筆者がここなどで取り上げる工業製品の場合、先行開発品が実用新案や特許といった知的財産権で保護されているケースが殆どであろう。
爆発的に売れた商品が実はパチもんだった....というケースが非常に少ないのは、そうした背景を考えれば当然である。従ってその市場においてクジラのように巨大で寡占的な存在である「正規品」と、ミジンコのように矮小且つ無数に存在する「不正規品」の群れ....という構図がおのずと出来上がるのである。
だが、そうした知的財産権という概念がなかった時代から存在した製品はどうなのだろうか。
こちらの食品などは、その答えの一つと言えるかも知れない。
筆者がこの製品を購入したのは、筆者宅から最も近いところにある名神高速上り線のPAにおいてであった。
喫茶店もロクに存在しない田舎に住む筆者にとって、このPAは割としょっちゅう"3rd Place"として使用する場所なのだが、迂闊にも...というべきか、この製品を手に取った...あるいは視野に捉えた記憶がほとんどない。
その理由はよく分らない。が、あまりにも包装の雰囲気が微妙な似具合で、
「『あの餅』ではないが、何か似たような物」
という、製品の持つ印象が、筆者の意識から存在を忘れ去らせてしまっていたのかも知れない。
この製品をぐぐってみると、何故か『あの餅』の検索結果が表示される。
で、それはちゃんとWikipediaにも載っていて、名福餅は「類似の商品」(笑)の欄に記載されている。
それによると、『あの餅』の類似商品は確認されているだけで全国に8種類存在している(うち伊勢・二見エリアには3種類)。
伊勢神宮の門前の茶屋で有名な『あの餅』は、創業を1707年であるとしている。
こうした名産品の「元祖・本舗争い」は珍しくないが、このカテゴリーの場合、先行品が余りにもガリバー過ぎて、そのような争議は近年では起こっていないようである。
ちなみに「名福餅」の製造元を検索すると、名古屋の商店組合のサイトっぽいところに紹介されている。
店そのものの情報は住所・電話番号と、店全体でなく「うらぶれた」看板の写真だけだった。当然店舗のオフィシャルサイトURLもメールアドレスも載っていない。
しかしWikipediaの情報によれば、新名神高速道路・伊賀PA限定販売の類似商品「伊賀福」は、この「名福餅」のOEMであるという。
土産物のOEM....なにやら昔よく耳にした「日本中の観光地のオミヤゲは台東区で作られている」という与太を地で行くようなハナシであるが、先のWebサイト画像を見るに付け、そのような類の店....というか、食品工場なのではないかと推察される。天白区にはあまり行ったことがないので、よく判らないが。
で、そんな「名福餅」はというと、出自はネット上の調査ではよく判らない。「伊勢福」や「御福餅」などの「歴史ある類似品」ではないようである。
本体の見てくれは最早何をか言わんやであろう。
それ故に多くの方がBlogやTwitterに「ネタ」として取り上げている。
「若干より甘いように感じる」という意見もあるようだが、筆者が食した感じでは、『あの餅』よりも甘さが「爽やか」である。お茶なしでも何個かいけるぐらいだ。
原材料は『あの餅』と全く同じだが、こちらはエージレス+脱酸素パックになっているので若干日持ちがするのかも知れない。SA/PAでの販売が中心であるという特性故ではないか。
あとは....本店の実際の姿がどうなっているか、筆者としては興味の涌くところである。
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(2013/02/03記)
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