元祖富山ブラック「西口大喜」(味濃いめ)
製造 「西口大喜」駅前店
諸元 不明(醤油+スープ+塩多量?)
Junk Point これだけでドンブリメシ3杯は軽い
以前も書いたが、食べ物の味は5つあるとされる。(酸苦甘辛鹹)
その中で「激辛」だけが「極端な味」としての市民権を得ているのはどういうわけか。

ほかの味の「激」を検討してみる。
・「激酸」....具体例としては「スッパムーチョ」「シゲキックス」などが挙げられよう。
だが「酸味を高める」=「pHを下げる」=「(歯を含めた)消化器の溶解と炎症を促進する」....なんか体に悪そうだ。
筆者も含めて多くの方は「レモンをかじった後の『歯のキシキシ感』」を不快に感じるのではないだろうか。

・「激甘」....筆者が体験した中では「マダムシンコのブリュレ」がこれにあたるだろうか。
果物を評価するときに「糖度」という指標が用いられることがあるが、本来糖度は「含まれる糖分の量」であり、直接甘みを示すわけではない。それに甘みの頂点と思われる「糖分」にしたところで、純度100%のそれを口にしても「激」という表現ほどまでには至らない感じがする。

・「激苦」....そもそも食品として認められない気がする。そのようなものを口にした瞬間、たいていの人は生命の危険を本能的に悟るだろうから。

そんなわけで、筆者個人の意見ではあるが、以上3つの味は「激」という指向にふさわしくないと思われる。

で、残る一つ....筆者が「なぜこれが一般に受け入れられないのか」と思うのが「激塩辛」である。
「健康に悪い」?....んなもん「激辛」とどっこいどっこいではないか。

そんなわけで筆者は、先の大型連休の一日、長野のキャンプ場に停滞に温泉に行った帰り、ちょっと寄り道して富山を訪れた。
目的は一つ「元祖富山ブラック」を食するためである。

筆者は以前にも、富山駅前のデパートや、京都駅ビルにも出店している「麺屋いろは」で食べたことはある。
だが、物心ついた頃から醤油をご飯にかけて食っては「ほんなもんばっか食べてたらチュウブ(=中風。いまでいう脳血管障害)になるほん!」と祖母にどやされるほどに「なちゅらるぼ〜ん塩辛口」の筆者は本能的に「これはなにか違う」と感じていた。
それは濃厚ではあるものの、「関東のうどんつゆ」的な濃厚さであり、噂されるような「メシのおかずになる」という味ではなかったからだ。
「元祖」といえる富山ブラックがどれほどのものなのか、前回の富山市来訪で逸した機会を取り返すにはもってこいではないか。

曲者の脇役達
薬味を甘く見てはいけない
メンマは激塩、相対的に薄味の叉焼も旨いが油断できない

西町パーキング横の本店が「完売終了」のため、駅前店に移動。飲み会帰りの客に混じって待つことしばし。
メニューを見ると、ラーメン以外は別皿チャーシューと生卵、それにメシ。以上である。なんと潔い店であろう。ラーメン屋のマストアイテム「餃子」のギョの字もない。
そのかわりというべきか、麺のふとさと固さ、そして「味の濃さ」が選択できる。(....といっても濃さは「普通」か「濃いめ」なのだが)
いつもラーメン屋でそうするのと同じように、筆者は迷わず「麺固め・味濃いめ」を選択した。
筆者よりもさらに重度の先天性味覚破壊症である次男が「普通」をオーダーしたにもかかわらず....である。

そして運ばれてきたのが、画像の一品だ。

他の面子の「普通味」と比べてみる。
色合いは同じく黒いのだが、「普通」の表面には透明な脂が浮いていて、これが塩辛い中にもマイルドさを出している。
それに対して筆者の「味濃いめ」は、さらに色合いが濃いうえに、この脂がほとんどないために、激烈な塩辛さ....そう、塩辛さだけをたとえて言うなら「醤油に塩を加えたような」塩辛さが味蕾を直撃するのだ。
これは、たまらん。(涙)

思わず筆者の箸はメンマへと避難先を求めた。
....が、針の山から逃れた先が血の池地獄だった...というのはよくある話だ。
メンマもごく軽い塩抜きを施しただけの、塩の塊だった。
そういえば昨夏、長男と「富山城祭り」の会場で食べた「富山ブラック焼きそば」の出店はこの「西町大喜」で、これと同じメンマが入っていたなぁ....と、今更ながらに思い出す筆者であった。

とにかくこれぞまさに「激塩辛」....といえる凄まじい塩辛味。これと比べれば、先の「いろは」や、某回転寿司で供される富山ブラック、あるいはコンビニで売っているカップめんなどは「色が黒いだけの普通のラーメン」と断じても差し支えないだろう。

とはいえ、スープ自体は決してマズい訳ではない。いやむしろ、かなり旨みがある。
生卵をご飯にかけ、そこにこのスープを入れると絶品といってもよいTKGになる。これが本来の食べ方なのだろう。

なんとか(さすがにスープは残したが)食い終わってふと壁を見ると「まず全部をよくかきまぜてから食べてください」という張り紙があった。うーむそれはどんなものだろうか....

.....いずれにしても万人におすすめしてよいものか微妙だが、このような「激塩辛」ジャンルが存在するのが「あり」か「なし」かと問われれば、筆者としては「あり」と答えるであろう。
富山市近郊にお立ち寄りの方で、高血圧や腎疾患の心配がない方は、是非一度は体験していただきたい一品である。

一般人に堕した
一般人に堕した
一般人に堕した「美味しい」食べ方
ブラック卵つけ麺→ブラックTKG

(2018/06/03追記) 早いもので、大喜の記事を書いてから5年が経過していることに気がついた。

筆者の訪店は今回(2018年6月2日)で3回目となる。初回以降も安定の人気を誇って....いたはずだったが、今回土曜日の訪店にもかかわらず、閉店間際とはいえ、筆者が到着した時には一人もお客がいなかった。大丈夫か劇塩ヲタの皆様、本店だけでなく富山駅前店もよろしく。

とはいえ、店内に富山ブラック画像と共に貼り出されていた「富山県で、休もう」観光キャンペーンのポスター、休むのは恐らく消化器以外の部分になると思いますよ、一般人にとっては。

まあそれはさておき、ここ5年間においても西町大喜の味....というか、塩味はほぼ変わっていない。一方で変わっているのは筆者の対塩分耐性のほうのようである。
かつてはブラックをそのまますすってご馳走さま、というところだったが、前回も含めて次第にその塩分濃度が「美味い」という私的上限を微妙に超えてる気がするのである。
そのように逸般→一般へと堕しつつある筆者は、今頃になって一般人でも美味しく食べられる方法をとるようになった。
すなわち「卵つけ麺」式である。

麺も含めて、ラーメンどんぶりの中で塩味が効いていないものはネギと胡椒だけである。ならばオプションで無塩のものと混和していただければよいのでは....と試してみた。

....美味かった。
ええ、分かってますとも。これが邪道な頂き方というぐらい。

で、次第に塩分がついていった生卵に、麺を食べ終わった後に残った具をすくい上げ、飯にかけてどんぶりの出来上がり。うん、これはよい。ラーメンをおかずに飯を食うよりも潔い....んじゃんなかろうか、多分(大阪人の方々以外にとっては)。
そして調子に乗ってお土産を買って帰り、2日連続ブラックゴードンああー♪(By Queen)な筆者であった。



ステーキと同じく塩味は胡椒で調節
「汁は醤油より出て 醤油より黒し」
これが世に言う『出醤の誉れ』か(違


ステーキと同じく塩味は胡椒で調節
(左)「特大・味濃いめ」という人を見てみたい(右)肉体労働者の休憩所


(2013/05/03記)

Junk Junky