FILCO FKB-101EB
製造元/発売元 DIATEC corp.
諸元
キー配列 101keys/US(UNIX)
メカニズム ALPS SWITCH(White axis)
備考 I/F:PS/2
Junk Point 盛大にtactile

以前にここのインプレッションで、「人口希薄地域における同好の士の密度」について論じた(か?)。

確かに人口密度に正の相関を以ってSIG....というかSpecial Interest Peopleの数が希薄になるというのは実感である。
が一方で、同好の士は希薄であるだけで、ゼロではないのだ....というのもまた事実なのであると感じるところだ。

筆者の嗜好である電脳に関して言えば、趣味というだけでなく産業としても、需要が希薄であるからといってICT企業が皆無というわけではなく、周囲を見渡すと地域の産業システムを支えているソフトハウスやCADスタジオが、中小規模とはいえ存在しているのである。

そうした企業でも、現在多く用いられているプラットフォームはWindowsだとは思われるが、中には異なるOSを使用しているケースもあるだろう。20年ぐらい前、同級生の結婚式で久しぶりに会った知人に、CADで使用している端末のOSがOS/2である....と聞いたときは心底驚いたが、UNIX系OSを使用している事業所も意外にあるのではないかと想像するのである(現に筆者のクライアントの情報端末の一部はLinuxベースのシステムだ)。

21世紀初頭頃までのFILCOらしいパッケージ
別型番はSMK-8861・箱ウラ中央に「段ボール製造メーカー」の巨大ロゴが(笑)

デフォルトがUnix用キー配列の本機「FKB-101EB」も、そんな事業所からの放出品....ではないと思う。

いつものハード●フ長浜店に、箱入りでちょこんと一台だけおいてあったのだから、たぶん個人のものであったのだろう。UNIX系OSを個人で使用している方....というのも、なかなかにこの地域では稀有に思えるのだが。

価格comの登録日は2003/11/20となっている。サポートOS(UNIX系を除く)はWindows2000/XP/Me/98/DOS/Vとラベルにある。ネットを探っていると、2001/12/19に元麻布春男氏がPC Hotlineの自筆記事にて「AXに極めて近い配列のキーボード」と紹介されており、ということはこれより以前に発売されていたということになる。

今日ではおそらく新品の入手は不可能と思われるが、かつての通販されていたサイトの痕跡はいくつか残っている。

VshopUはすでに2018年11月時点でページが存在せず「店長の一言」blogにその言及があるのみとなっているが、ぷらっとon lineにはまだ製品ページがある(「お取り扱いしておりません」とあり、価格も記載なし)。さすが、ネットワークシステム系の専門店だった同社らしい品揃えというべきか。
(左)ALPS簡易白軸/(右)大型キーのスタビ。固定具がすぐブッコ抜けるので注意

さて、実機を見てみる。

AT101US配列とどこが違うのか...と見てみると、ESC←→チルダ、そしてCaps←→左Ctrlと入れ替わっているところぐらいであろう(箱に謳ってある「大きなEnterキー!」はUNIX用鍵盤の特徴といえるのだろうか?)。それ以外は、同社のALPS軸採用US配列機とキーピッチや配列にほとんど差異はない。

件のキー配列がどちらにも使えるように、裏面にDIPスイッチなどがついているのかと思い調べてみたが、それらしきものはない。
で、写真を撮ったときは気づかなかったのだが、ネット上の情報を元に確認したら、上記入れ替えキーが半田付けされている基盤のパターンが切断され、ジャンパを飛ばして入れ替えるという不可逆的荒業が施されてあった。安上がりというべきか、手間がかかっているというべきか。


キースイッチの基部には鉄板が使用されており、これがそこそこの剛性と重量感をもたらしている。
底部のゴム足は手前だけで、ティルトスタンドには装備されていないが、その2つのゴム足が割としっかりとホールドしてくれており、強くたたくような操作をしても、動揺することはあまりない。

本機の製造がいつごろかはわからないが、最古で17年ほど前ということになる。畢竟、ALPS簡易白軸もその経時変化をを受けているのか、やや渋いタッチと盛大なタクタイル音と、若干のチャタリングを発しながら動作している。
しかしこのスイッチの通例というか、しばらく力をこめてたたいているうちに、だんだん動きがスムーズになってくる。....まあ、当初からシリコングリスを噴けばよいのだと思われるけど。

基板裏側。左端のジャンパがESC←→チルダ、Ctrl←→Caps入替線

で、メインマシンは専らDOS/Windows一本ですごしてきている筆者にとって、UNIX配列はどうか....というところなのだが、昨今はMacのキーボードを使っていることなどもあり、左Ctrlの位置はあまり気にならなくなっている(日々操作体系が切り替わるので、ときおり「あれっ?」と一瞬思うことがあるが)。
むしろ、ESCとチルダの入れ替えが筆者にとってはわずらわしい。全角←→半角を頻繁に切り替える筆者には、チルダのほうが手前にあったほうが操作しやすく、ESCキーは単なる「連打する離れ小島」で結構....ということなのだ。
その点を除けば、タクタイルの感じは(にぎやかではた迷惑そうだけど)筆者としては悪くないし、ヨーロッパ言語圏の「左Shift右側のキー(102キー)」も存在しないので、いたってベーシックなUSキーボードとして使用できている。

しかし今の時流にあったキーボードか....?と考えると、少し疑問だ。ストロークは長めに感じるし、ALPS簡易白軸であるため耐久性にも不安が残る。15年前のいくつかのレビューを拝見するとなかなかに評価は高めのようなのだが、ポジションとしては「中の上」あたりではなかったのだろうか。
筆者が2018/10/27に 購入の際の価格は、箱付で3240円だった。高機能ゲーミングキーボードが量産される昨今では、そのぐらいの価格になるのもむべなるかな...と思うところだ。
しかしながら、この地方都市近隣に、このような「特殊気味」なデバイスを使用されている方がおられた(かもしれない)という推測の元、またぞろまだ見ぬその好事家にシンパシィを抱いたりしている筆者である。




固くないよ、使っているうちにだんだん気持ちよくなるから(をぃ)


(2018/10購入、2018/11/11記)

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