FKB8769-T052
製造元 Fujitsu Co.ltd.
諸元
キー配列 JIS配列 92keys
メカニズム membrane/ゴム腕
備考 I/F:USB
Junk Point 小堀君向け(言迷)
この文章を書いている2016/09/23を遡ること1年あまり、2015年はキーボード業界(んなものがあるのかどうかは不明だが)にとって大きな節目の年だったのかもしれない。
特許が失効したZF electronicsのcherryスイッチのパチ...いや後発品が続々と登場したのである。予想通り、ほぼ全てかの大陸国に存在するメーカーから。 筆者は長年こんなコーナーを書いている身でありながら、そのことを全く知らなかった。汗顔の至りである。
まあそれはともかく、その互換スイッチ(といっていいのだろうか)メーカーの中には、大陸国国内での特許を受理された所もあるというのだから、まったくなんでもあり(ただしコネがあるという条件があるかも)の国だ。そんな海の向こうから、そういった互換スイッチを採用したゲーミングキーボードがすでに日本で幾種類も発売されている。

時間の評価を経ていないので、それらの互換スイッチがどのような性能を持っているのかは今のところ分らない。
ただ一つ言えるのは「数が質を生む」という可能性だ。
現在の日本は「モノづくり」を標榜している。熟練工や高度な工作機械技術に支えられた高品質な製品作りが国内産業のセールスポイントというわけだ。
だがそれは、かつて粗製濫造とも言える大量生産と、その過程で生じるQC試行錯誤の上に成立しているものだったはずである。
人口の単純比較でいっても潜在市場規模が10倍の国で、同じような産業技術の飛躍的向上が起こる可能性も十分あり得るので、それは我が国の産業にとっても無関係なことではないはずだ。
筆者購入品では極めて珍しい箱入
「買ったけど使わない」てやつかw

さて、その「高品質」を謳うわが国の製品だ。
といっても、おそらく開発された当時は「消耗品」ととらえられていたことが想像に難くない、富士通(高見澤)コンポーネントのメンブレンスイッチキーボードである。筆者が初めて使用した激安(といっても26諭吉ぐらいだったが)AT互換機には、このキーボードと同じスイッチが使われていた。

おそらくパーソナルユースのキーボードは、パンタグラフ構造を持つアイソレーション型にメインストリームが移行していて、ストロークが深いこの手のキーボードはもはや少数派になっていると思われる。
ネット上のレビューも「待ってました」「往年の名機再び」という方と「今更何で?」「なんだこれに1樋口高杉」と、毀誉褒貶がまっぷたつに割れているように拝見する。

裏面
筐体接合はツメ嵌め込みの模様

筆者が富士通コンポーネントのキーボードを使っていていつも思う(リベルタッチを除く)のは、「特徴がない」ことが特徴なのだということだ。
クリック感も弱いし、ストロークも手応えがない(押下荷重55gの本機でも)。

だが、その手応えのなさに慣れると、ものすごく速くタイプできるのである。
筆者はしばらく前から某タイピング練習サイトを利用して、手持ちのキーボードの「高速タイプ適正ランキング」を作成中(ちょっと中断中)であるが、フルサイズキーボード部門では一時、Realforceやmajestouch、IBMヴィンテージといった並みいる有力機を向こうに回し、FKB-8520がブッチギリのトップスコアを叩き出していた。

筆者が見慣れたのと微妙に違う富士通高見澤SW
大型キーはスタビが入っている
資料によればこの鍵盤の押下圧は55gとのことだが、タクタイル感がない、リニアでフワフワしたタッチとも相まって、そのスペックよりかなり軽い感触だ。
ご覧の通り、フルキーボードからNumキーをバッサリ切った構成になっている。 個人的にはゐぃんキーが2つ有ることが余計に思えるが、Ctrl/altの位置は筆者のタイプフォームに合っている。ただ、このサイズだと筆者はどちらかというとフルキーボードのほうを選ぶかも知れない。

ま、そうした筆者の嗜好はともかく、ゴム椀/メンブレンのキーボードとしては標準的な操作感でありながら、キートップの触感やスカルプチャの曲率などが、高速なタイプに向いていると、短時間のタイピングの間にも感じられるのである。

....と、そんなこんなで久しぶりに、IBM5576-C01と交換して使ってみると、その静かさが際立つ。
筆者の購入した品が新品同様だったと言うこともあるが、軸のきしみが殆ど無く、「カタカタ」というおとではなくて「サクサク」といった感じの音がする。夜間に猛速で叩いていても、殆ど何をしているか分からないぐらいの静けさだ。

カーブドスカルプチャ
これを採用している機種が既に希少になりつつあるか

尤も、筆者もC01などのタクタイルな機種を使い続けていると、このような静音キーボードに切り替えたときに、タクタイル音でひとつのキー動作完了を感じ取ってリズムを作っていることに気が付く。切替当初はそうした違和感が起こるのだ。

しかし以前にも述べたように、こうしたキーボードを操作していると、次第に「叩く入力方法から、「押す」方法にシフトしていくのである。

そして時代はまた繰り返し....我が家にさらにキーボードが増えていくのだ。

....と、ようやくここまで辿り着いた。
本機レビューの起稿が昨年(2016年)の10月10日。脱稿まで実に10か月もほったらかしだった。
何か特徴的な所を取り上げて書こうと思ったのだが、まさに「特徴の無い」ところが本機の特徴であったために、その普通さを述べていたら....途中で擱座してしまったのである。
そうした裏事情が、本機の特徴を最も如実に表している....とご理解戴けたら幸いである。いや、放置ぷれいとかじゃなくて。

.....って改めて原稿を見直してみると、1行目....(火暴)




(2016/10/10記[2016/09/23起稿、2017/08/06脱稿])

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