IBM PS/2 keyboard(P/N: 44D1840)
製造元 IBM Corp.
諸元
キー配列 101keyUS配列/TrackPoint?
メカニズム メンブレンスイッチ/ラバースプリング型
備考 I/F:PS/2(keyboard/mouse)
Junk Point 脱亜入欧
昨今のInternetの普及により、世のありとあらゆる事象について短時間に情報を得ることが可能になった。

それ自体は結構なことである一方、「隠された事実」を突き止めるために支払う労力と、それを成し遂げた時の達成感なりカタルシスなりを得る機会が減少しているというのも、また事実である。

それとともに、「一次ソースに当たれ」という情報収集の基本が忘れられ、ともすればGoogleやWikipedia,あるいは人によっては2ちゃんのログを調べただけで全てを正しく理解したつもりになってしまう危険性が増している。

もっとも、これは今日に限ったことではなく、新たなるメディアが出現するたびに人類社会が直面してきた問題であろう。
差し当たって、ユーザーが複数の情報源にPullアクセスできる状況は、マスメディアの一元的情報支配が続いた1920年代〜WWW黎明以前にくらべて歓迎すべきではある。
しかしそれこそ「無数の情報源」が存在するウェッブの威力をもってしても、カバーしきれない確認できない「秘密」情報が未だ存在する(意図的に隠蔽された情報はこの際除くとしても)。

この何の変哲もない名前を持つキーボードも、先のIBM 9146-001と同じく、そうした「情報のスキマ」に漂う謎のデバイスのひとつである。
fig.1 鍵盤から飛び出した
TrackPoint(もどき)

筆者がこのキーボードを購入したのは、ハッキリ言って衝動買い、IBMという意外に理由がなかった。だがいざ調べはじめると、非常に謎なキーボードだ。

まずそのレイアウト。いやがおうでも目に留まり目につくTrackPoint(紛いのデバイス)。 根っからのThinkPad使いとしては、なぜこの位置に配置されているのか理解に苦しむ。

これが1990年代の製品だったら、ポインタ自体が発展途上でレイアウト模索中という理由もうなずけるが、本製品の製造は2003年、しかも操作した感触では基本構造はTrackPointIVと思われる。
ということは、「ホームポジションから手を離さずにマウスカーソルを操作できる」利点を敢えて捨て、意図的にこのレイアウトにしたと考えられる。
もうひとつの変な点は、キートップのサイズだ。

キー配置については、上方のカスタムキーとテンキー上あたりの機能キーを除けば、普通の101USレイアウトだ。

fig.2 10キー周り
だが通常のAT互換機用ファンクションキーのみならず、最上段の数字キーまでもが縦シュリンクな小型キートップになっている。
ごらんの通りパームレストと言迷のスティックポインタにあれだけの奥行長をおごっており、しかも2段x16個もあるカスタムファンクションキーはフルピッチであるにもかかわらず、だ。

アルファベットキーのピッチは19mmフルピッチなので、そのつもりで数字キーに指を伸ばすとファンクションを叩いてしまい「おっとっと」という状態が一度ならずあり、そこら辺がかなりストレスのたまるキーサイズである。
日本人の筆者ですらこの有様だ。手の大きな欧米の方々にとってはなおさら操作しにくい事は想像に難くない。

これも慣れてしまえばどうということがないのかも知れないが、ユーザーによってはこの一段の縦シュリンクされたキーは、US101->JP106の右3列横シュリンクキーに比べて使用頻度も縮小されているキーの数も段違いに多い。
このキーボードの違和感を増している大きな原因だと思う。
fig.3 Fnキー&数字キー列
直打メンブレン+ラバーカップ
キートップを外してみると、実にシンプルな機構だ。

通常のメンブレン+ラバードームスプリングの場合、二重構造のラバードームの内部構造が下に撓んでメンブレンを押すようになっているそうだが、このキーボードはキートップから伸びたハンマーが、直にメンブレンスイッチを叩く仕掛けになっているようにみえる。

ラバードームがスプリングとしての機能に専念できるので、この方がタッチとしては快適になるのかも知れない。
実際筆者が叩いてみた所では、割合深めのストローク(このサイズだから当たり前か)とハッキリしたコンタクト感で、ThinkPad770とまではいかなくても、それに近い、すなわちDesktop ReplacementクラスのノートPCの、ゆったりめのキーボードを彷彿させるタッチに感じた。

だがメンブレンを堅い構造物で直叩き....というのはかなり耐久性に不安がある。
今日(2009/10/11)現在、このキーボードのパーツ番号で引っかかってくるサイトは、筆者がぽちったヤフオクの出品者と、米国のおぢゃんくサイト中古事務機販売サイトだけである。
しかも画像なし、IBMにも情報なし、八方ふさがりの状況である。

そこで、

1. 耐久性を考慮されていないようだ
2. アルファベット+10キー+カスタムファンクションキーの使用前提の可能性が高い
3. 場合によってはスティックポインタのみでのオペレーション
  →限られたスペースでの使用

以上のような特徴から、このキーボードの素性を考えてみる。

fig.4 ケーブルは本体にRJ-45で接続
mouse/keyboardの2系統分離型

1.からすると、メンテでしかキーボードを使わない機種、サーバ用コンソールが想像される。
だがこのキーボードがラックに入るか...というと、正直微妙な厚みである。

2.と3.を併せて考えると、チケットカウンターや銀行窓口端末用とも考えられる。
しかしこちらも、プロのオペレータに供与するのはちと可哀想すぎる気がする。

あるいはネットカフェ用のPCに添付とか、"Typing Of The Dead"みたいなアーケードゲームのコンソールというのも、意外とアリかも知れない。
陳腐化が早く(ネットゲーなんかするようだと)、使い捨てのように新機種が導入されるこうした場所では、安上がりポな構造のこのキーボードはフィットするかも知れない....ってレノボやSiltek製でなくIBM謹製なのにいいのか、そんなことで。
(i)(2009/09/11記)(/i)




(2012/06/25追記)
入手から3年、案の定ほぼ放置ぷれい状態の本鍵盤だが、出自がようやく判明した。

IBM Modular CANPOS keyboard

アルプラザ敦賀店をはじめとして、日本でもIBMのPOSレジを時折見かけるのだが、このキーボードが設置されているマシンには今までお目にかかったことがない。
やはりUS国内モデルなのだろうか。スパニッシュ系を意識したシリーズ名もそれなら頷けるのだ...故大沢親分がかつて日ハム監督時代、自軍のノーコン外国人助っ人投手を『ありゃカンポスじゃねェ、ポンカスだ』と揶揄したことが思い出される。どうでもよいことだが。

ネーミングはともかくとして、筆者が気になるのはここに出ている他の機種のことだ。

ANPOS/CANPOS用のキーボードが3種ラインナップされている。しかも"Modular CANPOS keyboard"はタッチパッドが付いた所謂「UltraNavi」まがいの後継機種にモデルチェンジしている。

流石に67keyタイプはPCキーボードとして使用するのは無理があるとしても(それでもLCDパネル付きというのが結構ソソラレル)、ANPOSの方は普通のキーボードに見える。
しかもPS/2とUSB、両方のケーブルが用意されているという。どこかに出品されていないものだろうか。(ちなみにUSのおぢゃんく屋ビジネス機器サプライヤのサイトでは結構見かける)

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