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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その235


6・30 神奈川県大会準決勝 横浜スタジアム 観衆:8500人

 
葛野高校 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 14 0
目大藤沢 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0

葛野高校:中島−上山
目大藤沢:松本幸行−木俣

1〜8回 中島・松本両左腕の投げ合い。「ちぎっては投げ」投法の松本のペースに巻き込まれ、葛高打線はランナーを出すも得点に至らない。一方の目大藤沢も中島の豪腕に金属バットをへし折られること一再ならず、強力打線を完全に封じられて試合は膠着状態に。
9回表 しびれを切らせた博士監督(56)が、「全員全球バント」の広島商業戦法を指示。松本の軟投の前に敢え無く2者が凡退するが、3番新沼の超音速バントが炸裂し一挙に3塁を陥れる。ここで4番林田に泣きついた反井田が代打。2死からスクイズという暴挙に出る。だがプッシュ気味に放たれた打球は快音を残して右中間を深々と破り、葛高に待望の先取点。
9回裏 衰えぬ中島の豪速球の前に凡打の山を築いていた目大藤沢打線も、なりふり構わずバント戦法で1塁守備についた反井田を狙い打つ。あっという間に無死満塁、一打サヨナラのチャンスを迎えるが、中島が伝家の宝刀「本塁吸着超高速フォークボール」で三者連続三振に切って取り、葛野高校初の決勝進出。試合時間わずか37分であった。



「....いやはや、思いがけず接戦になったのう。こんなこともあろうかと昨日の晩のうちに本塁を板状重力波増幅フィールド発生機『裏ドラ1号』にすり変えておいて成功じゃったな、木郷君」
「もうあんな犯罪はごめんですからね、博士」
「照れるでないぞ木郷君、君のミニスカートもなかなか似合っておったぞ」
「・・・・」
前日のプロ野球の試合終了時にボールガールにヘンシンして細工をした木郷君だった。
ちょっと嬉しそうに頬を赤らめている。

「・・・・とにかくじゃ、明日は決勝だからな、今日は早く帰って体を休めるように。練習はナシじゃ。後を頼むぞ新太郎君」
「(いつもやってないじゃん....でもまあいっか)分かりました監督」
出番の少なくなった上山(17)が答えた。

「フレディはα線維反応加速テンプレート『うぃうぃるろっきゅー』を調整するからな、ここに残ってくれ」
後半のスタミナ切れが解消されたのはこのようなインチキ肉体改造によるものだったのだ。
「・・・・」
以前の出っ歯からテンプレートによってスッキリとした歯並びになった中島が頷いた。

作業にかかろうとした博士に歩み寄ってきたものがいる。
「なんじゃ、反井田?ワシに何か用があるのか?」

「あの....博士、実は僕の足....」
「ん?何じゃ?まさかキミの足は骨肉腫とか言うんじゃないだろうな....?」
「な、なんでそれを....?!」
「そうか、キミはバレリーナだったのだな」
「い、いえ違いますが....でもこんな足じゃチームに....」
「心配ないぞ反井田。キミはその物理的な存在感だけで十分じゃ。試合ではここんところ影が薄かったし」
「そ、そんな....」

彼が決勝打を放ったことを、博士はすっかり忘れているようだ。

「....でも....でも自分、試合に出たいんです!!少しでもみんなとぷれいしたいんです!!博士ぇッ!!」
「アー分かった分かった!!鬱陶しいから離れろ!!要するにその足で走れれば文句無いんじゃな?」
「え、ええまあ....」
鼻水だらけの顔を博士から離した反井田が応えた。
「心配するな。キミは最後の切り札として待機して貰おう。その時に.....フッフッフッ」
「....ヘッヘッヘッ」

どこからともなく五香粉の匂いが漂ってくる。
決戦は、明日の午後。

....その236へ続く(女子部員と野外ぷれいしたい)