青島←日南線→串間 | ||
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私的# | 239 |
駅名 | 飫肥 | |
線区 | 日南線 | |
捕捉日 | 1985/10/09_21:30頃 | |
種別 | 黒四角 | |
タイトル | 「静かなたたずまいの城下町」 | |
他スタンプ | − | |
串間の項でも書いたように、もはや終列車間近の日南線で、飫肥駅を落とすことは確実であった。そう、マトモな手段を以ってしては.... 意を決した筆者は、出発した上り宮崎行きの車掌に言った。 「あの....すみませんが.... 飫肥でスタンプ押したいので 待っててもらえませんか?」 筆者なりに勝算があったのだろう。 ほとんど夜中のローカル線上り、車内はほぼ回送状態である。「30秒停車のところを1分にしてもらえれば十分間に合うはずだ.....」 だが、それは正確運行を第一とする鉄道の現場に対して、ありうべからざる要請であったのは間違い無い。 また、ある程度は回復の兆しがあったとはいえ、高松の項でも述べたように、列車入線番を尋ねただけで怒号を以って応じられるほどに当時の国鉄は荒んでいたというのが筆者の偽らざる実感である。またしても虎の尾を踏んだか....正直言ってから筆者は後悔した。 「あーそうですか。申し訳無いんですが列車を遅らせることはできませんので.....」 意外に丁重な、だが至極当然な車掌の反応だった。 だが、それに続く言葉は筆者が耳を疑うばかりのものだった。 「....どうでしょう、これから無線で飫肥駅に連絡してスタンプを押しておいてもらいますから、それをお持ち頂くということではいけませんか?」 良いも悪いも無い。ハッキリ言って外道な鉄道の旅をしてきて、これほどに親切な対応をされたことが無かった。「スタンプ帳に収集する」ことを至上としていたがそんなことはどうでもよくなっていた。 しばらくの後、列車はすっかり宵闇の帳が下りた飫肥駅のホームに到着した。 その夜の向こうから一枚の紙片を大切に持ってくる初老の助役さん、そしてその紙が車掌さんの手を経て筆者に渡されたときの感激を、今もって鮮明に思い出せる。筆者の印象では駅舎はまるで昔からそこにある田舎の民家のようで、助役さんはその家に住む親切な主のように感じられた。 千数百キロの彼方にある城下町、そこを訪れることは二度とないかもしれないが、もしかなうのであればゆっくりとその町を歩いて見たいと思う。 |