短期集中連載(笑)![]()
−この物語は、フィクションである−
その97
白鳥章雄(35)が生活習慣病検診を受けるのは、今年が初めてである。
説明書に書かれているとおり、午後の検診に合わせて朝食は抜いた。こんなことは学生時代以来だ。
落ち着かない腹を抱えつつ、検診会場へと向かった。
ふと、白鳥は検診費用のことを思い出した。
「はて、会社が持ってくれるのは持ってくれるけど、立て替えとくんじゃなかったっけ....?」
会場に言ってから「払えません」では困る、とりあえずお金を下ろしておこう....そう思った白鳥は、近くのATMに駆け込んだ。
所定の額より少し多めに引き出した白鳥。レシートを捨てようとふと横を見た眼に飛び込んできたのが....『お父さんのアイドル誌・○○ヒ芸能』だった。
白鳥は周りを見回した。普段はこのような雑誌を買うような白鳥ではない。だが興味はある。それが無料で手の届く範囲にある。
白鳥はそれささっとカバンにしまうと、何事もなかったかのようにATMコーナーを出た。
検診はダラダラと進んでいった。一会場に100人も詰め込むようではそれも仕方ないが、白鳥はひとつ検査が済むごとに所定の席で数十分待たされることになった。左のロンゲ会社員も、右の自営業っぽいパンチパーマのおっさんも、所在無さげにF1の雑誌や新聞などを読んでいる....
「よし、退屈しのぎに....」
白鳥はロッカーに戻り、カバンの中から件の雑誌を取り出し席に戻った。適当に頁をめくる....『袋綴じ特集潜入!!素人○○撮影会の淫行ルポ!!』....いきなり来た。
頁の中ではモザイクで目を消した女性の股間が踊っている。左右の視線が白鳥の両手間にやってきた。
『....さん、白鳥章雄さん。検尿は2時までです。お急ぎください』
館内アナウンスの声にはっと我に返った。慌てて立ち上がったその瞬間。
”う?....”
....先走った?
トイレで採尿の前に白鳥は考えた。
「どうしよっかな....別に本チャンが出たわけじゃないから、ちょっと多めにブランク取れば大丈夫か」
白鳥は排出される液体の、最後のほうだけ採取した。
そして2時間後、白鳥は医師から診断結果を聞いた。
「白鳥さん....少し蛋白が出ているようですね。再検査を受けてください。日時は....」
「あ、あの....」
「は?」
「い、いえなんでもないです...わかりました」
1ヵ月後、白鳥は錦糸町にある検査場に来ていた。
『....さん、白鳥さん、xxxxさん、尿蛋白の検査を行いますので採尿をお願いします』
....”まったく、あんな雑誌を読まなければ、こんなところに来ることもなかったのに....”
呼ばれた白鳥は内心ブツクサ言いながらコップを受け取り、トイレに入った。
後ろから人影が近づいてきて、白鳥の横に並んで採尿を始めた。
今日は
左ロンゲに右パンチ
だった。