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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである(?)−


その115

東田伸昭(16)は、己の能力を図りかねていた。

東田は小さい時から、近所の太極拳教室に通っている。彼の中では、あのゆったりとした動きは、武術というよりも夏休みのラジオ体操と同列だった。

教室の先生もそのように教えていたが、こうも言っていた。
「気をぶつければ、力を入れずに敵を倒すことができる」

一日、散手(組手)の途中で東田は、先生に「試しに気を入れてみなさい」と言われた。
いつものように、ただ少し発剄(気をぶつける)の要領で先生の胸板に双按(両掌での打撃技)を入れた。

先生はそのまま10数m後方に吹っ飛び、壁板に突き刺さって悶絶した。

その日はいつのまにか練功された己の力に戦慄した。
だが同時に、力の正体について興味も覚えた。
「当たる面積が大きかったから、相手を飛ばしてしまったんだよな....」

東田は学校の帰り、電車の中でふざけていた。
そして何故か、友人とシッペ合戦をするはめになった。
友人の最初の一撃で、右手が痺れた。これでは力が入らない....
「....よーし、発剄を試してみよう」
先日と同じ要領で、今度は2本の指を振り下ろした。

”さくっ”

振り下ろさなかったもう一方の手には、友人の手が残った。
友人も東田も、ぼんやりとそれを見つめていた。




....その116へ続く(周りのお客様のご迷惑ですので....)