短期集中連載(笑)
葛野高校:林田−上山 ひばり中:中坊1−中坊2
・・・・毛虫の垂れ下がる桜並木の下を、上山勝男(17)は友人の林田(17)と共に歩いていた。 「....やっぱり漫画みたいにはいかないか」 「すまねえ上山。俺にはピッチャーはムリだわ」 「そんなことないよ。バックがあれじゃあなぁ....」 「いや、やはり俺の力不足だ。それで今日はもう一人助っ人をと思ってお前に来てもらったんだ」 「.....」 (....またかよ....)内心で上山は思った。 「こいつはスゲエよ、マジでホンモノだ」 「....お前この間もそればっかし言ってなかったか?」 「いや、今度こそ本当だって」 「はいはい....で、そいつはどこの部のヤツなんだ?」 「軽音部でボーカルをやってるらしい....だがとにかくスゲエやつなんだよ。見ればわかるさ」 「....」 胡散臭そうな表情の上山と、自信満々の林田は軽音部のドアの前に立った。 「いいか....見て驚くなよ。とにかくスゲエんだよ」 林田がドアノブを引っ張った。 「イターッッ・・・・・・!!」 リーゼントの黒髪。 黒々としたチョビヒゲ。 惜しげもなく曝した裸の胸に、濛々たる胸毛。 下半身もっこりシルエットの黒皮パンツと太いサスペンダー.... 伝説の男が、そこにいた。 「あ、あの....はじめ...まして...」 「・・・・」 「貴方の....お名前は?」 「・・・・」 年齢不詳のその男は、潤んだ目で上山を見つめるだけだった。.... ....「な、スゲエだろ...?」 夕焼けの帰り道、チェリオを片手に林田が言った。 「ああ、予想以上、ていうか予想外だったよ。名前すら聞けなかったが....でも俺にはわかる。やつの名前は....フレディだ。そうだ、そうに違いない」 「いや、中島だけど」 「....」 「あれ....?中島....?」 先ほど見たままの格好で、『中島』が学生カバンを持って2人の前方を歩いている。 「ははぁ....またいつもの場所だな」 「いつもの場所?」 「まあ行ってみようぜ。話はそれからだ」 2人は中島の後を追った。.... ....相模川の辺に中島は佇んでいた。 頭上を通る橋の欄干を見つめたまま動かない。 「いつもそうなんだ。この時間にやつはここに来る。そして....」 林田の言葉が終わらぬうちに、中島は足元の石をひとつ拾い上げた。 振りかぶる中島。その左腕がしなる。 指先から放たれた閃光が、一直線に欄干へと走った....と思うまもなく、石はコンクリートに激突して砕け散る。 「!!.....」 「な!スゲエだろ....!」 恐るべき速球だ。しかも.... 「お、おいあの欄干の....」 次々と中島の投ずる石の形をした弾丸は、欄干についた同じシミの上に正確に突き刺さっている。 「そう。やつはあれを狙っている....それこそ毎日だ」 まさに針の穴を通すコントロールだ。 「でも....なんで....?」 勝男が首をかしげた。 「俺には分かる....奴は幼い頃、母親に捨てられたのだ。父親に先立たれ、女手ひとつで中島を育てた母....それがある日疲れた心に負けて、奴を一人残して男と逃げた。奴はそんな母が許せなくて、ああして母の顔に似たあのシミに毎日石をブチ当て、こう心に誓っているんだ....『いつか甲子園に出て、かあさんを見つけ出してやる』とな」 「甲子園って....あいつ軽音部だぞ」 「まあ、細かいことは気にするな」 「....」 「とにかく奴を説得してみよう。話はそれからだ」 「説得って....どうすんだ」 「まあ見てな。オレに考えがある」 林田が中島に近づいた。 「よぉ....中島」 「・・・・」振り返る中島。相変わらず沈黙のままだ。 そんな彼に、林田が手を差し出した。 「俺と一緒に甲子園に行ってかあさんを見つけないか?」 (まんまやないけーっ!) 勝男が視線で突っ込んだ。 「・・・・(コクン)」中島が頷き、林田の手を取った。 熱い視線で見詰め合う、林田と中島。 「....」 ツッコミようもなく固まってる勝男。 カラスの鳴き声が、夕焼け空に溶けていった。.... ....『博士ショップ』は、中野ブロードウェイにある。 「のうあづさクン、ワシらの出番はまだかのう」 「ねぇ博士....私『愛星団徒』にショタ萌えなんですぅ」・・・・ |