Canon PIXUS BJS330
製造元 CANON
諸元 A4/2400x1200dpi/USB I/F
Junk Point ニコニコ
備考 多くの人の場合、時を経るにしたがって歓喜と落胆の振幅が小さくなっていくものなのだろうか。
「そらぁそうです、人間いつまでもビックリしてばかりでは身が持ちませんから」と、爆笑王と呼ばれた落語家は高座のマクラで語っていた。結局彼は首をつって死んでしまったが。

喜怒哀楽の表出と心療内科領域の疾患の関連はこの際置くとしても、極端な幸運/不運は、遠くない将来における、その反対への揺り戻しを人に想起させるものなのかもしれない。それは振幅の大きさが己の心に与える影響を緩衝するかのごとく。

あまりに不運続きで不遇をかこっている人間は「人生悪いことばかりではないさ」と自分に言い聞かせて、いずれ小さな幸せを見出だすであろう。

またそれとは逆に筆者のような人間の場合、たまたま物事がとんとん拍子にうまく運んだ場合(特にこのコーナーに掲載するような領域で)、「何かオチがあるんじゃないか」と猜疑し、案の定つぼる....という結果に至るものである。もっとも筆者の場合、それをネタに悦に入っているという側面は否定できないが。

先日、筆者の職場のプリンタが壊れた。

筆者の職場が開設される以前の準備室から使用されていたから、もうかれこれ6〜7年は常時稼動していた。多分個人向けプリンタとしては結構ハードに使われていたほうなのではないだろうか。

途中排インクタンク(という名のスポンジ)を、職場の流し台を真っ黒に染めながら丸洗いして同僚の顰蹙を買ったり、目づまりしたポンプに水を強制注入して修復したりと結構手をかけてきたので、筆者としても思い入れがあったのだが、ついにヘッドがダメになってしまった。

以前のキヤノンなら、交換用のプリントヘッドを販売していたのだが、昨今「交換しても直らないケースが多いので発売中止しました。修理を依頼してください」と宣っている。
噴飯ものだ。「直らなくてもよいからいぢりたい」という人の情熱は、一体どこにやればよいのか。

....まぁそう言っても詮なきことだ。
とりあえず修理依頼...なんてことはうちの職場ではとても出来ない。下手して万単位の請求が回ってきた日には....経理部長の強張る顔が目に浮かぶ。
そんなわけで筆者は早速やふおく検索。を、電源が入らない同機種が60円だ。脊髄反射ポチ、あとは待つばかりである。

2〜3日後。

「もこっちさん、プリンタが壊れたと聞いたけど」経理部長が声をかけてきた。

「あぁ、それで業務が滞って困ってるんです。でも修理すると多分ン万円かかるのではないかと...」ちょっとフカシをこいた筆者。

「じゃあ、必要なら買ってください」
「え"、いいんですか?稟議書も上げてませんが」
「直せば数万円かかるんでしょ?1万円超えないんだったら消耗品扱いでいいから」

....この瞬間、ぽちったことを筆者は忘却の彼方に追いやった。...いや、完全にではないが、多分記憶残量は97%OFFぐらいではなかっただろうか。

ネットを調べ、近所のヤマダに走り、閉店間際に落ち着きのなさそうな店員を探し、ウナギのようなぬるぬる交渉の末に、インクカートリッジよりも安いネット特価をさらに下回るお値段でげとに成功した。筆者の値切り率としては、史上最高に近い。

深夜の職場でさっそく業務運用開始。をを、さすがに顔料系のインクで文字がクッキリ、普通紙でも綺麗だぞ...

歓喜と興奮の中で、どこかにひっかかるものを微かに感じている筆者であった。

そんなこんなで、それから更に数日後。

「もこっちさん、また何か届きましたよ」
筆者の(そっち方面の)お買い物はたいてい職場着なので、こう言われる。

...ああ、やっぱりきた。(そりゃ来るさ)

まぁ、電源が入らないとはいえ、ニコイチにすれば予備機として使えるだろう。まだ職場でもプリンタをほしいと言い出す部署があるかもしれないし、61円+送料なら別に寄付してもそんなにイタくないか。

さっそく開梱、目的のプリントヘッドを....無い。

黙々と段ボールに2台仲良く詰め込み、地下倉庫へと運ぶ筆者。
なんとなく桃の節句を過ぎた雛飾り、あるいは1機欠けたジェットストリームアタックを思わせた。

再び檀上に飾られる、または出撃する日はまず来ないと思われるが......とりあえずお疲れ様でした。(合掌)
(2010/01/25記)

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