短期集中連載(笑)
....厨房のそこかしこで、小爆発が発生した。 下水管が破裂し、業務用洗剤のボトルから濃縮液が飛び散る。 野菜置場からも、冷蔵庫の背後からも噴煙が上がった。 もちろん、決戦中の烈士と格闘士も運命を共にした。...... 「さ、撤収撤収」 あっさり博士は言った。 「....博士....」 「ん?何じゃ?木郷君」 例によって例のごとくの爆発で、正気を取り戻した木郷君がシンプル極まりない質問を博士に浴びせた。 「....今のはなんですか....?」 「何ですかって、決っておろうが。自爆装置じゃよ。いやぁ中々いい仕合いじゃったのう木郷君」 「....んなもんがあるなら最初から使えばよかったじゃないですか?!」 「店を破壊しかねんからのう、できれば使いたくなかったんじゃが....でもまあいいじゃろう、責任は装置のスイッチを押した木郷君、君にあるのじゃからのう」 「き、きったねぇ....ん?....」木郷君はあることに気づいてニヤリと笑った。 「博士....あの烈士一族....あれ、博士の開発した『ちうちうまうす2号』でしょう...」 「さ、さぁ....記憶にないな」 「そんなこといって、博士....」木郷君は店内に歩を進めた。 「お、おい木郷君....」 「ほらあった」木郷君が指差す先に『博士』と書かれたウェイティングリストがあった。 「何か変だと思ったんですよねぇ....博士はあれを『オリジナル』だなんて呼んでるし....。それに初めて来たという割にはウェイトレスさんの制服にやたらと詳しいし、それにほら、この日って『2号』でブロードウェイの壁をブチ抜いた日じゃありませんか。あの日博士はそいつを連れてどこかへ出かけたでしょう?あれから僕、『2号』を見てないですもん。『コントローラで呼べば地球の反対側にいても地殻突き破って還ってくる』なんて言ってた割には戻った様子もないし、これはなにやら実験の匂いがするなと」 「う"....妙なところに勘の利く奴じゃのう、君は....まあいいじゃろう、そういうわけで木郷君、君とワシとは一蓮托生というわけじゃ。あの店長にも身元は明かしてないわけだし、今我々がなすべきことはわかっておろうな」 「はいはい、ダッシュで離脱ですね!」 「そういうことじゃっ」 .....相変わらず逃げ足だけはヂヂイと思えない博士であった。・・・・ 「結局博士、”ぐるぐる眼鏡”の実験は未遂に終わりましたね」 「君は実験を犯罪か何かと間違えておるのかね...そんなことはないぞ、ほれ今このとおり、被験者がここにおるではないか。のう民子さん」 「(幸子ですけど....)....え....私....ですか....」 薄井幸子(28)は少し尻込みしたが、ハーマイオニーのコスプレには眼鏡も似合うかもしれない。そう思ってかけてみた。 「どうじゃ、民子さん?」 「どうもこうもございませんわ」 「民子...さん?」 「失礼ですけど、わたくし、薄井幸子と申します。民子などという名前ではございません....それにしてもこのお店もずいぶんと汚れておりますわね。そうだ、今日は皆さんと掃除をいたしましょう。はいっ!博士!!ボサッとしてないで箒と雑巾を持ってきなさい!!木郷さん!!貴方は奥の倉庫を速やかに片付けてくださいね!!!」 「・・・・」 ”ぐるぐる眼鏡”の力を得て、どういうわけか突如として有能かつ厳格なメイドさん....というよりは執事に変身した薄井にこき使われ、夜中まで掃除をさせられる2人であった。.... ....『博士ショップ』は、中野ブロードウェイにある。 |
....その160へ続く(※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・仮想動物とは一切関係がありません。
くどいようですけど。)