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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その231


5・15 練習試合 ひばりが丘中グラウンド 観衆:30人

 
葛野高校 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 5 8
ひばり中 0 0 6 2 0 0 0 3 X 11 12 4

葛野高校:林田−上山
ひばり中:中坊1−中坊2

3回表 1番・麻原がセンター前にポテンヒット。猛速を活かして3塁を陥れるが、リード中に瞑想に入り牽制憤死。
3回裏 中坊7の三遊間の当たりを、全く動かない奥薗がヒットにする。4連続四球で先制を許した後、林田の投じた通天閣チェンジアップをレフト場外に運ばれこの回6点。
8回裏 またも満塁から中坊5がレフトフライ。新沼が超音速強肩で本塁捕殺....と思われたが飛距離10mで失速。カバーが遅れる間に走者一掃で3点。
9回表 4番・上山に泣き付いた反井田が代打。ストライクゾーンまではみ出した腹への死球を恐れたピッチャーが投じた甘い球に反井田の打棒が炸裂。代走麻原が瞑想しつつダイヤモンドを一周し1点を返すが後続なし。


・・・・毛虫の垂れ下がる桜並木の下を、上山勝男(17)は友人の林田(17)と共に歩いていた。

「....やっぱり漫画みたいにはいかないか」
「すまねえ上山。俺にはピッチャーはムリだわ」
「そんなことないよ。バックがあれじゃあなぁ....」
「いや、やはり俺の力不足だ。それで今日はもう一人助っ人をと思ってお前に来てもらったんだ」
「.....」
(....またかよ....)内心で上山は思った。
「こいつはスゲエよ、マジでホンモノだ」
「....お前この間もそればっかし言ってなかったか?」
「いや、今度こそ本当だって」
「はいはい....で、そいつはどこの部のヤツなんだ?」
「軽音部でボーカルをやってるらしい....だがとにかくスゲエやつなんだよ。見ればわかるさ」
「....」
胡散臭そうな表情の上山と、自信満々の林田は軽音部のドアの前に立った。
「いいか....見て驚くなよ。とにかくスゲエんだよ」

林田がドアノブを引っ張った。

「イターッッ・・・・・・!!」

リーゼントの黒髪。
黒々としたチョビヒゲ。
惜しげもなく曝した裸の胸に、濛々たる胸毛。
下半身もっこりシルエットの黒皮パンツと太いサスペンダー....

伝説の男が、そこにいた。

「あ、あの....はじめ...まして...」
「・・・・」
「貴方の....お名前は?」
「・・・・」

年齢不詳のその男は、潤んだ目で上山を見つめるだけだった。....

....「な、スゲエだろ...?」

夕焼けの帰り道、チェリオを片手に林田が言った。

「ああ、予想以上、ていうか予想外だったよ。名前すら聞けなかったが....でも俺にはわかる。やつの名前は....フレディだ。そうだ、そうに違いない」
「いや、中島だけど」
「....」

「あれ....?中島....?」
先ほど見たままの格好で、『中島』が学生カバンを持って2人の前方を歩いている。

「ははぁ....またいつもの場所だな」
「いつもの場所?」
「まあ行ってみようぜ。話はそれからだ」
2人は中島の後を追った。....

....相模川の辺に中島は佇んでいた。
頭上を通る橋の欄干を見つめたまま動かない。

「いつもそうなんだ。この時間にやつはここに来る。そして....」
林田の言葉が終わらぬうちに、中島は足元の石をひとつ拾い上げた。

振りかぶる中島。その左腕がしなる。
指先から放たれた閃光が、一直線に欄干へと走った....と思うまもなく、石はコンクリートに激突して砕け散る。

「!!.....」
「な!スゲエだろ....!」

恐るべき速球だ。しかも....

「お、おいあの欄干の....」
次々と中島の投ずる石の形をした弾丸は、欄干についた同じシミの上に正確に突き刺さっている。
「そう。やつはあれを狙っている....それこそ毎日だ」
まさに針の穴を通すコントロールだ。

「でも....なんで....?」
勝男が首をかしげた。

「俺には分かる....奴は幼い頃、母親に捨てられたのだ。父親に先立たれ、女手ひとつで中島を育てた母....それがある日疲れた心に負けて、奴を一人残して男と逃げた。奴はそんな母が許せなくて、ああして母の顔に似たあのシミに毎日石をブチ当て、こう心に誓っているんだ....『いつか甲子園に出て、かあさんを見つけ出してやる』とな」
「甲子園って....あいつ軽音部だぞ」
「まあ、細かいことは気にするな」
「....」
「とにかく奴を説得してみよう。話はそれからだ」
「説得って....どうすんだ」
「まあ見てな。オレに考えがある」

林田が中島に近づいた。
「よぉ....中島」
「・・・・」振り返る中島。相変わらず沈黙のままだ。

そんな彼に、林田が手を差し出した。
「俺と一緒に甲子園に行ってかあさんを見つけないか?」

(まんまやないけーっ!)

勝男が視線で突っ込んだ。

「・・・・(コクン)」中島が頷き、林田の手を取った。

熱い視線で見詰め合う、林田と中島。
「....」
ツッコミようもなく固まってる勝男。

カラスの鳴き声が、夕焼け空に溶けていった。....

....『博士ショップ』は、中野ブロードウェイにある。

「のうあづさクン、ワシらの出番はまだかのう」
「ねぇ博士....私『愛星団徒』にショタ萌えなんですぅ」・・・・

....その232へ続く(女子部員にぷれいさせたい)