CASIO S-KB-118P-A楽一専用USBキーボード(手書きボード)
manufactured & distributed by CASIO Inc.
諸元
キー配列 63 physical keys + 63 touch panel keys/JIS
メカニズム (may be)Resistive touch panel
I/F USB
備考 画面は手書きにも変更可能(らしい...ただし楽一接続時)
Junk Point 叩くよりツツク

確か1990年代バブル後期だったと思うが、蛭子能収画伯(だったか?)の連載漫画の一話で「公衆電話の受話器に装着する芳香・抗菌ネット」を製造する会社の商品開発会議(*)がネタになったことがある。

会議は「新しい商品をどんどん開発すべき。これからの時代は挑戦だ!」という革新派と、「いたずらに商品をいじるのは良くない。安心安定こそ利益をもたらす」とする守旧派のまっぷたつに分裂し、喧々諤々の論議が展開され、最後に「社長のご裁可を!」と固唾をのんでお言葉を待つメンバーに対し、社長が鶴の一声をブチかますのだ。

「んなの、どうだっていいじゃん。」(*)


....「ニッチだけど、安定した業種の企業」というのは、こういうものなのだろうか(←偏見です)。

で、そうした業種でも、世の中の動きによっては、「爆発的特需」というものが、本当にごく稀にやってくることがある。
本年2019年は、それが複数発生した珍しい年として、歴史に刻まれることになるかも知れない。
一つは、新元号制定に伴う「『ハンコ』業界と『カレンダー』業界の特需」、そしてもう一つは、消費税増税とダブスタ化低減税率制導入に伴う「『レジ業界』特需」である。

いずれも「成長はほぼ期待できないが、かといって需要がなくなることもまず考えにくい」という典型的な業界であろう。ゆえに今回のように、見たこともないようなビッグディールが唐突かつ至近に迫り来た時点で、事の重大さを認識してはいても、引き潮後の惨状を考えると、増産の為の設備投資を行なうのはリスク以外の何者でもない、と考えられたとしても、それは無理からぬことだろう。

結果として巨大な需要の波に突入してもまっとうな対策を打てず、レジ業界などは、トップメーカーであっても、糸色 文寸間に合わすべき納入期限である「2019年10月1日」を遥か通り越して、年明けまで納品が遅延してしまう....などという右往左往状態を呈することになるのだろう(2019/10上旬現在)。

キー配列
背面
カバーはタップビス止め。ツメは固くない

で、そうした企業が普段は十年一日の如く代わり映えのしないプロダクツを生産している...かというと、現実にはそんなことはない。当然だけど。

ただ、社会のパラダイムシフトを生じさせるような製品はおそらく出てこない。微妙〜な付加価値を追加しながら、地道〜に進化をしているものと思われる。
たとえば、この楽一のような「業務管理用コンピュータ」である。

「オフィスオートメーション(=OA)」などと声高に叫ばれていたイニシエの時代、業務の電子化における最大の関門はUIとスタッフのリテラシーのすりあわせであったわけで、その部分に各社は工夫を凝らしていた。それはキーボードやタッチ入力といったコンピューティングリテラシーが一般化し、汎用OS+アプリという構成によって専用機が駆逐されるまで、地味に展開されていた。

(上)おそらくメンブレンSW
(下)FnキーにはLEDが仕込んである。が、Win環境では点灯しない

「楽一」は、それまでの「手書き」というレガシーな入力方法をUIに取り入れた。
今日のタッチパネルを先取りした先見の明と言えなくもないが、それが吉だったか、凶と出たかは....今日その遺骸である本品「S-KB-118P-A」を手にしている筆者には、知るよしもないのである。

先の話と微妙に矛盾するかもしれないが、ペン入力が可能になったのは3代目のRX50から。当初は、タッチパネルが右側にあった模様で、その後、タッチキーボード化に伴って現在の位置になっているようだ。

残念ながら...というべきか、当然ながらと言うべきか、タッチパネルは専用機に接続した状態で使うのが基本と思われ、Windows機に接続した状態では、最大の特徴である手書き入力モードに切り替えることは出来ないようである。

タッチキーボードは抵抗被膜タイプか。触圧が小さいと反応しないことが多い。
もしくはタイプがある速度を超えると取りこぼすのか。そのようなことを考えつつ、効率的な入力方法を模索しているうちに...付属の電磁スタイラスを使用するほうが、両手タイプよりも確実かつ高速であることに気が付いた。
そして、手でのタイプは爪の先でトントンとタップすると、取りこぼさないことがわかった。

(上)Fnキー部/テンキー部/タッチパネル部が分離している
(下)Fnキー部の基板

ハードウェアキーももちろん用意されている。外部から見たところでは、おそらくメンブレンキーボードと思われる。

ハードウェアキーは、テンキー部分以外は特殊キーが多い。行挿入/削除/追加は反応しない。インターネット/メール/ガイド/メンテナンスキーは反応はしているようだが、アプリは起動しない。
ペン入力のパネルがキーボードの前面キーとのコンビでバックタブキーがあるが、これは機能せず、後退キーがバックタブになる。
01-20の機能キーは、Fn1-Fn20が割り当てられている模様。
BX-11などの本体に接続して使用している際には、「作業中の業務を示すキーの赤LEDが点灯する」という、正直言って余計だと思われる機能がついている。

Ctrl/Alt/Shiftはワンタイムロックタイプ。同時押しが逆にやりにくい。
また、存在しないコンビを押すと、ピーッというビープが鳴る。タッチパネルをタイプしてもピッと鳴る。
使用できないコンビネーションで問題となるのは、Ctrl+Escだ。タッチキーボード/ハードキーボードいずれもゐぃんキーを装備していないので、スタートメニューをキーボード操作で出すことはできない。

(上)タッチパネルはASCII配列。Ctrl/AltはLockタイプ
(下)タッチペンでの操作の方が確実

....とここまで、後半のレビュー部分の7割程度を、本機のタッチキーボードで書いてみた。
感度をチューニングし、エラー訂正機能を備えた今日のタッチキーボードと比較するのは酷かもしれないが、正直かなり疲れる。

ただ、他のタッチキーボードに関するレビューで述べた「手掌を高めのパームレストに乗せて、宙に浮かせた指でタップする」たたき方をするのに、本キーボードの陥凹したタッチパネル面は適しているかもしれない。

筆者としては、もう少しタッチセンスの感度が高いほうが望ましいと感じるのだが、当時の使用方法と、デバイスの性能を考えると、このあたりが精いっぱいだったのかもしれないとも思う。

いずれにしても、本体が存在しない(*)現在では、このキーボード本来の性能を実地に確かめることはできないのである。
どこかに落ちていないものだろうか....?>本体ww



おまけ

テン(?)キーのレイアウト
青キーは反応しても動作しない。
だいぶ手擦れているところがJJ



(注1)フィクションです。

(注2)フィクションです。クドいけど。

(注3)後継機は現在も絶賛発売中です。



(2019/05/14購入、2019/10/27記)

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