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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その247


・・・・なだらかに登る坂道の横を、ひっきりなしに電車が走り過ぎて行く。

黄色、オレンジ色、地下から顔を出すブルーのストライプ、そして遠い街からの藤色....色とりどりの車両たちの上に、深い泉のような蒼が少しずつ落ちかかり、西の空が夕焼けに染まるころ。

東の空に、言迷の物体が出現した。

一番星には違いない。「星型」で、しかも夕刻の青空を背景に光っているのだから。

だが、その姿は木之本地蔵前の「かどや」で売っているパック詰のウイロウ、あるいはおでん汁の中に「むにっ」と浮かんでいるコンニャクのような質感を持った「星」である。
まるで、でじこたちが住む脱力の街の空に浮かんでいるような。

....ある意味で、それは正しかった。
その「星」が浮かぶ下には、街でありながら「人外魔境」と化した魔窟が広がっているのだから。

人の気にも留まることなく、ふにふにと空中を泳ぐ「星」。

その輝きが一瞬途切れた。
そしてするすると地上に舞い降り、見えなくなった.....かと思うと、しばらくの空白の後、また地上からふるふると上ってきて、さっきと同じくらいの高さに静止し....また光り始めた。

....わずかな時間の出来事に気がついた人はどのくらいいたことだろう。

街は先ほどと変わる様子もなく人と車と時が流れ、そして「星」も、先ほどと変わりなく、秋の風にほよほよと流されながら発光スライムのように頼りなく光るのであった。

....博士ショップは、中野ブロードウェイにある。・・・・


....その248へ続く(・・・・登場人物は?)