった次第である。
どうせなら、同記事の分割型KBを逝った方が良かったか。
でもまあ、発売当時4000円が、\1680。まあこれなら財政にもそれほどダメージはないだろう。つか発売価格高杉。これでも買った人がいるようだから、世の中に物好きの種は尽きないモノだと思う次第だ。

ユルい縫製
このあたりは安定のMade in 大陸国

件の記事では実サイズがわかりにくかったのだが、届いた尼箱から出てきたのはそれほど巨大というわけでもなく、クレーンに入っているヌイグルミのような感じのイチモツだった。

骨格...というか本体は中央で二分割されたスポンジで、それをポリエステルのキーボードカバーで覆っている。
手触りは今はやり(らしい)の「つるもふっ」とした感触である。開封した時点で縫製にほつれがあったのはでほ...だと思っておこう。

圧センサーでも使用しているのかな...と思った機構は、ご覧の通りのガヂェッツ感満載の代物だ。
USB接続用回路の基板中央にマイクロスイッチがあり、これに透明なプラ板がくっついていて、プラ板にはウレタン製の緩衝材が貼付けてある(基板との衝突を和らげるモノと思われる)。
これが先ほど述べた本体構造のスポンジに挟んであり、上から圧を加えるとスイッチが押されて動作する...という安直な仕組みだ。

このような機構からして、次のようなことは使用前から全く明らかであろう。

A)反応ポイントに偏りがある

B)耐久性に問題がある

(左)機能部分はスポンジの間に挟んである/(右上)基盤
(右下)スイッチはプラ板中央の黒いヤツ。見てくれ通り1日で壊れたという情報も

で、実際に使ってみるとその通りです(火暴)。

少なくとも、プラ板から少しでもはみ出したところを幾ら押しても叩いても、ほぼ反応しない。
おそらくターゲットエリアだと思われるところに垂直圧を加えるのだが、元々「意識がトんだ時のマクラ」としての利用も想定しており、平均で約10kgの頭部を支える目的で選定された(かどうかは怪しいが)スポンジは、10cmほどのストロークを形成する分厚さと、適度な固さを持っているため、入力の為には「正確に、強く、深く」押下げることを要求してくる。

加えて、ご覧の通りのチャチな構造である。
仕事のストレスをそのままブツケルかの如く「強く」ぶっ叩くと、申し訳程度に貼付けてあるプラ板がまず致命的なダメージを受けることになる。強く押した後で、底付き直前でパワーを抜いてメカが床と怒りの鉄拳の板挟みで死亡することのないように、優しく停止する動作も求められる。

.....いかがであろうか。「無限プチプチ」や「無限枝豆」などといった、無比の耐衝撃性を備えたストレス吸収グッズと同列に扱ってはいけない、デリケートなデバイスなのである。
私的な感想を言わせていただければ、むしろ操作に関しては、ストレスを増大させること請け合いな本末転倒アイテムと言えよう。反応が悪いから、もう一つのセールスポイント「仕事が進んでる感演出」も「グダグダ感演出」に置き換わってるし。

あとはどのような用途があるだろうか。デスク上の(でかくてかなり邪魔だが)ほっこりフィギュア....それかかの2人のようにBluetooth化して同僚のPCにボンディング、いたずらに使用とか...うん、それか破壊を覚悟で、どこぞの独裁者の演説みたいな拳叩きつけての熱苦しいアジプレゼンにもぴったりかも。




白shift先生と黒enter先生


(2016/11/12記)

 

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