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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その184

『博士ショップ』は、中野ブロードウェイにある。



・・・・「木郷さんっ!準備はできましたか?!博士!!遅いですよ!!あれほど遅刻しないようにと言ったじゃありませんか!!....はいっ、皆さんおはようございます!!」

今日も薄井幸子(28)はハイテンションだ。

「お....はようございます....」「おはよう....」
ぢぢいにもかかわらず血圧の低い博士(56)と、独身男の例に漏れず朝抜きで元気の無い木郷君(27)が応えた。
「元気がありませんね!!もう一度はいッ、

『おはようございますっ!!』


腹の底から突き上げてくるような薄井の声が、魔窟じゅうに響き渡った。
気おされた博士と木郷君もそれに半ばヤケクソ気味に追従した。

「はい、それでは皆さん揃った所でオペレーションマニュアルに沿って朝の掃除に取り掛かりましょう。今日の担当はトイレが博士、木郷君は店舗内、私がバックヤードでしたね」 「あ、あの....民子さん?」恐る恐る問いかけた博士の耳に、落雷が轟いた。

・・・いい加減人の名前ぐらい覚えてください!!で、何ですか、博士?」
「(きーんきーん)い、いやその....トイレ....といえばパブリックスペースじゃと思うのじゃが....いつもは掃除のおばさんが...」「甘いっ!!」
薄井がピシリと言った。
「お客様をお迎えするのに最も大切な場所はどこか?かの○ーソンのインスペクションシートを見ると、トイレのチェック項目に実に5ページを割いているんですよ!12ページのうちの5ページですよ!!まず清潔なトイレなくして顧客なし!自ら率先して綺麗にする心がけぐらいなくて、どうしてお客様をお迎えできますか。判りましたかっ?!」
「は、はい....」
「木郷君もよろしいですね?『もてなしは1にも2にも清潔な店舗』ですよ。いいですね?それでは早速始めましょう。解散っ!!」

....いいたい事だけ言い終えると、薄井は猛然とバックヤードの整頓に取り掛かった。

「....博士....どうするんです?これでもう1週間目ですよ...」
「うむう....これほど逆の作用が現われるとは予想もしなかったぞ。自然とは正に偉大じゃ。われら科学の尖兵がその持てる理論を刃として立ち向かっても容易に敗北を認めその正体を白日の下に晒すことを許そうとしない。まことに『科学は重き荷を背負うて千里の道を行くがごとし』じゃ、のう木郷君」

最初は博士の指示で嫌々装着した『やりツボ名人-メイドさんVer.”ぐるぐる眼鏡”』だったが、今では薄井のお気に入りのアイテムと化していた。どうやら薄井の場合、この眼鏡によって励起されたのがGABA受容体ではなく、脳下垂体前葉だったというのが博士の推測である。これによりFSHの分泌が過剰になり、だが元々虚弱体質の薄井は性腺がこれに呼応できず、さらにフィードバックでFSHの分泌が増え.....
「....つまり、いま民子さんはいわば更年期のオバヤ..」

「は、はんにゃっ?!」
脱兎のごとくトイレ掃除に向かう博士であった。・・・・

....その185へ続く(キツキツ度数全開)