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短期集中連載(笑)  
 
−この物語は、フイクションである(?)− 
 
 
その314 
 
木下隆雄「またしても秋の連休がやってきました」 
小椋良二「とはいえ管理者さんはなんでお仕事なんですか」 
木下「なんでも『どうせはっぴーまんでえなどと言ってもブルーが1日増幅されてズレるだけだ』とか仰ってましたが」 
小椋「相変わらず屁理屈コネですね。そもそも日本の祝日で『の』のつかないズレない日は3日だけなんですけど、国ができた日が定まってないなんてまったく国民の総意というものがこの国にはうんたらかんたら...」 
木下「はいはいわかりましたよ、で一人暗い職場で日頃たまったお仕事の整理をされていると」 
小椋「いえ、げし」 
木下「期待通りのれすぽんす、ありがとうございます」 
小椋「やり」 
 
木下「しかしこう天気がいいと、やはり画面を前にポチポチやってるよりも体を動かしたほうがいいのではありませんか。せっかく東京オリンピック開幕日も近いことですし」 
小椋「うちの息子が『とうちゃん、<体育の日>は<運動をする日>ぢゃないよ、<健康について考える日>だよ!』とのたまってました。どうせ先生の受け売りでしょうが端倪すべからざる示唆を含んでいると思いませんか。毎年行なわれる日頃運動不足のおやぢどもを無理から走らせて運動器や循環器に致命的なダメージを与えるイベントが全国的に開催されることのなんと多いことか」 
木下「そんなことをおっしゃっているから、お餓鬼さんは休日ごとにげ〜せんダッシュになり、貴方は体重計とウェスト計測のメジャーに一喜一憂することになるんです」 
小椋「ぐ、ぐはっ」 
木下「ここはひとつ、山登りでもいかがですか。近くに山もあることですし」 
小椋「えーまぶぅ〜?モリかったりぃ〜」 
木下「死語連発してないでとっとと行きましょう」 
 
 
  
 
小椋「で、ここはどこですか」 
木下「山」 
小椋「モロ街中ぢゃないですか、ちょっと小高い所ではありますが」 
木下「はい着きました。どうです、この盛況ぶり。駐車場は登山客で一杯ですよ」 
小椋「出てくる人の顔色が一様に悪いですね。山が高すぎて酸欠なのではないでしょうか」 
木下「横隔膜押し上げるほどに胃袋に妙ちきりんなものを詰め込んで、呼吸困難に陥っておられるのかも知れません。とにかく行ってみましょう」 
小椋「は、はぁ...」 
 
  
 
小椋「思ったより小奇麗ですね」 
木下「今年6月に建て直した....にしてはちょっとどうかとも思いますが、やはりというか満席ですな」 
小椋「えらく県外ナンバーが多かったですね。そこまでして登るような所なのですか」 
木下「そういう我々もそうではありませんか。どうです、この店内に立ち込める...」 
小椋「妙にニガ味を感じさせるような炒め物の香り、だんだん胸いっぱい、胃が重くなってきました」 
 
  
 
木下「・・・・これは何でしょう」 
小椋「黒招き...確か『災厄除け』だったかと」 
木下「待ち席のド正面ですね、これ」 
小椋「何かを暗示しているように思われます」 
木下「どうやら席が空いたようです。行きましょう」 
小椋「何かこう、山登りというより、歯医者の治療台へと向かう感じです」 
木下「や、やっぱり?」 
 
  
 
木下「さて、メニューが廻ってきました、どうしますか」 
小椋「ここへ来たからには困難な『甘味ルート』と言う人も多いでしょうが、我々ってさっき味噌煮込みうどんを食ったばっかしですからねぇ」 
木下「このあたりでどうです」 
小椋「....人の話を聞いてます?」 
木下「聞いてるからこそぢゃありませんか、貴方の奥さんのような別バラを持たない我々としては、ぱふぇなんぞ糸色 文寸無理ですってば、ここは一つ刺激のあるものでいったほうが登頂の可能性は高いと思われます」 
小椋「そ、そか」 
木下「それに『ニョウ』の方は某所で紹介されて無いでしょう、ネタにもなるし」 
小椋「やぱそこかい」 
 
(横を通り過ぎる数個の氷山、数皿の緑山を眺めつつ待つ事暫し...)
 
 
  
 
木下「やってまいりました。はらぺーにょう」 
小椋「なんかこだわってませんか」 
木下「特にそちらの趣味はありませんが」 
小椋「半ば警戒、半ば期待していたのですが....メシにして1合半ぐらいですか、ちょっと中途半端な量です」 
木下「『八来盛り』ぐらいといえば皆さんにも判りやすいでしょうか」 
小椋「皆さんて誰ですか」 
木下「と、とにかく食ってみましょう....」 
小椋「....」 
 
  
 
木下「....ハラペーニョで辛いのは分かるんですが、何でしょうこの甘さは」 
小椋「マンゴーSPL(辛口)の親戚、ってところでしょうか」 
木下「な、なんかこう味にキレが....メシもジットリしてるし」 
小椋「そこはそれ、ピラフなんじゃないですか」 
木下「単に汁気が多すぎ、炒めが足らなすぎなような、しかもクォータータマネギ&皮がそこかしこに埋設されてます」 
小椋「それを言ってはいけません。艱難辛苦も慣れれば日常、野戦食っぽくっていいじゃありませんか」 
木下「山登りらしくなってきました」 
 
(完食) 
 
木下「というわけで、難なく登頂成功」 
小椋「難なく?」 
木下「適度な運動で咽喉が渇きましたので、ここはひとつ水分補給でしょう」 
小椋「手と口と胃以外のどこを動かしたというのですか」 
  
 
小椋「あぁ、やっぱこれですか...」 
木下「美味しいと評判(一部)だったではないですか」 
小椋「動物性色素が入っているという段階で、すでに遥かマイナス位置からのスタートです」 
木下「まぁそうおっしゃらずに、久しぶりのイカ墨を堪能いたしましょう」 
 
  
 
木下「・・・・」 
小椋「・・・・」 
木下「・・・・えーと・・・・不味くは無いです」 
小椋「・・・・美味くもありませんが」 
木下「ていうか甘過ぎ、ガムシロが沈んでいるんじゃないでしょうか、ちと混ぜて」 
小椋「・・・同じ甘味です」 
木下「さ、流石は甘味&辛味処」 
小椋「お酒は入っていないはずなんですけど、最初にアルコールの風味→トロピカルな香り→イカ臭い....と、なんとも複雑な味と香りのグラデーションですな」 
木下「このなんの変哲もない乾き物クラッカーが、砂漠のオアシスに思えます」 
小椋「ていうか、絶海の孤島なんでは....さすればこちらのレモンケーキは火薬庫横の火遊びと」 
木下「そうこういってるうちに、ごちそうさまでした(ふぅう)」 
小椋「なんとか地上に生還いたしました」 
 
  
 
木下「ご覧下さい、あの神々しいまでの朝日を」 
小椋「夕方4時なんですけど」 
木下「それはともかく、なにかこう偉業を達成した我々を祝福してくれているようで、非常に清々しい気分ではありませんか」 
小椋「石でもブチ込まれたような上腹部の鈍重感で一杯なんですけど」 
木下「大丈夫です、そういう方のためにちゃんとこちらが山の裏手に」 
 
  
 
小椋「をを、比保蔵手洲」 
木下「なぞ」 
 
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