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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その158

・・・・電灯色の照明が落とされ、レストランの周囲は漆黒の闇に包まれた。
売上げ計算を済ませた店長が通用口から出てきて、博士(56)と木郷君(27)を出迎えた。
「明日の開店時刻は午前11時ですので、仕込みが始まる午前8時頃までによろしくお願いします」
「わかりましたぞ」
「では、失礼します」
家路を急ぐ店長の背を見やりながら、博士が言った。
「さて、とりかかるとするか。木郷君」
「とりかかるってったって....持って来たのはこの変ちくりんなアンドロイドだけですよ。こんなもんが役にたつんですか?」

木郷君はケージの中から、妙にニヤついた目をし、なぜかオールバックの髪型をした猫....の様なモノ....を取り出しながら言った。

「馬鹿もん!これこそ捕食←→被食の生態学を追求してワシが開発したげっ歯類捕食特化猫型アンドロイド『ブチねこ2号』じゃぞ。ほれ、試しに攻撃じゃっ」
そのアンドロイドは博士の命令に従って、木郷君に向けてパンチを繰り出した。

(何やってんだ、こいつ....)
「....全然効きませんよ。博士....」
「それはそうじゃろ。実際にはこのオプション、『ミッキー・グローブ』を装着して使うのじゃよ。さて、百聞は一見にしかずじゃよ木郷君。これをそいつの前足....手....うーむ....どっちでもいいや....に嵌めて放してやってくれ」
「わかりました....ほれ行け」
木郷君が手を放すと、アンドロイドはさも気取った様子で厨房へと歩を進めた。

....ほどなく、一匹めのネズミと遭遇した。
目が合った瞬間、ネズミは相手が猫型にも拘らず旺盛な戦闘意欲を示し、あまつさえ攻撃に出てみたりした。
「あっ....攻め込まれてますよあいつ....大丈夫なんですか博士?」
「まあ見てろ。すぐに終る」
妙に自信タップリの博士の言葉が終るか終らないうちに、アンドロイドが途方もなくノロいパンチを繰り出した。ネズミにはかすったかどうか....

....だが、ネズミは物凄い勢いで後方に吹っ飛び、壁に激突して気絶した。
「・・・・」
「どうじゃ木郷君」
「どうって....全然入ってませんよあのパンチは....なんで...?」
「そこがあの『ミッキー・グローブ』の凄い所じゃよ。あれを付けたブチねこ君にパンチを貰うと、相手のネズミは八百長をせざるを得なくなるのじゃ」
「や、やおちょう....」
木郷君は、あまりの事にアングリ口を開けたまま二の符がつけない。
「それ、ミッキー!倒すべき敵はまだまだ沢山おるぞ!連戦連破して世界の頂点に立つのじゃ!!勇利なぞはお前の前座、ゆあざきんごぶきんぐす!!」
『ミッキー』は軽くステップを踏みながら奥へと進んだ。ミッキーの眼前に次々と現れるネズミ達。だがミッキーの眠っちゃいそうなほどスローなパンチが虚空を切り裂くたびにある者は腹を押さえて悶絶し、また大仰に後ろへぶっ倒れる。そうしてミッキーは13匹を苦もなく倒していった。

....だが、快進撃は14匹目の対戦相手で止まった。・・・・


....その159へ続く(あの咬ませ犬は今いずこ...)