Boogie Board "rip"
製造元
発売元
iMPROV electronics
KING JIM
諸元 9.5"LCD電磁スタイラスタブレット
8MB FLASH(PDFを999枚保存可)
Junk Point すぐ書ける、すぐ保存できない
5年ほど前から、筆者は幾度か「電子情報機器のHIDとしては、未だにキーボードを越える存在が出現していない」というような事を書いてきた。

あれから6年の時が経ち、今は亡き鬼才Steeve Jobsや、彼の無数の追従者の手によって、携帯やPDAにおいては画面を直接操作するタッチパネルがハードウェアキーボードに肉薄し、逆転しつつあるまでに至っている。

もちろん手書き入力という方向ではなく、キーボード操作の亜型であるフリック入力ではあるのだが、それでもインプット/アウトプット(或いはフィードバック)デバイスが統合されるというのは、考えてみればコンピュータの世界においては画期的なことではないのだろうか。

しかしそれが生産性に結びついているか....というと、それはまた別の問題になる。

先日、筆者はとあるセミナーに参加した。

筆者は講義録を後でテキスト起こしするのが面倒でケータイ+キーボードでエディタのノート取りをしていたのだが、聴衆の中に林檎印の板を広げていた方がおられた。
「なるほど、さすが今時はノート取りもタブレットか」と興味を持ってちらちらと見ていたのだが....その方は講義の途中から、何やらおねいさん画像入りのページをスクロールさせていた。
明るい所でこんな感じ
昼間の電車車内で書いてみた
割と見やすい感じ

何にせよ最終的には使用者の姿勢に委ねられることになるのだが、「様々なことができる」多機能性は「余計なことをしてしまう」冗長性というか反生産性をも内包しているのだと改めて感じさせられた次第だ。

そういう意味では、昨年発売された初代Boogie Boardは「ただ書いて、消す」という電子文具にあるまじき極端な単能性に対して、ユーザーが大きな可能性を感じ、結果として話題を呼んだ製品だったと言えるかも知れない。

そして実際使ってみた人々から「こういうことができればなぁ」「ここはこうなってた方が」などという意見が寄せられ、それに応じて開発者が改良を重ねていくのも当然の成り行きと言える。

しかしながら、単機能が特徴だった製品に機能を追加することは、その製品のコンセプトの否定につながりかねない自己矛盾を孕んでいるわけだ。
某所の紹介記事では初代から買い続けたライターの方が仰っている。
「3枚のうちどれを選ぶかといわれれば、初代だ」....

ま、筆者の場合この製品を買うのは初めてで比較対象が存在しない。
かつてはTransNoteというものが存在したが(いや、今も持ってるんですけどね、液晶逝っちゃってますから)、あのThinkScribe(CrossPad)はスタイラスの先端が押し込み式のスイッチになっていて、なかなかに書きづらかった。

それと比較すると、普通にメモを取る分にはやはりこちらの方が書きやすい。

USBはMicro-B...Mini-Bの方がいいなぁ
給電/充電中は赤LED点灯

ただ今回追加された「PDFでPCにデータを保存」する機能については、正直な所イマイチな感じだ。

まず保存するデータを書くには、専用スタイラスでないといけない。 一見普通の電磁スタイラスに見えるので、手持ちのVersaPro VY11/F GL-Rに付属の小型スタイラスを使ってみたが、書くことはできても保存はできない(指先や他の尖ったモノで書くのと同じ)。

その上、データ入力にあたってまず「SAVE/WAKE」キーを押して入力待ちの状態(statusインジケータが緑色点滅)にしなければいけない。
筆者が試したところでは、いったん入力待ちになると、かなりの長時間スリープモードに入らない(あるいはそのまま?)ようなので、バッテリーを保たせるためにはスライドSWでロックをかける必要があるのだが、このロック解除の手順が加わって保存データ入力開始が意外に煩わしいのである。

しばらく使ってみると、先述のライター氏の「だったら初代でいいや」というのも何となくうなずけるハナシに思えてくるのだ。
Saveはついうっかりwakeし忘れ...をやっちまいそう
筆圧を保存しないので平板な文字になる

データの取り込み手順に関してはいちいち専用ソフトで取り込まなくてもよいので、TransNoteと比べてその点はお手軽である。

各所で紹介されている通り、PDFデータは筆圧を反映しないので、ハーフトーンを使用しないコピーのような、平板な感じになる。

さて、ではこのデバイスをどのように使うか。

「手書きで下書き、ペイントソフトで彩色」....などという使い方は、絵心のない筆者には無縁だ。
「会議で出たアイデアを図にして取り込み」....そういうくりえいちぶなお仕事はしていない。よって無用。

となると、やはり「単なるメモ書き」か。その単機能に1.48諭吉。うーみゅ....

まぁ筆者の場合、職場の各セクションから発注品が筆者の元に集約されて受発注をほぼ一元的に管理しているので、「どこから発注があり、どこに納品するか」をアナログ的に管理する(つまり『書いたモンが物言う』浪速の商人の世界だ)には役立つのではないだろうか。

そう考えると、他の部門の方々にもお勧めできる使い方はあるのだが、恐らく金庫番が首を縦に振らないだろう。
個人的にも....逝かないだろうな、よほどのガジェッツジャンキーでもない限り。多分。



(2011/12/05記)

Junk Junky