短期集中連載(笑)
−この物語は、フィクションである−
その1
例年のごとく、新人歓迎会は滞りなく正統に、男臭く終わった。
途中でゲロの海に轟沈したヤツや、店の調度を破壊しまくった挙句に、疾風のごとく救急車で病院に去っていった愚か者を除けば、いつもに比べて生存者は多かったともいうが、本当の所は知る由もない。
平山育男(20)は、日の光の下で見れば恐らくそのおぞましさに失神するであろう、グリーンラメのソファに落ち着かなく座りながら、なんで己がここにいるかを必死に反芻しようとしていた。
「結局今年もここかぁ」
「しょうがないだろ、まだボーナス前だし」
「そんかわし、この辺じゃ生okなのってここぐらいですよ」
「ん〜くおりてぃ考えれば、そのぐらいのサービスはやむを得んな」
先輩たちの訳知りな会話がアタマの上を通過していく。そう、ここはこの地区ではよく知られた風俗街の一角に有る、かなりくたびれた店なのである。平山は歓迎会の後、半ば拉致されるかのようにこの店差し向けのワゴンに押し込まれ、ここまで連れてこられたようなのだ。
「さてと、お呼びかな」
「お先にー」
先輩たちがいなくなると、平山は急にアセってきた。経験がないことを先輩に内緒にしたのは正解だと思ったが、自分がいかにも場違いな存在にみえてしまう。「このまま帰ってしまおうか・・・」と考えたが、実行に移す間もなく平山にもお声がかかった。
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
薄暗くどぎつい照明の廊下を歩いていくと、平山のお相手となる女性が、奥に座ってニッコリ微笑んだ。
「こんばんは、
仁科明子です。」
彼は人生というモノの正体を見た気がした。