まわしてチャージ充電丸
製造/購入元 言迷(Made in China)/マリン商事
諸元
バッテリー メンテフリー鉛蓄電池(12V/7.2Ah)
発電メカニズム ペダル回転型発電機
(ペダル部回転域45〜90rpm)
出力 DC-OUT:3/4.5/5/6/9/12V
USB:5V(USB-A)
AC:100V/100W(2極コンセント)
照明機能/光度 白色LED/10cd
Junk Point 元を取るのに1年半
「....ただし、世界に大きな事件が起きて、その選択によって未来が変わる世界線の分岐点のような年がいくつかある」
....2036年からタイムワープしてきたバイト戦士・天音鈴羽はそう語った。

もちろん現段階ではSFの領域を出ない「世界線」の概念だが、人間の心理や価値観といったものは時間と社会の流れの上に展開され、その縮図のような部分を多く含んでいるのだから、巨大なイベントが発生するに伴ってパラダイムシフトを余儀なくされるのは当然と言えよう。

東日本大震災で直接の被害を受けた方々からすれば些末な事に過ぎないと思うのだが、被害を受けていない人であっても、私の知る限り少なくない数の方々が「あの日の以前にはもう戻れない」と心情を吐露している。

そうした形而上的なシフトと共に、当然のことながら形而下的な経済活動の構造、特にエネルギー供給と消費の仕組みも変化を迫られているわけで、その影響は我が国の基幹産業から、末端の国民にまで及んでいる。

以前にもどこかで書いたが、筆者の職場でも各部門の努力によって昨年比15%程度の消費電力削減を達成した。
通常の業務に影響を与えることなく上記の削減に成功した....ということは「昨年まで15%浪費していた」というツッコミが聞こえてきそうなのだが、いずれにしても不幸な災害がきっかけであったとしても、国民の多く(一部のタトな方を除く)にそうした意識が根付き始めたのは、省資源国家である日本全体を考えた場合に好ましいことであるのは間違いない。

筆者の職場の例でもそうなのだが、現段階でのエネルギーの節約は、一人一人が無駄をなくすという地道な努力によって十分可能なものであり、「○○を使って節電!!」とかいったような、デバイスに頼ったドラスティックなものではない。

マターリ漕ぐ
45〜90rpmでマターリと
8〜10時間こぐとフルチャージ
そうした観点からすると、この「充電丸」を始めとして、震災後の日本に蔓延っている「節電グッズ」というものの立場はちょっと微妙になってくる。

確かにこのような人力充電装置は再生可能エネルギー(厳密には「人力」は再生可能エネルギーに含まれない)として魅力的だが、持続的かどうかと言われると、かなり「?」な部分が多かろう。

まず問題となるのは、満充電までの時間である。

取説には「8〜10時間の充電で満充電となります」とサラッと書いてある。
また、取説にはこうも書かれている。「毎分90回転以上でこぐと故障する場合があります」

.....筆者は電気回路の基礎的知識がないので断言はできないのだが、ということは発電機とバッテリーがほぼダイレクトに接続されていて、過度に高速回転させるとバッテリーに規格を超えた高電圧がかかる...ということではないのだろうか。
DC-DCコンバータをかませれば制限が緩和される問題のような気もするが、そこまでの技術orコストはかけられなかったのかも知れない。

以上のような事情から「『浩一ダッシュ』並みの高速ペダリングで急速充電」はできない。
「町中をタラタラとママチャリで流す」程度のユルい速度と負荷で、休むことなくひたすら8〜10時間回し続けてやっとフルチャージ....というシロモノなのである。

仕事に出かけるわけでもなく、家事を行なう必要もなく....という日常を送っていて、いかに時間に余裕がある方だとしても、流石に日がな一日、それも毎日欠かさずこのマシンのペダルを踏み続けるのはかなりの苦痛を伴うと思われる。
たとえそれが、このマシンを販売している通販サイトの決まり文句である「○○しながら」のタスクであったとしても。
(実際筆者は1時間弱で『ホネ』よりも『ココロ』が折れてギバープだった)
ズルチャージ
15V出力のAC-DCで充電可能
(エコじゃないけど)
そんなわけで筆者が想像するに、購入に至った方のうち、多くの方々がこのデバイスの定位置(....というか「終の棲家」というか)を部屋の片隅や廊下の突き当りに定め、ごく一部が根性で使い続け、その残りの、筆者を含む更にごく一部の○○な人間が写真のようなズルッこに走るのではないだろうか。

いや、ズルッこといってもこのような充電方法はちゃんと取説に記載されている正しい使用方法だ。
さすがに「節電グッズ」を訴求点に掲げている立場上、AC-DCアダプタは別売....というかオプションにも設定されていないのだが。

筆者は多くのおぢゃんくノートを所有している関係で、AC-DCアダプタがやたらと家に埋蔵されているのだが、どういうわけか15V出力のものが全くなく、結局以前にIBM2435用に購入したユニバーサルアダプタを使用してみた。
満充電までの時間は大体6〜7時間、足こぎとそれほど所要時間は変わらない....勿論労力は比べるべきもない。

しかし....このような手段に訴えておきながら言うのも何なのだが、そこはかとなく本末転倒な気がするのは筆者だけなのだろうか。
萌えずに止まる
100W走召のオーバーロードで自動停止
しばらく放置すると復旧する模様

手段はさておき、充電すれば「DCまたはAC家庭用電源としてMP4プレーヤー/携帯/ゲーム機/ノートPCなどにご利用いただける」のだそうだ。

筆者が試してみた所では、普通の扇風機程度なら十分に回せるし、出力ポートがUSB-Aと普通のAC-DCのプラグ形状のものが用意されているので、低消費電力の製品なら多くのモノで問題なく使える。

そう、問題は「低消費電力でない製品」なのだ。

むろん、電子レンジ/トースターや掃除機などというモノは論外なのだが、ACの出力限界が「100W」というのがどうにも微妙だ。
以前のIBMノートは65WのACアダプタが多かったのだが、最近のLenovo製品は90Wアダプタのものも増えてきている。そうなると上限ギリギリなのである。

しかも内蔵の鉛蓄電池が12V/7.2Ah....ということは、インバータの利得効率が100/(12x7.2)x100=115.7%....っておいおい。
(計算間違ってませんか?>章魚さん)

....バッテリーの容量を信用するのであれば、おそらく100Wの電力供給は無理なのではないだろうか。
現に某所で某2名が、最大消費電力120W(ということは通常動作中はもう少し少なめ)のノートPC起動に失敗している。

確かOKWebだったかと思うが、電力料金を元に「どのくらい充電丸を使い続けたら元が取れるか」を試算していた方がおられる。

それによると「毎日欠かさず使い続けて約1.5年後に販売価格を回収できる」という結果になった。
試算された方も触れておられたが、そこに行き着くまで「Made in 人民中国」のばってらやデバイスが保つのか、はなはだ心許ない所である。

勿論「まったく使えない女又」というわけではないし、購入者の「節電意識」を満足させる、という意味では、それはそれで有効なグッズであると言えるかも知れない....って褒めてないか、それは。



(2011/09/25記)

Junk Junky