Topre RealForce106UB PJ0800
製造元 東プレ
諸元
キー配列 日本語/OADG106
メカニズム 静電容量スイッチ/30-45g変荷重スプリング
備考 I/F:USB
Junk Point お疲れの貴方に愛情1枚
世の人々には、新しいモノに次々と飛びついていく人と、気に入ったモノをとことんまで使い倒す人がいる。
筆者の場合、どちらかというと後者に属するのではないだろうか。
なんだかあちこちに手を出しては自爆しているこのコーナーの趣旨と矛盾するようだが、自分としてはそう思っている。

どこかにも書いたように、今はすでに過去の伝説と化している「ガリバー」PC-9801のユーザーだった筆者は、押し寄せるOADGの波に(心情的に)最期まで抗い、1991年当時PC-9801としても最早4〜5世代前だった80286のVX2を使い続けていたし、中国企業と化してからの品質低下が囁かれるかの炭団機を頑なに使い続けている(....ただし大和産の旧型機ですけど)。
そしてそこから派生したIBM製のビンテージ熱から、バックリングスプリングのクリッカブルなタッチのキーボードでないと手に合わない、できればTrackPointも....という事態になっていたのもそうであろう。

しかしそういうこだわりも、状況一つでコロッと変わってしまうのも筆者の特性である。

大反攻を目論んだ「98Mate」シリーズを目の当たりにした時は1日あ〜でもないこ〜でもないと思案した挙げ句に「ぷちっ」という脳内音と共に瞬間ツクモダッシュをかましてAT互換機に走ったし、ThinkPad一辺倒だったお買い物のラインナップに「おぢゃんく漁り」というテイストが加わることによって、他社製の銀色タブレットへ走ったりということもあった。

ひょっとすると「自分のスタイルはこうでなければ」というある種の抑圧意識が自分の行動を縛っていて、それが弾けたときに「祭り状態」が発生しているのではないかと穿ってみたりもするのだ。このコーナーを続けているのも、筆者自身を変化させるための動力源、というか言い訳の一つにしている部分も有るのではないかと思うのである。

....それはともかく、そうした方向転換の流れの中にあって、ここしばらくなかなか変化しないのが、HIDとしてのキーボードの嗜好である。....いや、「であった」というべきか。

筆者が日常業務に使用しているデータベースシステムは、もちろんキーボードオンリーでの操作も可能なのだが、基本的にはGUIである。
以前にも書いたようにそのシステムへのデータエントリーを高速かつ大量に行おうとすると、タイプとマウスカーソル動作を高速かつ一連の動作で行う必要がある。
また入力するフィールドの書式によって、全角かな/全角カナ/半角カナを頻繁に切り換えるから、US配列では役に立たない。
(Ctrl+u/i/o/pを使って変換するという手もあるが、これはHHKや、CapsLock←→Ctrl入れ替えで初めて威力を発揮すると考えているし、結局「変換」という操作を増やすことになるので、当初からワンキーで入力文字を指定する方が当然速い)

となると、ホームポジションから手を離さずに操作できるポインティングデバイスと10キーを含む日本語フルキーボードのコンビネーションは必須といえる。従ってThinkPlusキーボードまたは5576-C01は最善の、というよりほとんど唯一の選択となってしまうのである。
もちろんUltraNaviなどは無用の長物だし、最近のLenovo製キーボードの品質低下は個人的に看過できないほどに感じているので、必然的にC01がメインとなるのだ。そして職場で長時間TrackPoint付きのキーボードを操作していると、自宅に戻って普通のキーボードを操作しようとしても、ついGとHの間をまさぐってしまうのである。

そこへ降って沸いた....というかいつもの如く電脳窟での劇的な邂逅。さてどうすべきか....筆者は思案に思案を...というよりぢたばたした。
キータッチの感触は衝撃的なまでだ。だがしかし本格的なキャパシティブは筆者にとって未知の領域だ。ましてや体に染み込んだTrackPoint体質はそう簡単に拭えない。買ったはいいものの、結局死蔵...という今までのようなことも十分に考えられる。....

....結局その場はするーしたが、翌々日には自宅でぽちっとな、であった。

諭吉さん2人が飛んでいく、筆者にとっては超高価なこのキーボードのおかげで、今月も赤字必至の筆者宅の家計は火の車状態である。

しかも筆者は、自宅でもTrackPoint付きのModel-MであるType13を使っていた。
ドライバも入れ替えなければイカンし、マウスだけPS/2タイプのものしか持ってないので、変換コネクタを用意して、空きのないHubを配線し直さなければだし、キーボード+マウスのスペースを確保しなきゃだし...(ってこれはModel-Mがデカかった分問題なかったが)最近極度にモノグサになりつつある筆者には面倒な作業だった。

しかしそのタッチを前にしては大した問題ではなかった。指先の感覚が慣れてきた現在では「これはかなり速く打てそうだ」という感触がある。

このPJ0800の打ち方には、ちょっとしたこつが必要である。

まず、とにかくタッチが軽い。
PJ0800は担当する指の違いでキー押し下げ圧を変えてある変加重タイプなのだが、中央部の45g圧キーでも筆者には軽く感じられる。まして何らかのタイプの流れで、小指の担当するキー(例えば上端部の数字キー:30gに設定されている)を他の指でタイプすると、ものすごく軽く感じられる。IBMのビンテージを「叩き」慣れた手には、ちょっとパワーを入れすぎただけで勢い余って隣のキーまで押してしまう。
一般的なメンブレンキーボードから移行する方にとっても、ひょっとしたら全域45gキータイプのSA0100辺りのほうがとっつきやすいのではないか...という気もする。現にShopUで全域等加重タイプが発売された当初は、そちらのほうが評判がよかったとの記述も見られる。

最初マットな感触のキートップに指先の移動が妨げられるような感じがあったが、これもホームポジションに乗せる指の圧力を調節すると、スムーズに流せるようになってきた。このペースを掴めれば、長時間にわたって入力を続けても疲れが少ない....というのもうなずける。

それと独特のステップスカルプチャー構造を持つキーは、最下段の文字キーの傾斜が手前から見てかなり大きい。従って通常のシリンドリカルスカルプチャー構造に慣れたタイピストが、「打ち込む」ようにタイプすると、指がひっかかるような感覚があって、次のキーへスムーズに指が流れていかないことがある。

この場合、キーボード専門店「ネオテック」の解説サイトによると、この列のキーは「打つ」のではなく、指で「引っかける」ようにしてタイプするとスムーズな入力が可能であるそうだ。
打ち込んで「カチッ」というクリック音が発生する位置で接触が完了するバックリングスプリングより、もう少し「適当に押す」ぐらいが、このキーボードの特性を活かすタイピングのような気がする。

この「テキトー」というところがミソだ。もともと筆者のブラインドタッチはテキトーに叩いて間違えればBS...という、やたらとパイプライン処理で先走るNetBurst系だ。さらにクロックを上げられるこのキーボードは、もしかしたら筆者が思っている以上に筆者向けなのかもしれない。
.....データセンターで日夜入力たたき込みに明け暮れるプロの皆さんからすれば、「猫に小判」の典型的な例としか言いようがないかもしれないが。

余談だが、筆者がさんざん迷った挙げ句にこのキーボードに手を出したのは、このキーボードがすでに多くのメーカーが生産を終了している106キーであり、この製品自体もあと残りわずか...という駆け込み需要に乗っかった部分も否定できない。
だがやたらと不要なキーを増やしていく昨今の風潮を憂いているのは筆者だけであろうか。....そんな筆者の次の目標は、同じキャパシティブキーボードのHHKProだ。こちらはもっと高い。予算が下りるのだろうか>財務省

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