1 始めはやっぱり小さかった
「うわっ何これ?!小っちぇ〜」
「字が見えないよ、よくこんなで打てるねー」
「指の方がでかいじゃん」
・・・職場や学校で愛機PalmTopPC110(以下PT110と記す)を開くたびに、何度こんな言葉をかけられたことか。言われる本人はちょっと誇らしげでもあったり、こそばゆくもあったりしますが、実は半ば呆れ顔で見ている人がほとんどなのでしょう。
そんな私も実は、最初にこの世界最小のIBMPC-ATアーキテクチャをもつカラーPCに触れた時は、あまりのキーボードの小ささに愕然とし、ホントはこのマシンを買いに行ったにも拘らず、隣りにあったThinkPad530に落ちてしまったという経緯があります。(今では考えられないが、当時は価格的に普通の型落ちノートPCよりPT110の方が遥かに高かったというのも大きな要因だった)
その後知人のつてで定価の10分の1まで下落したPT110を入手することができ、半ばおもちゃ的に「GPSマシンとしてでも使うかな」などと考えたりしていました。しかし今のように、掲示板への書き込みや出先でのメモ取り、果ては学校の図入り板書にまでキーボードを叩きまくるとは夢想だにしていませんでした。
しかし昨年辺りから学校の資料が増え、とてもカバンにB5ノートを入れるようなスペースが無くなってしまったのです。また、学校にPCを持ち込み始めてからノートの整理がやりやすくなったのはよかったのですが、静かな教室にIBM製HDDの唸りが響き渡るのは、あんまり気持のいいことではありません。それに2時間と保たないノートPCのバッテリーでは、皆の目をはばかりながらAC電源を取り回さなければなりません。こうした事情からPT110を持ち出しメイン機として使用せざるをえなくなってしまったのです。
しかし「窮すれば即ち通ず」とは良く言ったものです。それこそ最初は人差し指一本で叩く「超初心者タイプ」だったのですが、それが左右指2本ずつになり、3本になり、ついにはほぼブラインドタッチが可能なまでになってしまいました。
2 意外に使いやすい
左がPalmTopPC110・右がThinkPad535
ひとつ私が幸運だったのは、私が根っからのThinkPadユーザーであったことです。写真を見ていただくとおわかりいただけると思いますが、PT110と私が今使用しているThinkPad535は、Fnキーと右Ctrlキーの位置を除いてキー配列が同じです。Fnキーは特殊な用途のキーだし、人にもよると思いますが私はほとんど右Ctrlキーを使う機会がなかった(最近になってこの位置にあることが便利であることを改めて発見した)ので、その意味では大きさこそ全く違うが、同じキーボードであるといえます。元々ThinkPadのキー配列は、それ以前にあったIBM
PS/55のユーザーがサブマシンとして使いやすいように設計されたという話がありますが、こうしたユーザーへの配慮はIBMという企業の基本姿勢なのでしょう。
大体の位置の当たりをつけて指を伸ばせば目的のキーに命中する、それでカラダがキーの位置を覚えていくという案配でした。こうした好循環が、早打ちが可能になった一つの要因です。
また、PT110のそれが、本当の「キーボード」であったことも見逃せません。ポケットボードや、熱狂的なファンの方には申し訳ないのですが、HP200LXなどのような「ボタン」はサイズや隣りとのピッチ以上に的が小さく、叩き損ねが発生しやすいという欠点があると思います。おそらくはコストが物凄くかかるのを承知の上で、本来のキーボードの姿をあそこまで縮小して商品化してしまったIBMとライオスシステムには、ただただ感心するばかりです。
でもやっぱり小さい^^;
3 とにかく叩いてみる
では、実際にブラインドタッチを実現するにはどうしたらいいのでしょうか?私の場合を考えてみると、以下のようなことがポイントだったような気がします。
1)文字や単語に相当する「手の型」を意識する
これはPT110に限らず、全てのキーボードでブラインドタッチをするために必要なことだと思います。
どなたでも最初は、まず目的の「キーの位置」へ指を持っていくことを意識すると思います。わたしもかつてタイプライターで練習した頃は、「qazqazqazwsxwsx...」なんてやっていたものです。
しかし上達してくると、個々のキーを意識することはほとんどなくなり、代わりに、ちょっと意識して自分で観察していると、ある語句を入力する時に、自分の手が一定の「型」をして、指だけでなく手全体でキーボードを叩きにいっていることに気付くでしょう。自分が入力する文章に良く出てくる単語の「型」ができることで、入力は飛躍的に速くなります。
「保存(Alt+F+S)」
ショートカット使用中の
手の「型」
中指−人差し指
\ /
親指
の三角形ができている
あとは手首をひねるだけで
3つのキーが叩ける
簡単な例ですが、
”思い”
という単語を入力することを考えてみましょう。これを指一本で入力するとなると、指はO→M→O→Iという4つのキーを移動することになり、それに従い手全体も3回動くことになります。これでは時間のロスになりますし、なにより手全体が頻繁に動くことで的を外しやすくなり、ミスタイプの原因となります。これをPT110の場合中指と人差し指の2本を使い叩くことにすると、
1)中指で"O"
2)人差し指で"M"
3)中指で"O"
4)中指で"I"
となります。この間手の移動は3)→4)の1回だけ、しかも人差し指と中指の間隔はO←→MとM←→Iでほとんど変わりませんから、両方の指の位置を固定したまま、手首をほんの少し傾けただけで目的のキーに達することができます。どちらが速く確実に叩けるかは言うまでもありませんね。
こうした「型」を増やしていくことで、より速く入力が可能になると思います。それには既成のホームポジション依存型ブラインドタッチに囚われず、自分でキー上の位置感覚を養うことが大切だと思います。
2)正確に叩こうとしない
1)と矛盾するようですが、いかに正確に叩こうとしても所詮は超ミニキーです。間違えないことを意識すると、却って指が萎縮し、ミスタイプを発生させる原因になります。それよりは、間違えたらさっさと諦めてBSキー連打かESCキーで消去...ぐらいの気持ちでいた方が、結果として入力速度を上げることになります。
3)入力は「指3本と2本+1本+α」
なんだか変な表現になりましたが、私がPT110で入力する場合、基本的な文字入力は両手の人差し指・中指・薬指で行っています。一般的な教本では指の割り当てが
1234567890ー^
QWERTYUIOP@[
ASDFGHJKL;:]
ZXCVBNM,./¥
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
左左左左左右右右右右右右
小薬中人人人人中薬小小小
だったと思いますが、大まかなところでは
1234567890ー^
QWERTYUIOP@[
ASDFGHJKL;:]
ZXCVBNM,./¥
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
左左左左左右右右右右右右
薬薬中人人人人中中中中中
となっています。
これに右手の角度や叩いている位置によってENTERキーを薬指か小指のどちらかが叩きます。
スペースキーは大体右人差し指が叩くことになりますが、右手が右端の方のキーを叩いている時は、左手の人差し指で叩くことも有ります。
周囲部の特殊キー(BackSpace・Del・ESC・全/半・カーソルキーなど)は大体両手中指がそれぞれ担当します。
親指は基本的に使いませんが、後述するショートカットキーの際に左Altキーだけを左親指で叩いています。この方が頻繁に使用するコピー/ペーストやファイル保存などのショートカットキーの「型」が造りやすいと思ったからです。
左写真が左手で叩いているところ・右写真が右手で叩いているところ
4)指の「腹」でなく「先」でなく、「角」で叩く
一般的なキーボードですと、だいたい「指先で叩く」ようにすればきれいに1文字入力することができます。
しかし、PT110でその叩き方をすると、かなりの確率でとなりのキーも一緒に叩いてしまいます。確かに私は生来「指が太短い」とよく言われてはいましたが、しかしいくら指が細い人でも、かのキートップより指先が小さいという人はまずいないでしょう。
これに対して考え出した苦肉の策が「指の爪の角で叩く」でした。正確には「指の爪の角っこ近く、逆剥けができる辺りのやや指の腹寄りで叩く」のです(長ったらしい)。
ここの部分は指の皮膚の中ではかなり硬いところなので、キーを叩いた時に肉がたわむことが少なく、そのため隣りのキーを押す確率が低くなります。
ある程度慣れた現在では、キー位置を正確に捉えられる左手はこの方法をあまり使用していませんが、右手中指ではいまだに有効な方法です。
4 ショートカットキー様々
今日ではアーキテクチャの違いに関係なくGUIがOSの必須条件となった感があります。かく言う私も、PT110の普段の使い道をみればDOSで十分なのですが、やはりネットワーク標準装備の魅力には勝てず、Windows95をコンパクトフラッシュに入れて運用しています。
しかしPT110が登場した1995年はまだDOS/Win3.1の時代で、マウス以外のポインティングデバイスもまだまだ技術的に試行錯誤の最中にありました。PT110にスティックポインタとパッドの両方が装備されたのも、時代を象徴しているような気がしないでもありません(IBMにはメモパッドをポインティングデバイスとして使用する意図はなかったようですが)。スティックポインタにしても、完成度が当時のThinkPadのTrackPoint3とは雲泥の差で、まったく狙った所にポインタが止められない、はっきり言って「なんでこんなもん付けたの?」というのが正直な感想でした。
頻繁にPT110を使用するようになって、真ん中が凹んでいるために使いにくいスティックに、写真のように(わかりにくいですが)TrackPoint用のゴムの先端を丸く切り取って瞬間接着剤でくっつけ、これでかなり使いやすくなったのですが、ThinkPadユーザーとしてはポインティングデバイスのためにいちいちキーから手を放すのは結構苦痛なものがありました。
そんなときに、知り合いのリブレット使いの方から、ショートカットキーをいくつか教えてもらいました。以来、何かの機会に発見したり、また教えてもらったりして使用する種類が増え、今では私の用途内では大抵のことがポインタを動かさずにできるようになりました。以下にそのいくつかを記します。覚えるのが面倒そうですが、流れの中で繰り返し使っているうちに覚えてしまうものです。なお、全てのアプリケーションで動作する訳ではありません。
※Alt系
Alt+F+S:
ファイルの保存
Alt+F+O:
ファイルを開く
Alt+F+X:
アプリケーションの終了
Alt+F+C:
エクスプローラの終了・MDIウィンドウを閉じる
Alt+E+C:
コピー
Alt+E+T:
カット
Alt+E+P:
ペースト
Alt+F4:
アプリケーションの終了
Windowsの終了
Alt+Shift:
日本語入力システムの切り換え
Alt+Space+N:
ウィンドウの最小化
Alt+Space+X:
ウィンドウの最大化
Alt+Space+M:
ウィンドウの移動(→カーソルキーで移動)
※Ctrl系
Ctrl+ESC:
スタートメニュー(=Windowsキー)
Ctrl+S:
ファイルの保存
Ctrl+C:
コピー
Ctrl+X:
カット
Ctrl+V:
ペースト
Ctrl+F4:
MDIウィンドウを閉じる
Ctrl+F10−その後→F1:
単語登録
※Shift系
Shift+F10:
右クリックメニュー(=コンテキストメニューキー)
ほかにもいろいろあるようです。ご存じの方、教えてください。
5 単語登録の嵐
いくら頑張っても、打つ方には限界があるのですから、あとは頻出単語を登録するのが近道です。特に私の場合医療系の専門学校に通っているので、専門用語が多く、その都度漢字を探していたのではとても板書など間に合いません。変換できない語句に会ったら、即登録です。幸い、Windows95標準のMS-IME95には単語登録画面を呼び出すショートカットキーが用意されています(前出)。
しかし、この登録辞書を編集するツールがありません。どなたかご存じないでしょうか?
6 最後に
PT110の液晶は640x480のVGA表示能力を持つ、4.7インチDSTNカラー液晶です。カラー液晶の小型化が難しかった時代に、このサイズの液晶パネルを実用化した技術は驚嘆に値します。しかしながら最初慣れない頃は、やっぱりユーザーとしてはかなり見づらいと言わざるを得ません。
写真は同じVGA解像度で8.4インチの液晶を持つThinkPad530CSと、同じ文字サイズの設定で表示させた場合のイメージ画像です。明らかに文字の大きさに差があるのが分かります。計算上は約56%の縮小率になります。
ところが慣れとは恐ろしいもので、いつのまにかこんなに小さい文字でも、そんなに苦痛には感じなくなってしまいました。しかしカラダの方は慣れてくれなかったようで、視力がかなり落ちてしまいました。
PT110に標準で搭載されるPIM「Personaware」の文字は24ドットフォントを使用しています。私はここまでデカくすることはないと思いますが、少なくとも文字サイズは18〜20ドットに設定し、「太字」にしておいた方が良いと思います。
機械の故障はパーツ交換で直せますが、カラダの故障は時に取り返しがつきません。健康に気をつけて、PalmTopPC110ライフを満喫しましょう。(笑)