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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その6

椰子の木々の合間を抜けていく地中海性気候の風が、コテージに寝そべる本庄孝浩(21)の汗をぬぐっていった。いまどき珍しい貧乏学生の彼にとって、これが乾坤一擲ともいえる大出費の末にかち取った初めての海外旅行だった。本当は海外における東洋医学の普及度合を見学するというのが旅の目的だったはずだが、もうそんなことはどうでも良くなっていた。

とはいえ、もちろん彼は知己でもないが、学校の大先輩がこの地にセミナーを開いているだけあって、西海岸の中でも特にこの街は東洋医学が自然に受け入れられているようだった。少し街を歩いただけだが、オリエンタルハーブやアキュパンクチャのオフィスが結構そこかしこに見られるのは新鮮な驚きだった。

昼は仕事、夜は都内の東洋医学系の専門学校に通う学生という2重生活が続く中で、本庄の若い肉体からはすっかり体力と気力が奪い去られていた。それが、ここ西海岸に来てリラックスした生活を送るうちに、みるみる回復していくように感じる。

ふと、本庄がベッドサイドのインフォメーションを見ると、

"Oriental Massage -Sure to makes your body&soul fresh!"
call no. #xxxxxx"

と書いてある。興味を持った本庄は早速電話をしてみることにした。
「ひょっとしたら、自分も習った技術に、このホテルで出逢えるかもしれないなあ....それにキレイなオネエサンだったらもっといいなぁ....」

学術的興味半分、スケベ半分で待つ本庄の眼前に現れたのは、褐色の完璧にビルドアップされた肉体と、輝くような白い歯、それにこぼれるような笑顔を持った、ブライアンと名乗る男性マッサーだった。思わず圧倒されてしまいそうな本庄だったが「ホテルに入ってるマッサーだから、間違いはナイだろうな....」と楽観することに決めた。

実際ブライアンのマッサージは絶品だった。本庄の技とは違ったが、彼の手にかかると筋繊維の1本1本までほぐされていくようで、いつしか本庄はうとうとと眠りこけてしまった。

ふと、本庄はナマ温かい感覚に目を覚まされた。うっすらと目を開けた本庄の目には、彼の股間中央に位置するブライアンの頭頂部が映った。瞬時に状況を認識した本庄は、慌てて飛び起き部屋を脱出しようと思ったが、

気持ちがイイので

そのまま放っておくことにした。

風は2人の間を優しく流れていった。

....その7へ続く(避難も轟轟?)