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短期集中連載(笑)

−この物語は、フィクションである−


その4

紺碧に輝く珊瑚礁の浜辺を目の前にして、ようやく吉沢喜一(22)ら3人は「この島に来てよかった・・・」と思いはじめていた。

「大丈夫ですよ、この時期の航路はベタ凪ですから。」宿のオヤジは大嘘つきだった。通常好天でも28時間かかるフェリーは、台風もかくやと思われるような猛烈な低気圧の直撃を受け、ゆったりたっぷりのんびりと大波に揉まれて、4時間以上も多く船旅を満喫させてくれた。
吐瀉物を撒き散らかしながら船室の端から端へと横転する吉沢らは、もはや旅の楽しさなど微塵もなく、屠殺場行きを待つばかりの家畜のような気分であった。だがそれもこの海を見て、全て報われた気がする。それほどに心洗われるような美しい海であった。

早速着替えて泳ごうとするところへ、海から一人の男が浜に上がって、声をかけてきた。ゴルゴ13を髣髴とさせる角刈り・レイバン・褐色のドカ焼けに、吉沢たちはかなり引いた。だが、ゴルゴは意外にふれんどりーなヤツだった。
「おうニイちゃん、こっち来いや。タコ食わしたる」「ほれこれが特別天然記念物のサラ貝だ。喰ってみろ」「よし、これから沖に出るぞ、ついてこい...なに?泳げない?しゃないなぁ、おら、この発泡スチロールでも持ってけ」「を〜い、あんまり遠くにいくなよ、そっちはこないだオレが土左衛門引っ張りあげた瀬戸だぞ〜」「よおし、これから砲台をみせてやろう。オレが切り開いた道があるから。ロープもってこい」「なんだこれくらいの崖登り、若いのにだらしないなぁ」
ゴルゴはよく喋り、よく食い、よく吉沢達ニワカ部下を叱咤して、島のそこら中を強行軍よろしく引きずり回した。3人が疲労困憊してジャングルの中でへたり込むと「じゃあ、おれは先に宿に戻っているからな〜」と、颯爽と姿を消した。

後に残された吉沢たちは、迫りくる夕闇の中でようやく

自分達が遭難した

ことに気がついた。

....その5へ続く(も、もうカンベンして..)