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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その150

....だが、事態は急転した。
翌日の夕方、『博士ショップ』に電話が入った。
あの...私月野瑠璃の母親ですが....ルリがそちらにお邪魔しておりませんでしょうか?
「ああ、ルリ君のお母さん....いや、今日はこちらにいらしてませんが....」
そうですか....あの子、『ポルナレフを探してくる』といって飛び出していったきり、まだ帰ってこないんです....そちらの電話番号がルリの携帯に入ってたもんでお電話したんですが....
「何と!ひょっとしたら....」
何か、お心当りが....?
「大丈夫ですぞお母さん、ルリちゃんもポルナレフも私が連れてまいりましょう。またご連絡します。では」
「博士、どうしたんです?」
「こうしちゃおれん、木郷君。例のアパートへ行くぞ!!そのバッグを頼む!!」
・・・・

・・・・1時間後、2人は昨日のアパートの前にいた。
「灯りがついてますね、どうやら人がいるようです」
「ということはルリ君もいる可能性が高いな」
「どうします、博士?とりあえずピンポンダッシュでもかましますか」
「小学生か君は....犬だけならともかく、ルリ君がいっしょだと話は別だ。迎えにいったはいいが監禁されとるということも考えられる。よし木郷君、バッグから『MagicWand』を取り出してくれ」
「博士....ここは警察を呼んだほうが....」
「木郷君!科学は何のためにあるのじゃ?!」
「は、はいっ!『人類の幸福』のためですっ!」
「よろしい。幼い女の子の幸福のために科学の力を見せてくれよう」
「昨日と言ってることがまるっきり違うじゃないですか、博士....下手をすると我々が器物破損・家宅不法侵入で犯罪者に....」
「心配するな木郷君。栄光は君の頭上にある。骨は拾ってやるぞ」
「.....(やっぱ俺かい....)ええい、エネルギー充填、狙点固定!!」

ヤケクソになった木郷君が、ドアロックに向けて光学追尾式選択型量子化機『MagicWand』のねらいを定めた。「エネルギー充填率70%、80%.....」
「はて、何か忘れとるような気が....なんじゃったかな」
博士が首をかしげた。量子化、照射、音波、超音波、共鳴.....「はっ!!待て木郷く..」「発射!!」

KYYYYYYYYYyyyyyyyyn

「・・・・・・(は、はかせ、いまのはなんです)」
「・・・・・・(木郷君、笛じゃよ笛)」
「・・・・・・(ふえですか?)」
「・・・・・・(ルリ君に預かっとったアレじゃよ、アレとMagicWandの超音波ビームが共鳴を起こしたんじゃ)」
「・・・・・・(発射する前に思い出してくださいよ)」
「・・・・・・(すまんすまん、つい出来心で)」
2人が不毛な筆談を交わしている間に、ドアの向こうから3つの影が姿を現した。

「なんだなんだ、表が騒がしいけど....?あれ?ドアが壊れてら」
「あっ、博士!」
ポルナレフと、そして優しそうな青年と一緒のルリだった。
「・・・・・・(ルリ君!無事か?!)」
「無事も何も....犬好きのこのおにいちゃんとおしゃべりしてたのよ。楽しかった〜」
博士と木郷君は顔を見合わせ、残った紙にデカデカと書いた。

「これが....若さというものか」......

......数日後の『博士ショップ』にて。

「しかし博士、科学も時にはオカルトに敗北するのですね」
「何を言う木郷君、私の科学力があったからこそ位置の特定ができたのじゃ、そうだろう民子さん」
....は、はい.....(幸子なんですけど)...

瑠璃のお母さんから受け取った報酬で、念願のハーマイオニーのコスプレ衣装を仕立て、味気ないパーティションをホグワーツ風にアレンジしてみた薄井だが、相変わらず何を着ても薄井は薄井にしか見えない....

「とにかくじゃ、生身のペットなぞ飼うからこういうややこしいことになる。時代はロボットペットなんじゃ」
「何をトレンドからズレたこと言ってるんですか....○IBOなんてもう何年も前に開発されてるじゃありませんか」
「あんなのはロボットじゃないぞ、木郷君!大体あのメーカーは6年経ったら必ず壊れるように作っておるではないか!あのような市民の幸福を無視した会社に任せておけん。私の作った小型愛玩動物『ちうちうまうす2号』はカルノー機関搭載で寿命は永久、しかもほら、このコントローラで呼ぶと地球の裏側にいても一直線に飼い主の許へ戻ってくるのじゃ」
「へえ、ホントですか....(ぴっ)」

どっこぉぉぉ〜んんっ

....大音響と共に、向かいのガンショップの壁を突き破って体長3cmほどの小動物が飛来し、カウンターの上にちょこんと座った。
「....しかもじゃ木郷君、こいつは単性生殖機能まで持っておって、ねずみ算式に増殖するぞ。どうじゃ彼女もおらん寂しい独身男の部屋に一匹?」
「結構です!!」
....まあ....カワイイ....
幸子が手にとって撫で撫でした。
「・・・・」

....『博士ショップ』は、中野ブロードウェイにある。

....その151へ続く(また炸裂オチかい....)